東京スカパラダイスオーケストラ×アイナ・ジ・エンド|進化の先にたどり着いた刺激的化学反応

東京スカパラダイスオーケストラがアイナ・ジ・エンドをコラボアーティストに迎えた新曲「崖っぷちルビー(VS. アイナ・ジ・エンド)」を配信リリースした。

「戦うように一緒に音楽を作っていく。」をコンセプトに掲げた“VS.シリーズ”の第5弾として制作され、フジテレビ系木曜劇場「プロフェッショナル 保険調査員・天音蓮」の主題歌として書き下ろされたこの楽曲。制作はスカパラとアイナ・ジ・エンド、さらには元BiSHのサウンドプロデューサーである松隈ケンタの3組で行われ、“崖っぷちだからこそよく見える”と逆転の発想で這い上がっていく女性像を壮大に歌い描いている。

リリースを記念して、音楽ナタリーではスカパラの加藤隆志(G)、谷中敦(Baritone Sax)、沖祐市(Key)、そしてアイナの4人にインタビュー。今回のコラボの経緯から刺激的な楽曲制作、リリース後の反響に至るまで、思いを語ってもらった。

取材・文 / 大山卓也撮影 / 須田卓馬

アイナ10年の歴史を背負った集大成的な楽曲に

──先日リリースされた「崖っぷちルビー」が大きな反響を集めています。この曲はどんなイメージで作り始めたんでしょうか?

加藤隆志(G) どんな曲にしようかっていうのは、一緒にやれることが決まってからけっこう考えたんです。ライブやテレビ番組では何度かコラボしてきてスカパラとアイナちゃんの声が混ざったときの感じはわかってたから、それを超えなきゃっていうのがまず1つ。アイナちゃんは自分のソロだけじゃなく今までいろんな人とコラボしてきてるんで、そのプレッシャーもありましたね。

左から加藤隆志(G)、谷中敦(Baritone Sax)、アイナ・ジ・エンド、沖祐市(Key)。

左から加藤隆志(G)、谷中敦(Baritone Sax)、アイナ・ジ・エンド、沖祐市(Key)。

──過去のコラボ曲はどれも素晴らしいですもんね。

加藤 そうなんです。それで今自分がどんなアイナちゃんを聴きたいかって考えたときに、松隈(ケンタ)くんの顔が浮かんできて。

アイナ・ジ・エンド わ、そうだったんですね。

加藤 松隈くんのメロディワークとアイナちゃんの声とスカパラの演奏。今それらを融合したらどうなるんだろう、アイナちゃんの10年の歴史を背負った集大成的な曲が作れるんじゃないかって思ったんです。それで松隈くんとは個人的に飲んだことがあったんで、まずはLINEで連絡しました。

──作曲クレジットには沖祐市、松隈ケンタ、アイナ・ジ・エンドの3人の名前が並んでいますね。

沖祐市(Key) もともと僕が作った原曲があって「普通の日々」という仮タイトルで曲の構成までできてたんですよ。それを土台に進めてみようってことになって、加藤くんから松隈さんに投げてもらったんです。

沖祐市(Key)

沖祐市(Key)

加藤 松隈テイストをガンガン入れて好きにやってくださいと伝えました。メロディも新しく作ってもらっていいんで、って。

 建物に例えるとわかりやすいかな。僕が建てた家があったんだけど、アイナちゃんが住むことになったんで完璧にリフォームしたいなと思って、そしたら松隈さんが壁を全部ぶち破って柱も取り外して土台以外は新築みたいに仕上げてくれた。「劇的ビフォーアフター」の「なんということでしょう!」みたいに(笑)。

加藤 沖さんが作った土台があってこそですけどね。

 コード進行と基本の構成はそのままです。ラップパートは僕が作ったリフをアイナちゃんに丸投げして、そしたら新しい家に素敵な中庭ができましたね。

アイナ たとえがうますぎる(笑)。

 あと、あの静かに始まるイントロも僕の原曲にはなくて、松隈さんがものすごく立派なエントランスをドーンと作ってくれた感じ。正直言うと最初はどうなるんだこれ?って不安もあったけど(笑)、完成した今は本当にうまくいったなと思います。

ラップは家で録ったデータのまま

──歌詞では“崖っぷちでもあきらめない”信念が描かれています。切なくも力強い言葉が印象的ですね。

谷中敦(Baritone Sax) ドラマの主題歌として「真実をテーマに書いてほしい」というオファーをもらいまして。“真実とは何か”を考えながら書きましたね。

──歌詞を書くときはアイナさんをイメージして?

