halcaが5月30日にデビュー5周年を迎えた。
halcaは2018年5月30日にテレビアニメ「ヲタクに恋は難しい」のエンディングテーマ「キミの隣」でSACRA MUSICよりメジャーデビュー。これまで「かぐや様は告らせたい」「彼女、お借りします」「邪神ちゃんドロップキック」といった数々のアニメのテーマソングを担当しており、魅力あふれるキュートな歌声と天真爛漫な人柄は多くのリスナーから愛されている。
音楽ナタリーではデビュー5周年を祝してhalcaにインタビュー。5つのキーワードを軸に、halcaのこれまでの軌跡や胸の内を紐解いていく。また特集の最後には、halcaに縁のあるアーティストからのお祝いコメントも掲載する。
取材・文 / 西廣智一撮影 / 星野耕作
キーワード1:アニメ
──アニメはhalcaさんとは切っても切り離せない要素の1つかと思います。幼少期から家の中でアニメがひたすら流れているという環境だったそうですね。
そうなんです。幼少期はドラマやバラエティ番組を観たことがほぼなくて、ケーブルテレビのアニメチャンネルをずっと観ていました。最近になってやっとドラマ、バラエティ番組も観るようになりましたけど、今もアニメはずっと大好きです。
──「ずっとアニメばかり観て!」と怒る親御さんもいると思うんですが、halcaさんのご家庭はそうではなかったと。
確かに。「宿題しなさい!」とはよく言われてましたけど、アニメを観ることに対しては叱られませんでしたね。むしろ、私がその頃夢中だった「ふしぎ遊戯」の鉛筆キャップや下敷きをネットで探してくれたり、原作の画集を買い与えてくれたりと、すごく理解がありました。
──アニメの何がhalcaさんをそこまで惹き付けたんでしょうね?
特に記憶に残っているのが、親戚から「鋼鉄天使くるみ」というアニメのDVDをもらって、そのアニメのキャラクターがとにかくかわいかったこと。子供にはちょっと刺激が強すぎる内容だけど(笑)、顔もかわいいし、髪の毛もピンクでかわいいし、洋服もメイド服で、キャラクターボイスを担当する榎本温子さんの声もすごくかわいくて。物語自体はどんどんシリアスになっていって、最後は“愛が世界を救う”というすごくロマンチックな終わり方をするんです。私は今も共通して愛の力がテーマになっている作品が大好きなので、そういう世界観に惹かれたのかもしれませんね。あと、アニメだと自分が思っていることや相手が思っていることを神様視点で見られるじゃないですか。「あの子は家でこんなことを思って、こんなことで悩んでいて」みたいな様子を見られるのも面白いなと。自分が人の気持ちを理解しようとするための、勉強にもなったかなと思うんです。
──なるほど。
そういうふうに現実の自分に影響を与えることもたくさんあるけど、一番はやっぱり憧れですよね。かわいさやカッコよさがデフォルメされていて、そこに魔法少女とか妖精とかリアルの世界ではありえない設定も加わって。「本当にこうならないかな?」なんて夢想するんですが、そういう叶えたくても叶えられない憧れを、アニメを観ることによって発散しているのかもしれません。
──その大好きなアニメにお仕事として携わるようになったことで、アニメとの距離感も変わってきたのかなと思います。
自分が大好きなタイプのアニメ作品に関われるようになれたのはもちろんうれしいですが、そこまで熱心に観てこなかったような作品、例えば男の子が好きそうなアクションものに関わったことをきっかけに、出会いの機会も増えて、触れる作品の幅も広がりました。もっと早く観ておけばよかったと思う作品もたくさんあります。
──しかも、かつてhalcaさんがアニメ主題歌を聴いてワクワクしていたのと同じように、今はhalcaさんが歌うテーマソングを聴いてアニメファンの方々がその感情を味わっている。いちアニメファンだった時代からすると、ちょっと不思議な感覚でもあるのかなと。
オープニング映像のクレジットに自分の名前が載っていると、今でも信じられないぐらいうれしいです。あと、主題歌を担当するようになって、エンディングテーマの大切さにも改めて気付かされました。1つの物語が終わったあと、余韻に浸りつつも「来週もまた観よう」と思ってもらえるように視聴者の方々を引き付けることって、すごく難しいと思うんです。今はサブスクが主流になってきて、テーマソングをスキップできたりするじゃないですか。すごく便利だけど、オープニングテーマもエンディングテーマも作品の一部として、できれば通して観てほしいなと思いますね。
──確かにそうですね。
歌っている側としては、けっこう不安なんです。89秒の映像に楽曲が紐付いているので、レコーディング中も「こんな映像になるのかな?」と常に妄想していて。実際にオンエアされたときにその想像に近かったらうれしいですし、全然違っていても「そうか、こういう視点だったのか」と感動します。そういった意味では、歌った本人は同じ曲を何度も楽しめるので、お得だなと思います(笑)。
──テレビアニメ「ヲタクに恋は難しい」のエンディングで、初めてご自身の楽曲「キミの隣」が流れたときのことって、覚えていますか?
