halca「nolca solca」インタビュー|コレサワ、北澤ゆうほ(the peggies)、北川勝利(ROUND TABLE)ら参加した充実の2ndアルバムをいち早く紐解く

halcaが1月25日に2ndアルバム「nolca solca」をリリースする。

アルバムには「かぐや様は告らせたい-ファーストキッスは終わらない-」の挿入歌「ロマンティックマニフェスト」やhalca自身が作詞を手がけた「weather through」、北川勝利(ROUND TABLE)による提供曲「なんで?なんで?なんで?」、コレサワが書き下ろした「LOVEして」、北澤ゆうほ(the peggies)が提供した「BUZZER BEATER」など全12曲を収録。halcaの魅力がふんだんに詰まった濃い1枚に仕上がっており、その充実ぶりはすでに先行配信されている「ロマンティックマニフェスト」からも感じ取ることができる。

音楽ナタリーではひと足早くhalcaにアルバムについて話を聞いた。テキストを読みながら、アルバムの発売を心待ちにしてほしい。

取材・文 / 西廣智一

ライブへの臨み方が変わりました

──2020年2月に1stアルバム「Assortrip」をリリースされてから、まもなく3年が経ちます。同作のリリースタイミング以降、世の中の状況がガラッと変わってしまいましたが、その間もhalcaさんはシングルのリリースを重ね、特に2022年に入ってからはマンスリーライブもスタートさせています。この3年はhalcaさんにとってどんな期間でしたか?

「Assortrip」以前は毎週のようにインストアイベントやさまざまなライブイベントに出させていただいていて、自分の中でライブに対する不安みたいなものも一切ない状態だったんですけど、2020年になっていきなり歌える機会が減ってしまって。お客さんとの距離も急に離れてしまった気もして、すごく寂しく感じました。でも、しばらくしてから緊急事態宣言が明けて、イベントができるようになったときに、自分のライブの完成度が下がっていることに気付いたんです。正直「このままじゃダメだ!」と強く思った瞬間でした。

──そうだったんですね。

私の中で特に大きかったのが、2021年7月に行ったひさしぶりのワンマンライブ。このときは自分の中であまり手応えを感じることができなくて。それまでは1曲終わったらその世界は終わり!みたいに思っていたんですけど、「ライブを1つのショーだと思うようにしましょう」ということをスタッフさんにアドバイスしてもらってからは、だいぶライブへの臨み方が変わりました。それから、同じタイミングに人生初の宝塚観劇を経験したことで、「プロとはこういうものなんだ!」とすごい衝撃を受けて。観てから2、3週間はずっと頭の中が宝塚のことでいっぱいになるくらいカッコよくて、私もお客さんをそういう気持ちにさせなくちゃいけないし、させたいなと思って、マンスリーライブにチャレンジさせてもらうことになりました。もちろん、ライブ1回1回の大切さも実感しましたし、だからこそいついかなるときでもステージに立てるように自分が健康でいなきゃいけないとも思うようになりました。

──僕は先日、「SACRA MUSIC FES. 2022」でひさしぶりにhalcaさんのステージを拝見したんですが、大舞台に動じることなく、堂々とした姿で熱量の高いパフォーマンスを見せてくれたことが印象に残っていて。以前見たときと比べて、見違えるほどに成長していると感じたんです。

「SACRA MUSIC FES. 2022」の様子。

「SACRA MUSIC FES. 2022」の様子。

うれしい! ありがとうございます! マンスリーライブ以降、私自身ライブがいい感じになってきたなと思っていて。そう感じられるようになってからはライブ以外の、例えば撮影してもらう写真やMVも表情などがいい感じだなと思えるようになって、今まで関係ないことだと思っていたことが実は全部つながっていたんだなとわかったんです。

