ナタリー PowerPush - 東京スカパラダイスオーケストラ

細美武士との邂逅、アメリカRECの裏側を語る

大ネタをスカならではのセンスで料理

──その上で、今回の作品はアメリカンでヒスパニックな要素が盛り込まれているように思いました。

加藤 そうですね。そういうイメージをもってレコーディングに臨んだところはありますね。「Aranjuez」(スペインの作曲家、ホアキン・ロドリーゴによる「アランフェス協奏曲」として知られる名曲)はヒスパニックに響くキラーチューンになればいいなと思いましたし、(映画「イージー・ライダー」のテーマ曲であるSTEPPENWOLFの)「Born To Be Wild」はアメリカ人は誰もが知ってる曲をスカパラならではのアレンジでやっていますしね。こういう大ネタをスカならではのセンスで料理すると、やるほうも聴くほうもニヤッとなるし、爽快ですよね。

──もう1曲のカバー曲はランディ・ニューマンが映画「トイ・ストーリー」のために書いた「You've Got A Friend In Me」ですけど、普段の彼はひねくれた曲を書く人だという背景を知っていると、このハートフルな曲は余計に胸に響きますし、この選曲からして素晴らしいなと思いました。

東京スカパラダイスオーケストラ(撮影:Rickey Wang)

加藤 みんなで歌えるような曲を探している中で、この曲が挙がって「いいチョイスだね」ってメンバー間で盛り上がったんですけど、今の若い世代の人たちも映画を通じて、この曲に馴染みがあるみたいですね。

谷中 この曲は単純に聞こえるかもしれないですけど、コード進行が小洒落てて、実は演奏が難しかったりするし、メロディも狭いレンジの中でちょっと音が変わったり、覚えにくかったりするので、そのことを理解しながら僕たちなりのシンプルなアレンジに仕上げました。

──さらに「Diamond In Your Heart」以外に4曲のオリジナルも収録されています。

加藤 いつもそうですけど、これからのスカパラのライブにおいてキラーチューンになるであろう楽曲、そして「Dizzily Dazzled」みたいに今までやったことがないタイプの曲に挑戦してみたり。

谷中 「Dizzily Dazzled」は、「目まぐるしく目が回る」っていう意味のタイトル通りに目まぐるしい動きが面白いよね。

加藤 あと、「Skactus」はスカの王道というか、「うちらはスカのバンドですよ」っていうカードを切ってみせた曲ですよね。

谷中 この曲では川上(つよし / B)が「サボテンが映えている荒野を、パラダイスを探して歩き続けろ」って、トースティングで歌っています(笑)。

ハイブリッド感は「東京スカ」の鍵

──そして、加藤さんの作曲した「Rockabilly Cutie」はロカビリーとスカが融合されていますよね。

加藤 ロサンゼルスのスタジオでのレコーディングを想定して書きました。THE BRIAN SETZER ORCHESTRAを彷彿とさせる、ちょっとアメリカンテイストな曲ですよね。

──それも都会的なニューヨークというよりも西海岸のオープンな空気感というか。

加藤 まさに僕らはロサンゼルスの広い道を毎日車で行き来していたんですけど、そのときにも感じた乾いたニュアンスの曲です。

──車といえば、GAMO(T.Sax)さん作の「LA Traffic」も収録されています。

東京スカパラダイスオーケストラ(撮影:Rickey Wang)

谷中 「LA Traffic」はジョー・ブレイニーさんに30年、40年のキャリアを通じて「こんな曲は聴いたことがない」と言わしめた曲なんですけど、彼にとってはいろんな音楽要素が混じった曲に聞こえるみたいなんですね。僕らとしてはいとも簡単にやってることなんですけど、海外の人にとっては恐ろしいブレンド具合なんだなって。だから、いろんな人種の人が車に乗って、1本のハイウェイを走ってるロサンゼルスのイメージからこのタイトルを付けたんです。

加藤 でも、こういうハイブリッド感は「東京スカ」と銘打ってる自分たちの鍵なんじゃないかなって思いますね。だって、新宿、渋谷の街を考えても、多文化をごった煮にした街だったりするし、そのごった煮の街に僕らは生きていますからね。

谷中 海外の街もいろんな文化が混ざり合っていると思うんですけど、東京の混ざり方とは明らかに違うんですよ。東京に暮らす僕らとしてはその渾然一体となった感覚に慣れてしまっていますけど、実は東京の混ざり方って面白いと思いますね。

──では、今回のロサンゼルスレコーディングでは、前作のロンドン、バルセロナとはまた違った角度から日本のバンドのアイデンティティを意識することになったと。

加藤 海外ではどれだけ日本人らしさを出すかっていうところじゃないと勝負できない、目立てない。そこを目立たせるためにも、国内外での活動でどこまで自分たちらしく、そして、日本人らしい部分を楽曲に詰め込めるか。前作からこのアルバムにかけて、そういうことを意識して、さらにブラッシュアップできたと思います。

──そして、アルバムが完成して、帰国してからすでに東京、名古屋、大阪を回る「新たなる欲望」ツアーを終えたわけですが、2013年後半のスカパラを駆り立てる“新たなる欲望”とはどういうものなんでしょうね?

