ナタリー PowerPush - T-Palette Records#2 - lyrical school

アイドルラップのトップを走る 生まれ変わった6本のマイク

絶対DISられると思ってた

──本人たちの中ではラッパーになろうという気持ちはなかったんですね。でも「清純派ヒップホップアイドル」を打ち出してtengal6が登場したとき、みんな「面白い存在が現れた」って感じてたし、音楽ファンの間でもすごく反応がよかったと思うんです。本人たちの中ではそれをどう受け止めてたんですか?

mei 怖かったです。ラップをするのが初めてだったから、それがどう評価されるのかとか。

ayaka

ayaka なんかラッパーの方って、厳しいイメージがあったんですよ。だから私がやっちゃいけないんじゃないかって。リリックも自分で書いてなかったし。

──「DISられる!」って?

ayaka そう! 絶対くると思ってました(笑)。

──前例がない存在だったからリスナーたちも面白がってたわけだし、本人たちが「よくわからない」って思ったのも仕方ないですよね(笑)。

mei お手本がないですからね。

erika だから、どんなジャンルなのか聞かれたときに「ウチらのジャンルはlyrical schoolです」って答えられるように、自分たちを確立していきたいなってずっと思ってるんですよ。tengal6を始めた頃から、私たち自身が新しいジャンルなんだって思ってます。

mei ほかのアイドルさんたちとは曲調が全然違ってオタ芸とかも入れにくいので、ライブでのお客さんの雰囲気も全然違うんですよ。アイドルイベントで初めてlyrical schoolを観た方の中には、「どうやって乗ればいいんだろう?」って戸惑ってる方もいらっしゃいますね。

ラップは声が低いものだと思い込んで

──新編成での初のシングル「PARADE」はtofubeatsさんのプロデュース。シングル曲ではすっかり定番のコラボになってきましたね。

ami

ami tofubeatsさんの仕事に対する姿勢は勉強になりますね。ラップのこととかいろいろ聞くと、tofuさんが考えてることを話してくれるんですけど、そのたびに「同じくらいの歳の人でも、こんなふうに考えてるんだな」って感心します。

──そういえばアイドルとプロデューサーが同世代って、ほかにあまり例がないかもしれませんね。

mei だからみんなでわいわい話すこともありますね。でもやっぱりラップについては「こうしたほうがいい」ってちゃんと言ってくれて、私たちの個性を出そうと考えてくれてるんです。

ami tofuさんはそれぞれのいい部分に気付いて引き出してくれますね。「そりゃ夏だ!」(2012年8月リリースのT-Palette Records移籍第1弾シングル)のレコーディングのときに私のラップについていろいろと細かいアドバイスをもらえて、そのとおりにしたらすごく歌いやすかったんですよ。「あっ、見てくれてるんだ」って思いました。

──皆さんのラップに個性が加わったのは確かに感じます。今回カップリングに入った「tengal6 take2」を聴くと、2年前の「tengal6」オリジナルバージョンとはまるで別人のように聞こえました。ayakaさんやyumiさんが男っぽい声を出してたり。

ayaka やだー! 昔のは聴かないでくださいー! だから今回のtake2は「魂が宿ったね」とか言われるんですよ(笑)。

ami yumiはあの頃わざとやってたんだよね?

yumi ラッパーって男の人ばっかりだし、HALCALIさんもわりと声が低いから、「ラップは声が低いもの」って思い込んで、がんばって低い声を出してたんです。でも、歌いにくかったんでやめました(笑)。

erika 昔の「tengal6」を聴くと「自分のラップ、ヘタクソやなー」ってめっちゃ思いますね(笑)。棒読みだし、なんか「歌わされてます」みたいな感じで。でもそう思えるのは、この2年間にいろんなことをさせてもらって、そのたびに正解を探してきたおかげ。みんなが「これいいね」って褒めてくれたから「ああ、これでいいんだ」ってわかって、それを繰り返していくうちに今の自分たちになった、ってことなんだなと思ってます。

──なるほど。では例えば「tengal6」以外にも初期の曲を録り直したいと思いますか?