──ライブで得られた自信が、ほかの活動にも影響を与えたのかもしれませんね。

本当にそう思います。以前は「見られるのが恥ずかしい、怖い」とか「上手にできているかな?」とかいろいろ気になっていたんですけど、ライブが楽しくできるようになってから、ほかにも楽しいことがいっぱいあったんだなということに気付けて、カメラを向けられてもレコーディングのときと同じように「失敗してもいいや!」というぐらいの勢いで臨めるようになりましたし、半目になっていても「何百枚撮ったうちの1枚なんだから、全然大丈夫!」とポジティブに考えられるようになりました。

「いいのができちゃいましたね!」って言い合えたのがうれしかった

──1つ壁を乗り越えられたんですね。そんなタイミングに、満を持して2ndアルバム「nolca solca」が発売されます。

タイミングを狙っていたわけではないんですけど、「そろそろアルバムを出せたらいいな」という気持ちは常に心のどこかにあって。いろんなタイプの曲たちが増えてきましたし、仮にそういう曲たちが詰まったアルバムが完成して、ライブで全曲披露することになったときに、最初から最後までステージで歌い切れるぐらいの体力やスキルを身に付けておかなきゃと、アルバムが決まる前から妄想して特訓していました(笑)。

──実際、「時としてバイオレンス」以降にリリースされたシングル曲ってクセが強くてパンチのあるものばかりで、歌うには絶対に体力が必要ですよね。

はい(笑)。「時としてバイオレンス」なんてレコーディングではスムーズに歌えたのに、ライブで歌ってみると意外と難しいですし。そういう意味でも、自分のコンディションを常にベストな状態に持っていくための時間って大事なんだなと思いました。

──では、そんな個性的な既発曲を含むアルバムを制作する際に、どんな内容にしたいとイメージしましたか?

「時としてバイオレンス」「告白バンジージャンプ」「キミがいたしるし」「誰彼スクランブル」「あれこれドラスティック feat. 鈴木愛奈」というシングル表題曲は絶対に入ると思うと、その時点でパンチがすごい曲が相当集まっているので、そこに負けないぐらいインパクトのある曲たちもたくさん欲しかったし、同時に新しいことに挑戦しつつもちゃんとまとまりのある内容にもしたくて。まさに今回のアルバムジャケットのように、いろいろゴチャゴチャしたものがギュッと1つに集まったようなアルバムになるだろうな、いや、なってしまうなと確信していました(笑)。

──これだけカラフルな楽曲が並ぶと、一見バラバラなように感じられるかもしれないけど、アルバムを通して聴いてみると実は非常に統一感が強くて。最後までスルスル聴き進めることができました。

不思議ですよね(笑)。私も最初は「聴いていて疲れちゃうんじゃないか?」と心配だったんですけど、マスタリングのときに初めて通して聴いてみたときに時間が経つのがあっという間に感じられて。スタッフさんたちも同じことを言っていて、「本当にいいアルバムができましたね!」って……毎回言ってくれるんですけど、でも今回はお世辞には感じられなくて(笑)。「なんかいいのができちゃいましたね!」って言い合えたのが本当にうれしかったです。

ほんの少しマーチンさんを意識しました(笑)

──ここからはアルバム用に制作された新曲のことを中心にお話を聞かせてください。まずは、映画「かぐや様は告らせたい-ファーストキッスは終わらない-」の挿入歌「ロマンティックマニフェスト」について。アニメ「かぐや様は告らせたい」とのコラボは3rdシングル「センチメンタルクライシス」以来約4年ぶりです。同じ作家陣で制作されていて、タイトルも「センチメンタルクライシス」を踏襲したテイストですね。

「センチメンタルクライシス」ぶりに「かぐや様」に関わることができるので、絶対に前作と同じく作詞を宮嶋淳子さん、作曲と編曲を山田竜平さんに担当していただきたくて。それ以外考えられないと思っていたら、スタッフさんたちも同じことを考えてくれていたんです。タイトルも3つ案があったんですけど、これならパッと見たときに「かぐや様」のファンの人たちに「あれ、『センチメンタルクライシス』感あるよね」と思ってもらえるはずですし。中には「センチメンタルクライシス」のことは知っていても私が歌っていることまでは知らない人も多いと思うので、タイトルに共通点があって、よく調べてみたら同じ人が作っていて、同じ人が歌っているなと気付いてもらえるためのヒントになったらいいなと思ったんです。

──今回のアルバム中、唯一のバラードタイプの楽曲ですが、歌う際にはどういった点にこだわりましたか?

