明確に変化した、描きたい女の子像
──「Hello Sugar」は失恋ソングではありますが、「走って走って 泣いたって笑うの」と前向きに終わるのがいいですね。
北澤 ありがとうございます。私もここ好き(笑)。「Hello Sugar」はデビュー直後に書いた曲なんですけど、歌詞は一部書き直しています。というのも、デビュー当初は私の中に“ラブソング=ファンタジー”というイメージがあって、この曲の歌詞も「女の子って恋に恋していて、男の子がいなくなったらぴえんだよね」みたいな内容だったんですけど、この数年でみんなに伝えたい女の子像がかなり明確に変わってきているので、当時の歌詞のまま歌うのもちょっと違うかなと。私が今身をもって提示したいのは、恋に一生懸命な一面もありながら、最終的には自分の足で立つこともできるような……ひとかけらの強さをちゃんと守っていけるような女性像。なので、「彼と別れてちょっと未練もあるけど、私は前に進みますよ」というような歌詞に書き直しました。
石渡 3人とも「女の子だって思うことがたくさんあるんだぞ」「“かわいくて、恥じらいがあって……”という子だけが女の子じゃないんだぞ」というのはめちゃくちゃ思っていて。
大貫 うんうん。
北澤 そういう女性像を提示したいと思うようになったのは……年齢が大きいのかな? 自分という人間や自分の人生にもっと誠実でありたいという気持ちが年々増していて、「自分ってどういう人なのかな」と考える中で、私は最終的に、自分で自分を奮い立たすことができる人でありたいと思っていて。そういう人としてつかむ幸せを私は手にしていきたいです。
石渡 「Hello Sugar」は川口圭太さんという昔から一緒にやってくれている方がアレンジをしてくれて。この歌詞に対してロックなサウンドを提案してくれたのは、私たちへの理解がある人だからこそなんじゃないかと思います。このサウンドは私たち的にもめちゃくちゃハマりましたね。
──前アルバム「Hell like Heaven」では「LOVE TRIP」を再録していましたが、今回は「スプートニク」の再録版が収録されていますね。
石渡 「スプートニク」と「LOVE TRIP」はもともと店舗限定のシングルとしてリリースしたんですけど、そのCDが入手困難になってしまったので再録しようということになって。
北澤 思い入れのある曲って、1つひとつの本当にさりげない音だけで思い出す情景があったりするじゃないですか。長い間ファンに愛してもらっている曲なので、みんなの中の思い出というか、この曲と連鎖する何かを壊したくないという気持ちがあったので、アレンジはあまり変えなかったんです。アレンジは昔のままだけど今の自分たちが鳴らすということが、すごく意味のあることなんじゃないかと思っています。
解消されないネガティブさ
──そしてラストに収録されているのが「TAIKIKEN」です。
北澤 ファンと私たちの関係性について書いた曲ですね。この1年半、ファンとの距離についてすごく考えさせられて。コロナ禍になって、「いつも助けられていたんだな」と改めて実感したし、だからこそ「ファンの人の思いをちゃんとつなぎ留めていられるだろうか」「ライブが再開したときにはまた来てくれるのかな」と不安にもなりました。なので、その気持ちを形にできたらなと。ファンというのはもちろん今いる人たちのことでもあるし、これから出会う人たちのことでもあります。
──「TAIKIKEN」でも「スタンドバイミー」でも「間違っていても進む」といった表現が出てくるのが気になりました。この「間違っていても」という言葉は、どこから出てくるのでしょうか?
北澤 私自身、人生をあとから正解にしていくタイプで。「これが正解だ」と思ってから選択するのではなく、自分が行きたいと感じたほうに行って、それがその瞬間は間違いとされるような選択だったとしても、明日でも数年後でもいいから、いつか正解になるように動いていこうという考え方なんです。なので、「間違っていても進む」という感覚が潜在意識としてあるんだと思います。
──この「The GARDEN」も「曲が書けなくて落ち込んでしまった」「だけどその経験を糧にこんな作品を作った」というアルバムですしね。
北澤 本当にそうですね。これから全国ツアーが始まって、ファイナルが中野サンプラザなんですけど、自分たちの姿をこれだけ赤裸々に語ったアルバムを引っさげてホールワンマンができるというのはすごく意味があることだと思うし、意味があることにしなきゃいけないなと思います。「Contrast」や「TAIKIKEN」の終盤のコーラスセクションはたぶんみんな「ライブでどうやるんだ?」と感じると思うんですけど、自分たちも「ちょっと今から考えます」という感じで……(笑)。そういうふうに今までにないthe peggiesの姿を見せられると思っているので、私たち自身ワクワクしています。the peggiesのすべてをちゃんと見せられるようなライブにしたいです。
大貫 仙台、札幌、福岡は、バンドで行くのはかなりひさしぶりなんですけど、私はお客さんの顔を見ることでめちゃめちゃパワーをもらえるので、ひさびさの土地に行けるのがうれしいです。中野ではそこで培ったパワーを引き連れてライブをすることになるので、「絶対にいいライブにしなければ」と。私たちの生の演奏を観て「明日もがんばろう」と思ってもらえたらとてもうれしいですね。
石渡 つらいことを乗り越えながらアルバムを作ったことで3人の絆も深まったので、ツアーでは、強くなった3人の気持ちをお客さんに伝えられればいいなと思います。ただ、中野は自分たち史上最大キャパということで、「お客さんが来てくれるのかどうか」という意味で正直めちゃくちゃドキドキしていて……。
北澤 本当に、本当に来てほしい!
──さっきから気になっていたんですけど、ときどきネガティブな発言が出てきますよね。「こんなに暗い曲はどうせ採用されない」や「ライブが楽しみだけどお客さんが来てくれるか不安」というふうに。
一同 (笑)。
大貫 このネガティブさはずっと解消されない気がします。
石渡 そうだね。
北澤 私たちってすごく普通なんですよ。ものすごく影があるわけでもなく、ものすごく明るいわけでもなく、傷つくことはしっかり傷つくし、楽しいときはしっかり楽しいという3人なので。きっと、楽しいことがあるから傷つくこともなくならないし、傷つくことがあるから楽しいこともなくならない。そういう人生をずっと歩むんだと思います。
公演情報
- the peggies Live Streaming "the peggiesの!SOUNDBASE Vol.3"
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配信日時:2021年10月20日(水)21:00~
- the peggies tour 2021 "Be ORANGE"
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- 2021年10月29日(金)宮城県 Rensa
- 2021年11月2日(火)北海道 札幌PENNY LANE24
- 2021年11月13日(土)福岡県 DRUM LOGOS
- 2021年11月20日(土)大阪府 なんばHatch
- 2021年11月21日(日)愛知県 DIAMOND HALL
- 2021年11月26日(金)東京都 中野サンプラザホール
- the peggies(ペギーズ)
- 中学校の同級生である北澤ゆうほ(Vo, G)、石渡マキコ(B)、大貫みく(Dr)による3人組ガールズバンド。高校時代に東京都内のライブハウスを中心に本格的な活動をスタートさせ、2017年5月にシングル「ドリーミージャーニー」でメジャーデビューを果たす。2019年2月にHondaのテレビCMソング「そうだ、僕らは」などを収録したメジャー1stフルアルバム「Hell like Heaven」をリリース。その後「さらざんまい」「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」「彼女、お借りします」「僕のヒーローアカデミア」といったアニメ作品や、映画「アルプススタンドのはしの方」の主題歌を担当し、2021年10月にメジャー2ndアルバム「The GARDEN」を発表する。