ナタリー PowerPush - TOTALFAT

日本語詞を極めた新曲で新たな地平を切り開く

TOTALFATの2012年第1弾シングル「Good Bye, Good Luck」がリリースされた。本作のタイトル曲はテレビ東京系アニメ「NARUTO-ナルト- 少年編」のオープニングナンバーとしてオンエアされている、旅立ちをテーマにしたナンバー。前作「Place to Try」同様、メンバー4人が書き下ろした前向きな日本語詞と親しみやすいメロディが印象的なロックチューンに仕上がっている。

2カ月ぶりにナタリーPower Pushに登場したTOTALFATの4人は、前作「Place to Try」リリース後の反響や「Good Bye, Good Luck」制作の裏側についてコメント。さらに、末光篤がアレンジ&ピアノで参加した「Place to Try」リアレンジバージョンについても、興味深い話を聞かせてくれた。

取材・文 / 西廣智一 インタビュー撮影 / 中西求

「Place to Try」は志をともにしているバンドにも響いた

──前作「Place to Try」の反響は耳にしましたか?

インタビュー風景

Shun(Vo, B) 賛否両論があるとは思ってたけど、僕らのもとには良い意見がすごい数届いて。僕らが日本語で歌うことを純粋に喜んでくれる人もたくさんいましたね。それと、「こういうところが良かった」って人に言われて初めて気付いた部分もあって、「人によってこんなに音楽の聴き方は違うんだ」って改めて驚きました。

──具体的にどういった意見が興味深かったですか?

Shun 例えば僕らと同じように英語詞で活動しているバンドたちが「Place to Try」を聴いたリアクションが良かったり、そういうバンドから「俺らも日本語で歌ってみたい」って感想をもらったり。「Place to Try」はかなり苦労した末に完成した曲ではあるけれど、その葛藤した部分に共感してほしかったわけじゃないし、そこで影響を与えたいと思ってたわけじゃなかったのに、志をともにしているバンドにも響いたことに感動しました。前回のインタビューでも言ったと思いますけど、「Place to Try」は完成するまでに1年半くらいかかって。内側で反芻を何回も繰り返してどんどんエネルギーを充満させていって、メンバー4人それぞれのキャパと、TOTALFATっていうバンドが持ってるキャパにそのエネルギーが満たされて、もう決壊するっていうタイミングで発表できたんです。もし内側のエネルギーが充満する前に見切り発車で出しちゃってたら、こんなにいろんな人に届かなかったんじゃないかな。

──リリース後にタワーレコード渋谷店で行われたインストアライブを観ましたが、お客さんはこれまでの英語詞の楽曲と同じように「Place to Try」でも盛り上がってましたよね。

Shun あの盛り上がりを目の当たりにして、答えが出たかなって気がしましたね。

Kuboty(G) あの日さ、今までライブ来たことなさそうな学ランの中学生いたじゃん。あと、普段のライブじゃ見かけないおばちゃんもいたよね。

一同 いたいた!

Shun きっとその人たちはTOTALFATのライブを観てビックリしたんじゃないかな。インストアライブとはいえ、これがきっかけになってまたTOTALFATのライブを観たい、ライブハウスに来たいって思ってもらえたらうれしいよね。

ポップな曲をシングルで投下すること自体が挑戦

──「Place to Try」からわずか2カ月で届けられる「Good Bye, Good Luck」ですが、制作はいつ頃からスタートしたんですか?

Kuboty 「Place to Try」と同時期に制作して、去年の6月くらいには完成したのかな。

Shun アルバム「DAMN HERO」が完成してすぐに、「アルバムツアーが終わったらシングルを出そう」っていう話が出て。その中から生まれた曲がいくつかあったんですけど、それが「Place to Try」や「Good Bye, Good Luck」だったんです。

──「Place to Try」はスピード感のある曲でしたが、「Good Bye, Good Luck」はミディアムテンポでじっくり聴かせる曲で。日本語で歌うこの2曲でTOTALFATの新しい魅力が見えてきた気がします。

Shun TOTALFATは常に同じことをやり続けるわけじゃなくて、いろんなビートやいろんな歌詞の内容に挑戦していきたいっていう思いがあって。今回みたいにポップなミディアムナンバーをシングルで投下すること自体が挑戦だと思ってます。

Kuboty 曲は俺が書いたんですけど、メロディは今までのTOTALFATでもやり得たキャッチーなものです。それがミディアムテンポのアレンジで、しかも日本語詞が乗ることによって今まで以上にポップに仕上がった。これまでの延長線上にあるのに、今バンドが持ちうる武器を並べた結果、一番ポップに響くようになったんじゃないかな。