おこがましいかもしれないですけど、ほんの少しマーチン(鈴木雅之)さんを意識しました(笑)。

──マーチンさんも「かぐや様」のテーマソングを担当していましたね(参照:鈴木雅之と高城れにがデュエット、「かぐや様は告らせたい」新作OPテーマで)。

私はテクニカルな歌い手でもないですし、わりと素直に歌うタイプと思うんですけど、この「ロマンティックマニフェスト」では歌が上手な人たちが歌いたくなるような歌い方にしてみたかったんです。AメロやBメロはいつもの自分に近い感じなんですけど、特にサビはより「かぐや様」の世界に馴染んだらいいなと思って、ビブラートを付けて壮大に歌いました。だから、いつもhalcaを応援してくれている皆さんはちょっとびっくりしてくれるんじゃないかと思います。

──この取材時点では映画は公開前ですが、どのシーンでこの曲が流れるのかも楽しみです。

私も最近、劇中でこの曲が流れるシーンを原作で読み返したんですけど、赤坂アカ先生が描いたかぐや様のセリフや心の中の声など、マンガの中のキーになる言葉を宮嶋さんが歌詞にちりばめてくれて。これから映画を観る人たちとか、世界中の恋人たちや片思いしている人にもしっかり届くような素晴らしい歌詞とメロディだなと思いました。

──今作では豪華な作家陣が楽曲提供しています。「LOVEして」は、1stミニアルバム「white disc +++」収録の「君だけ」以来となるコレサワさんによる提供曲です。

コレサワちゃんにはまた書いてほしいなと思っていたんですけど、なかなかお互いのタイミングが合わなくて。なので、このアルバム制作が決まったときに真っ先にお願いしたんです。しかも、「君だけ」のときみたいにまた長ーいメッセージで送って(笑)。この曲の頭の1行には私が伝えたかったことが凝縮されていて、私がダラダラ書いた長文をかわいらしく表現してくれているんです。あと、自分がコレサワちゃんのライブで大好きなのが、ピョンピョン飛び跳ねながらかわいらしく歌う姿。私もコレサワちゃんの曲の力を借りて、そういう場面を作れたらいいなと思って、「かわいく『イエーイ!』って言えて盛り上がれる曲が欲しいな」ともお願いしました。

──まさにそういう曲に仕上がったと思いますよ。この曲を聴くと、halcaさんがステージ上を所狭しと飛び跳ねながら歌っている姿がイメージできましたから。

うれしい(笑)。そう、曲中に「Wo~ Yeah!」とか合いの手が入っているんですけど、これはコレサワちゃんの声なんです。仮歌に入っていた合いの手がかわいくて、TDチェックの日にコレサワちゃんに「あの声も入れていい?」って聞いたら快諾してくれて。これが加わることで、よりかわいくなりました。

──特にアルバムの流れだと、「告白バンジージャンプ」と「誰彼スクランブル」の間というのがまたいいですよね。

すごい濃い曲に挟まれているけど、しっかり存在感を出してくれていて。この曲、編曲してくれた(川口)圭太さんには「歌詞が怖いよ。呪いの曲かと思った」って言われたんですよ(笑)。女の子なら理解してくれる内容だと思っていて。みんな恥ずかしくて口にはできないかもしれないけど、家に帰って1人で聴いていたら「うん、わかるわー」としみじみ思ってくれるんじゃないかな。なので男の子は……怖いって言わないでください!(笑)