加藤 谷中さんともよく話すんですけど、もっと目立ちたいんですよね。もう十分だって言われるかもしれないけど(笑)、日本の音楽シーンでもっと目立ってやろうと思ってますね。

谷中 僕もアメリカへ行って、その気持ちが強くなりましたね。「アメリカは大きいし、いろんな人たちがいる中で、どうやって目立つのが一番カッコいいんだろうな?」って、日々考えていましたからね。しかも、今の目立ちたいという気持ちは若い頃のそれともまた違うので、もう少し考えたり、感じたりした上で等身大の目立ち方を考えられると思うし、現在のタームでその方法を考えようかなって、今はそう思っていますね。

「Coachella Valley Music and Arts Festival」ライブフォトギャラリー

「Coachella Valley Music and Arts Festival」の模様。(撮影:Rickey Wang) 「Coachella Valley Music and Arts Festival」の模様。(撮影:Rickey Wang) 「Coachella Valley Music and Arts Festival」の模様。(撮影:Rickey Wang) 「Coachella Valley Music and Arts Festival」の模様。(撮影:Rickey Wang) 「Coachella Valley Music and Arts Festival」の模様。(撮影:Rickey Wang) 「Coachella Valley Music and Arts Festival」の模様。(撮影:Rickey Wang) 「Coachella Valley Music and Arts Festival」の模様。(撮影:Rickey Wang) 「Coachella Valley Music and Arts Festival」の模様。(撮影:Rickey Wang) 「Coachella Valley Music and Arts Festival」の模様。(撮影:Rickey Wang) 「Coachella Valley Music and Arts Festival」の模様。(撮影:Rickey Wang) 「Coachella Valley Music and Arts Festival」の模様。(撮影:Rickey Wang) 「Coachella Valley Music and Arts Festival」の模様。(撮影:Rickey Wang) 「Coachella Valley Music and Arts Festival」の模様。(撮影:Rickey Wang) 「Coachella Valley Music and Arts Festival」の模様。(撮影:Rickey Wang)

メキシコシティ・Salon21 ライブフォトギャラリー

メキシコシティ・Salon21でのライブの模様。(撮影:Rickey Wang) メキシコシティ・Salon21でのライブの模様。(撮影:Rickey Wang) メキシコシティ・Salon21でのライブの模様。(撮影:Rickey Wang) メキシコシティ・Salon21でのライブの模様。(撮影:Rickey Wang) メキシコシティ・Salon21でのライブの模様。(撮影:Rickey Wang) メキシコシティ・Salon21でのライブの模様。(撮影:Rickey Wang) メキシコシティ・Salon21でのライブの模様。(撮影:Rickey Wang) メキシコシティ・Salon21でのライブの模様。(撮影:Rickey Wang) メキシコシティ・Salon21の会場付近にはスカパラの違法コピーグッズの露店が。(撮影:Rickey Wang)
東京スカパラダイスオーケストラ ニューアルバム「Diamond in your heart」 / 2013年7月3日発売 / cutting edge
CD+DVD 3600円 / CTCR-14801/B / ※初回プレス分はデジパック仕様
CD 2300円 / CTCR-14802
CD収録曲
  1. Diamond In Your Heart
    (ボーカル:細美武士)
  2. LA Traffic
  3. Aranjuez
  4. Dizzily Dazzled
  5. Born To Be Wild
  6. Skactus
  7. Rockabilly Cutie
  8. You've Got A Friend In Me
DVD収録内容

スカパラ史上最も激しく熱かった“TOUR Walkin'”ファイナル公演 (@代々木第二体育館 2012.7.6) より、客演の中納良恵(EGO-WRAPPIN')が歌う「縦書きの雨」「マライの號」「BONGO TANGO」や、EGO-WRAPPIN'とスカパラによる奇跡のコラボ「くちばしにチェリー」など17曲を収録(90分)。さらに、細美武士をゲストボーカルに迎えた「Diamond In Your Heart」のビデオクリップも収録!

TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA
2012 TOUR Walkin' FINAL@代々木第二体育館 2012.7.6
  1. Return of Supercharger
  2. ルパン三世'78
  3. MONSTER ROCK
  4. Walkin'
  5. クールなスパイでぶっとばせ
  6. HURRY UP!!
  7. Lonesome Eddy
  8. マライの號
    ※ゲスト:中納良恵(EGO-WRAPPIN')
  9. BONGO TANGO
    ※ゲスト:中納良恵(EGO-WRAPPIN')
  10. 縦書きの雨
    ※ゲスト:中納良恵(EGO-WRAPPIN')
  11. 水琴窟 -SUIKINKUTSU-
  12. SKA ME CRAZY
  13. LET ME COME THE RIVER FLOW
  14. White Light
  15. All Good Ska is One
  16. くちばしにチェリー
    ※ゲスト:EGO-WRAPPIN'
  17. DOWN BEAT STOMP
  • Diamond In Your Heart –music video-

※初回出荷分はデジパック仕様

沖祐市ソロアルバム「Gospel」 / 2013年7月3日発売 / cutting edge
2800円 / CTCR-14790 / ※初回プレス分はデジパック仕様
So many tearsニューアルバム「LOVE & WANDER」 / 2013年7月3日発売 / cutting edge
2800円 / CTCR-14795 / ※初回プレス分はデジパック仕様
東京スカパラダイスオーケストラ
(とうきょうすかぱらだいすおーけすとら)
東京スカパラダイスオーケストラ

NARGO(Tp)、北原雅彦(Tb)、GAMO(Tenor sax)、谷中敦(Baritone sax)、沖祐市(Key)、川上つよし(B)、加藤隆志(G)、大森はじめ(Per)、茂木欣一(Dr)からなる9人組バンド。1989年11月にインディーズで黄色いアナログ「TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA」をリリースし、その本格的なサウンドと独自のスタイルが話題を集める。1990年4月にシングル「MONSTER ROCK」、アルバム「スカパラ登場」でメジャーデビュー。以降、オリジナルメンバーの逝去や脱退といった幾多の困難を乗り越え、2008年7月より現在の編成となる。スカをルーツに多彩なジャンルを取り込んだ豊かな音楽性は国内外のオーディエンスから高い評価を獲得。国内はもとより、ヨーロッパを中心に世界各国でライブを行い、日本を代表するライブバンドとしてワールドワイドな活躍を続けている。