親世代にも理解してもらえた「Good Bye, Good Luck」

──「Good Bye, Good Luck」はテンポを抑えたことで、より歌詞が伝わりやすくなったと思います。

インタビュー風景

Shun 今回は聴いた人に歌詞がスッと入っていきやすくなるよう、歌い方もいろいろ試してみました。とはいっても、僕らは日本語詞で歌い始めたばかりなので、まだまだやらなきゃいけないことが山ほどあるんですけど、そんな段階でこれくらいクオリティが高い曲を世に出せたのは胸を張ってもいいのかなと。

Kuboty TOTALFATはバンドとしてのキャリアは長いんですけど、日本語詞のバンドとしては1年生って気持ちで。メンバー全員で日本語詞を書くことはそれぞれのスキルアップになるし、それを歌うことでボーカルのスキルアップにもつながるという意味では「Good Bye, Good Luck」は意欲作であり、実験作でもあるわけです。

Jose(Vo, G) 特に歌詞に出てくる英単語も、中学生でもわかるくらいの言葉しか使ってないから、ほぼ日本語みたいな感じで。

Kuboty うちの60歳になる親父にも響いたしね。

Shun うちの母親も「Good Bye, Good Luck」を聴いて、「私でもわかる歌詞で、曲もテンポが緩やかで聴きやすい。曲のことを理解できたのがうれしくて、お小遣いあげたくなっちゃった」って電話かけてきて(笑)。今までも応援してくれてたけど英語詞で曲のテンポが速かったことで理解できない部分があったから、今回は自分が理解できる曲を息子が書いたのがうれしかったんでしょうね。

──普段ロックを聴かない世代が理解してくれたってことは、お茶の間で鳴らすべき音が作れたってことなのかもしれないですね。

Shun そうですね。僕らの音楽に対してまず最初に感想を聞かせてくれるのって、親なんですよ。発売前に音源を聴いてくれて、いろんな感想を教えてくれる。そういう人たちの意見ってすごく参考になるから、純粋にいい評価を受けたらうれしいし、それ以上に今までとは違う曲が書けてるなって自信にもなるんです。

ニューシングル「Good Bye, Good Luck」 / 2012年1月18日発売 / Ki/oon Records

  • 初回生産限定盤 [CD+DVD] 1575円(税込) / KSCL-1910/1 / Amazon.co.jp
  • 通常盤 [CD] 1223円(税込) / KSCL-1912 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. Good Bye, Good Luck
  2. Attack Or Die
  3. Place toTry -Featuring Atsushi Suemitsu Version-
  4. Good Bye, Good Luck -NARUTO-ナルト-Opening Version-
  5. Good Bye, Good Luck -Instrumental-
DVD収録内容
  • Good Bye, Good Luck (Music Clip)
  • Livin’ for The Future(Live) *September 18th, 2011 SHIBUYA-AX,TOKYO
  • Across The Chance (Live) *September 18th, 2011 SHIBUYA-AX,TOKYO
TOTALFAT(とーたるふぁっと)

2000年、同じ高校のメンバーにより八王子で結成。都内のライブハウスを中心に、精力的なライブ活動を展開する。2002年から全国ツアーを敢行。ライブバンドとしてその頭角を現す。2003年に1stアルバム「End on Introduction」をリリース。2004年、ギタリストのKubotyが正式メンバーとして加入し、Shun(Vo, B)、Jose(Vo, G)、Bunta(Dr)、Kuboty(G)の4人でパワフルな活動を継続中。数々のコンピレーションアルバムへの参加を経て、2005年にミニアルバム「Get It Better」を発表。2007年にはミニアルバム「Hello & Goodnight」をリリースし、GOOD CHARLOTTEの来日公演オープニングアクトに出演した。 2008年には「PUNKSPRING 08」に初出演を果たし、アルバム「ALL THE DREAMER,LIGHT THE DREAM」を発表。THE OFFSPRINGのジャパンツアーで日本人最多の7公演のオープニングアクトを務めた。2009年にはアルバム「FOR WHOM THE ROCK ROLLS」をリリース。「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2009」「SUMMER SONIC 2009」といった夏フェスに出演し、好評を博した。

2010年6月にKi/oon Recordsからメジャー1stアルバム「OVER DRIVE」を発表。翌2011年5月には井上ジョーをフィーチャーした日本語詞のシングル「World of Glory with JOE INOUE」をリリースし、話題を集めた。続けて同月末にメジャー2ndアルバム「DAMN HERO」を発表。9月には全国ツアーのファイナル公演として、SHIBUYA-AXでワンマンライブを実施し大成功を収めた。同年11月に2ndシングル「Place to Try」を発売。2012年1月には早くも3rdシングル「Good Bye, Good Luck」をリリースした。