はい! もし流れなかったら恥ずかしいので、家族には照れ臭くて言えなかったんですけど(笑)、録画しつつリアルタイムでも観ていました。オンエア前に曲が差し替えになっていないか、実際耳にするまではドキドキしていましたね。
──そんなことあるわけないじゃないですか(笑)。
歌っている人が変わっているんじゃないかと(笑)。すごく不安でハラハラしていたんですけど、本当に私の声が流れて名前もクレジットされていて、安心でニヤニヤでした。ちょっと時間が経ってからしみじみと噛み締めて、涙がポロっと流れてきましたね。
キーワード2:出会い
──デビューしてから、スタッフさんや同業のアーティスト、そしてファンの方などいろんな出会いがあったと思います。そうした関係性から得られたもの、影響を受けたこともたくさんあったのではないでしょうか。
これまでたくさんの人と出会わせてもらいましたが、まず一番に感謝している人は音楽ディレクターで、ライブでもマニピュレーターをしてくれている菅原拓さん。初めてお会いした頃、歌に関して「君の声はかわいらしい部類に振り分けられるし、曲もバランスを考えないとダサくなってしまうから、そうならないよう一緒にがんばっていこう」と言われたことが、自分にとって意外すぎてびっくりしたんです。かわいい声だったらかわいい曲を歌うのが正解なんじゃないかと思っていたのに、そうじゃないんだって。もちろんそれも1つの正解だとは思うんですけど、私が30代、40代、50代と長く音楽活動を続けていく中で、将来恥ずかしい思いをしないようにと考えてくださった結果なんだなと納得できて、安直になりすぎないように気を付けました。もともとかわいいものは好きですけど、カッコいいものも面白いものも好きだったから、そこで我慢させられたということはまったくなくて、すべて前向きに受け取ることができています。
──現状でのやりやすさを選ぶのではなく、「今これをやっておけば、何年か先には幅が広がっている」と長期的に考えてくださっていたんですね。
それはマネージャーさんたちも一緒で、こんな素人の小娘の何年後かのことを考えて、すごく大事にしてくれていることが伝わってきてうれしかったです。
──前回のインタビューのときも、halcaさんからの提案をスタッフの皆さんが面白がって、すべて採用してくれるという話がありましたが、それも信頼関係あってこそですものね(参照:halca「nolca solca」インタビュー)。
そういう面白いことに対して、レーベルのスタッフさんはいつも賛成してくれるんです。最初はスタッフさん側から奇抜なアイデアが飛んできて「大丈夫かな?」と思ってたけど(笑)、やってみたらどれもいい方向に転がって。初期の頃は人からよく見られたくて、必要以上に礼儀正しくしようとか、ちょっとでも素敵に見えるようにいい子でいようと思っていたんですけど、あとあとそれが自分の首を絞めることもあったんです。最初にスタッフさんが面白いことを放り込んでくれたことで、私も肩の力を抜いてどんどん面白いことを発信できるようになりました。
──加えて、ファンの皆さんの存在も大きいと思います。この5年間ずっと支えてくれた方もいれば、最近ファンになった方もいるでしょうし、そういった方々がライブなどで一堂に会することでパワーや勇気を得られるのかなと。
最初は安直に、自分が女の子だからきっと男性のファンが多いんだろうなと思っていたんですけど、面白い部分を見せるようになってからは女の子のファンも増えているなと感じます。最終的には男女半々ぐらいになったらいいなと考えていて。それこそいろんな作品に主題歌で関わることによって幅広い層の方が応援してくれるようにもなりました。
──アニメなどの作品を通してhalcaさんの楽曲に触れる方も多いから、年齢の幅も広そうですね。
そうなんです。例えば「キミがいたしるし」(テレビアニメ「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」エンディングテーマ)を歌ったときは、リリースイベントにすごくちっちゃい子が親御さんに連れられて来てくれたり、同世代の女の子が応援してくれたりして。そのへんも作品によっていろいろ変化があって面白いので、これからもどんどんいろんなタイプの作品のテーマソングを歌っていきたいです。
──作品だけではなく、ほかのアーティストと交流を持つことによって新たな出会いを得られることもありますよね。
それこそ最近も「あれこれドラスティック feat. 鈴木愛奈」という曲で鈴木愛奈さんとコラボして、これまでhalcaのことを知らなかった方も応援してくれるようになったという手応えがありますね。最初は愛奈さんとのエピソードを聞けるから私のラジオを聴いてくれていたみたいなんですけど、そこから私のキャラクターに対しても親しみを持ってくれて、よりウェルカムになってくれたようで。もちろん愛奈さんご本人との出会いも大きかったです。デビューして4年くらい経って「ソロ活動って寂しいな」と思っていたタイミングに、愛奈さんとご一緒できるチャンスをいただけたんです。最初の出会いは2021年の「アニサマ」(「Animelo Summer Live」)で、そこでコラボさせていただいたときにすごくかわいらしい人だなと思って。しゃべるときも全身を使って感情を表現する姿が素敵で、まずはアーティストとしてというより、人間として好きになってしまったんです。実際に一緒に歌ってみると、声質はまったく違うんですけど、お互いを補い合うような相性のよさも感じられて、また一緒にやりたいなとスタッフさんに言っていたら「あれこれドラスティック feat. 鈴木愛奈」で実現できました。レコーディングでは愛奈さんのディレクションもさせていただいて、それも自分の中で勉強になりましたね。自分のリクエストにすぐ対応してもらえるのもすごいなと思いましたし、そのバリエーションも多くて尊敬の念も増しました。いろんな影響をいただいた、大きな出会いでしたね。
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キーワード3:ライブ