谷中 もちろんそうです。完全に当て書きでアイナちゃんが歌うことをめちゃくちゃ考えて。ただ、アイナちゃんには歌詞の主人公を演じてもらおうと思ってたんですけど、今回は本人の個性がそこを超えてきた。完全にアイナちゃんの言葉として機能してるんですよね。才能の塊ですよ。

谷中敦(Baritone Sax)

谷中敦(Baritone Sax)

──アイナさんが谷中さんの歌詞で印象に残ったフレーズは?

アイナ いっぱいあるんですけど「この哀しみは通り雨だと / 何度も書いては消した」っていうところ。心を奪われますよね。哀しみがさっと通り過ぎていく。それを何度も消してるのが重たくて。

加藤 アイナちゃんのフィルターを通して歌われるとより深みが出るよね。

谷中 色鮮やかになるし、シーンが見えてくる。

──最後の「あたし諦めずに生きてきただけなのです」というフレーズも刺さりますね。

アイナ うん、歌うたびに改めてグッとくる。前向きな気持ちになれますね。

──作詞のクレジットには谷中さんとアイナさんの2人の名前があります。ラップのリリックはアイナさんがすべて書いたんですか?

アイナ そうです。谷中さんが思う崖っぷちと私が思う崖っぷちを掛け合わせたら面白いかなと思ったので、強気な崖っぷちを表現してみました。

 しかも自宅で歌ってるんだよね。

アイナ ラップパートは家で録ったデータのまま納品してます。一応スタジオでも録ってみたんですけど、マイクが違うとニュアンスが変わってきちゃって。

──じゃあ完成した音源で聴けるのはアイナさんが自宅で録った声?

アイナ あとから重ねてる声はスタジオのマイクだけど、メインは家のマイクで録ったやつですね。

アイナ・ジ・エンド

アイナ・ジ・エンド

加藤 あれがバンと送られてきたから「マジか」と思って。

谷中 完成度高すぎだよね(笑)。

自己表現を超えた歌

──そもそもスカパラとアイナさんは以前から親交が厚いですよね。

加藤 2018年、僕が参加してた「VIVA LA ROCK」の企画(VIVA LA J-ROCK ANTHEMS)にゲストで来てもらったときが初対面ですね。リハのスタジオに颯爽と現れて椎名林檎さんの「本能」を歌い上げて帰っていった姿が衝撃的で、バンドメンバー全員アイナちゃんに触発されてすごくいい演奏ができた記憶がある。

アイナ 緊張してたんですけど、加藤さんを筆頭に皆さん優しくて。つるっと歌ったあとに加藤さんが「声がいいから2Aはブレイクにしよう」と言ってバンドの演奏を変えてくださったりして。

加藤 その次は2021年、津野米咲ちゃん(赤い公園)が亡くなった翌年に赤い公園の「Canvas」っていう曲をアイナちゃんに歌ってもらいました。自分の音楽人生の中でも指折りの経験で、そのときの演奏は体に染み付いてます。米咲ちゃんがアイナちゃんを推してたんですよ。

加藤隆志(G)

加藤隆志(G)

アイナ 私も「Canvas」を歌ったときのことはすごく覚えてます。

──そしてスカパラの楽曲「JUMON feat. アイナ・ジ・エンド」のリリースが2021年ですね。アイナさんはセリフとシャウトでの参加でした。

加藤 その後はアイナちゃんのソロ曲「ZOKINGDOG」に関わらせてもらったり(※加藤がサウンドプロデュースを担当)、BiSHとスカパラでコラボさせてもらったりしたこともあって。なんかね、アイナちゃんはいつも全身全霊を込めて、その歌にいろんな人の思いを乗せて伝えてるイメージがあるんです。自己表現を超えて、もっと先まで届けようとしてる。そんなシンガーはなかなかいないです。

アイナ そう言っていただいてありがたいし、その通りな気もするんですけど、常々考え抜いてるわけではなくて。ただ歌っている以上は人様に届けないと意味がないし、独りよがりになりたくないなと思ってます。その場にいてくださる方との化学反応とかエネルギーを感じたいんですよね。

加藤 その思いの強さに応えたかったから今回は特に気合いが入ったし、アイナちゃんが一生背負っていける曲を作らなきゃなと思ってました。