全員 すっごい思います!(笑)

mei あの頃よりもラップの楽しさがわかるので、歌い方を工夫して変えてみたり、もっといいラップが録りたいですね。

erika 今はプロデューサーからいただいた新曲に対して、スッと言葉が入ってくるようになったんです。最初は「どういう意味だろう?」みたいな感じやったんですけど(笑)、今は自分で「ここで韻を踏んでるのかー。さすがやなー」みたいなことを思うようになったので。

白いフリフリの衣装で「ザ・ベストテン」で歌いたい

──カップリングの「S.T.A.G.E」は「yumiさんがロックバンドを従えて自作のソロ曲『4月』を発表」というエイプリルフールの企画から生まれた曲ですね(参照:ナタリー - 新編成リリスク、シングルにLinQ深瀬智聖フィーチャー曲も)。「4月」がとてもいい曲だったので、ギターロックという方向性も全然アリじゃないかと思いました(笑)。

yumi 実際はギター弾けないから、曲を作ってくれた箱庭の室内楽のハシダ(カズマ)さんに演技指導してもらってPVを撮ったんです。田渕ひさ子さんの映像とかを観つつ演奏の動きを教えてもらって、2時間くらい経った頃に「あっ、めっちゃ弾いてるっぽい」みたいになりました。楽器とか全然弾けないんですけど、前からバンドやりたいなって思ってたんで、楽しかったです。

──今回はエイプリルフールの冗談ということだったんですけど、バンドをやったり、自分で曲を作ったりすることへの興味は皆さんの中にあるんですか?

mei 私はラップの楽しさを知ったので、リリックを書けるようになりたいというのは思ってます。ライムベリーちゃんとのツーマンライブで、自分で作ったラップをオープン前に軽く披露してたんですが、そういう機会で見せていきたいです。

erika 私は作詞・作曲をやってます。完全に個人的にですけど(笑)。

yumi エリちゃん音大出身なんですよ。だから音作れるんです。

mei カッコいいなあー。

──おお、そうだったんですか。でも音大を出てラップしてる人ってあんまりいないのでは?

erika

erika いないですね(笑)。同級生はみんなミュージカルとかをやってるので、ラップやってるって言ったら「新しいね」って(笑)。でも、すごい応援してくれてますよ。

ami クラシック育ちなんだよね。よく聴く曲って、何だっけ?

erika モーツァルトさん(笑)。

yumi モーツァルトに“さん”を付けて呼ぶ人なんてあんまりいないですよね(笑)。

erika 本当に偉大な人なんで(笑)。

──erikaさんのほかにも、そういう意外なルーツみたいなのがある人っているんですか?

erika ayakaは80年代アイドルについてすごく詳しいんですよ。

ayaka 大好きです! 松田聖子さん、中森明菜さん、南野陽子さん、浅香唯さん、早見優さんとかが好きです。お母さんがファンだったのがきっかけなんですけど、ああいうブリブリのアイドルが本当にやりたいんです。オーディションのときもアイドルの話しかしませんでした(笑)。だからリリスクとは別に、個人的な願望としてなんですけど、白いフリフリの衣装を着て「ザ・ベストテン」のスタジオみたいなところで歌ってみたいです。

ニューシングル「PARADE」 / 2013年5月15日発売 / T-Palette Records
初回限定盤[CD] / 1500円 / TPRC-0041
通常盤[CD] / 1000円 / TPRC-0042
初回限定盤収録曲
  1. PARADE
  2. tengal6 take2
  3. S.T.A.G.E feat 深瀬智聖(from LinQ)
  4. PARADE(inst)
  5. tengal6 take2(inst)
  6. S.T.A.G.E feat 深瀬智聖(from LinQ)(inst)
通常盤収録曲
  1. PARADE
  2. tengal6 take2
  3. PARADE(inst)
  4. tengal6 take2(inst)
BACK NUMBER
#1 アップアップガールズ(仮)
#2 lyrical school
#3 Negicco
#4 所属アイドル座談会
T-Palette Records

タワーレコードが発信するアイドル専門レーベルとして2011年6月に設立。以降、立ち上げ時からのメンバーであるバニラビーンズ、Negiccoをはじめ、LinQ(2013年4月にメジャー移籍)、しず風&絆~KIZUNA~、lyrical school、ライムベリー、アップアップガールズ(仮)といった楽曲に定評のあるアーティストが数多く参加し、タワーレコードならではの“音”にこだわった作品が続々とリリースされている。またレーベル主催イベントの開催や、全国各地のアイドルグループを紹介するコンピレーションCDの販売など、アイドル文化の活性化に大きく貢献している。

lyrical school(りりかるすくーる)

「清純派ヒップホップアイドルユニット」というコンセプトのもとオーディションで選ばれた、ami、ayaka、erika、mariko、mei、yumiという6人のラッパーにより2010年に結成。「tengal6」というユニット名で活動し、ハイクオリティな楽曲と「アイドルラップ」という特異なスタンスで大きな支持を集めた。2012年にタワーレコードのアイドルレーベル・T-Palette Recordsに移籍し、それを機にユニット名を「lyrical school」へ改名。tofubeatsプロデュースによるシングル「そりゃ夏だ! / おいでよ」「リボンをきゅっと」をリリースした。2013年1月にmarikoが卒業し、同年3月にhinaが加入。5月には新編成第1弾シングルとなる「PARADE」を発表した。


2014年2月12日更新