ナタリー PowerPush - the GazettE

バンドの意志を貫いた2年ぶりアルバム「TOXIC」

2009年7月にリリースされた前作「DIM」以来、the GazettEはきわめて濃密な時間を過ごしてきた。レコード会社の移籍、シングル「SHIVER」「Red」「PLEDGE」のリリース、そして、バンド史上初となる東京ドーム公演。さまざまな経験を経て制作されたニューアルバム「TOXIC」は、完全に異質でありながらロック本来の危うさ、スリリングな雰囲気を体感させてくれるこのバンドの個性を、さらに奔放に発揮した作品となった。ヘヴィロック、エレクトロ、ハードコアパンク、ヒップホップ、インダストリアルといったサウンドを飲み込みながら、あらゆるジャンルとシーンを超越するバンド、the GazettEの現在について、メンバー全員に率直に語ってもらった。

取材・文 / 森朋之

「DIM」から2年半の経験値が「TOXIC」を生んだ

──ニューアルバム「TOXIC」、素晴らしいと思います。前作「DIM」はどこか冷たく、切迫感があったと思うんですが、今回はやりたいことをやり切ったという解放感があって。

RUKI(Vo) うん、まさにそういう感じだと思いますね。

葵(G) 「DIM」の冷たさっていうのは、わかる気がしますね。どこかキレイにまとまってたところもあるし。「TOXIC」もかなり緻密にやってはいるんだけど、バンドの生っぽさがすごく出てると思うんですよ。

戒(Dr) 「TOXIC」というタイトルはRUKIから出てきたんですけど、中毒性っていう意味合いがあって。それは昔からあったものだと思うけど、それを前面に出しながら選曲、制作をしていくことで、今まで自分たちがやってきた武器をしっかり出せたんじゃないかな、と。いい流れでやれたと思いますね。

れいた(B) レコーディングも滞ることがなくて。録りで(スケジュールを)巻けたから、歌詞を書く時間もいつもよりあった気がする。

RUKI そっちは別に順調じゃなかったけどね(笑)。

──サウンドの方向性も明確だった?

 ベーシックな部分をどこまでリアルに録れるか?っていうのはありましたけど。まあ、音に関してはこの2人(麗、RUKI)がディレクションしてたから、2人に聞いてみてはどうでしょうか?

──(笑)。ヘヴィロックとエレクトロ的な音像の混ざり具合も、さらに進化してますよね。

麗(G) そこだけを意識してるわけじゃないんですけどね。ヘヴィロックみたいなところも追求して、打ち込みに関してもアイデアをさらに詰め込んでいくっていうだけで。一番大きかったのは、「DIM」から2年半の経験値だと思うんですよ。そこはもう、今までの流れとは全く違っていたので。

ドーム公演はもっと刺激的にやっても良かった

──ポイントはやはり、去年の12月に行われた東京ドーム公演でしょうか?

 そこに向かっていく過程ですよね。シングルのリリースもあったし、そこでいろんなことを学んで、スキルアップして。

──ドームを経験することで、新しいビジョンが見えてきた?

RUKI うーん……。俺は真逆でしたけどね。ドームっていうのはバンドを始めてからの夢でもあったんだけど、実際にステージに立ってみると、自分が思っていたものとは違ったかなって。もちろん、やってて気持ちいいっていうのはあるんだけど、なんて言うか、もっと刺激的にやっても良かったんじゃないかって思ったんですよね。

──なるほど。

RUKI ドームのときは自分らのキャッチーな部分が出てたと思うんです、去年リリースしたシングルも含めて。でも、今なら違うやり方かな、と。あれはあれで終わったことだし、今はもっとやりたいことが増えてる。そういう意味では、やって良かったですけどね。

 (東京ドーム公演に)こだわってたわけではないけど、“そこに向かわなくちゃ”っていう使命感もあったと思うんです。それがなくなって、今年の頭は伸び伸びと音楽を楽しんでる感じもありますね。

──吹っ切れた、と。

 だと思います。

 もちろん楽しいばっかりじゃないですけど、その中でもやりたいことができたのかな、と。細かいことはいろいろあるけど、曲を作ってるときは、純粋に楽しいですからね。2010年は、よりわかりやすい、より聴きやすい曲を意識してたところもあったんですよ。でも、年が明けてからは「いいんじゃない? 好きなことをやれば」っていう。やっぱり自分たちはロックバンドだし、"お茶の間向け"みたいなことじゃなくて、もっと自由に気持ちいいと思う音を詰め込めばいいのかな、と。「TOXIC」みたいな音楽を、あんまりゴールデンの歌番組で聴きたいとは思わないじゃないですか。

──まあ、いい意味で違和感がありますよね。

 そういうバンドだと思うんですよ。あとはライブですよね。“バラードを出して、お茶の間に届ける”ってことじゃなくて、ライブが見えてくるような曲をやりたいっていう。

ニューアルバム「TOXIC」 / 2011年10月5日発売 / Sony Music Records

  • 初回限定盤[CD+DVD] / 4990円(税込) / SRCL-7761~7762 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤[CD] / 3150円(税込) / SRCL-7763 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. INFUSE INTO
  2. VENOMOUS SPIDER'S WEB
  3. SLUDGY CULT
  4. RED
  5. THE SUICIDE CIRCUS
  6. SHIVER
  7. MY DEVIL ON THE BED
  8. UNTITLED
  9. PLEDGE
  10. RUTHLESS DEED
  11. PSYCHOPATH
  12. VORTEX
  13. TOMORROW NEVER DIES
  14. OMEGA
the GazettE(がぜっと)

RUKI(Vo)、麗(うるは/G)、葵(あおい/G)、れいた(B)、戒(かい/Dr)から成る2002年結成のヴィジュアル系バンド。インディーズ時代より激しくパンキッシュなサウンドと妖艶なルックスで絶大な人気を博し、2005年12月リリースのシングル「Cassis」でメジャーデビューを果たす。2006年5月には初の日本武道館ワンマンライブを敢行。同年7月にはドイツで初の海外ワンマンライブを行った。2007年にはヨーロッパツアーを含む全72公演にわたるロングツアー「[Pulse Wriggling To Black]」を実施し、大成功を収める。2010年7月リリースのシングル「SHIVER」より、所属レーベルをSony Music Recordsに移籍。同年12月には初の東京ドームワンマンライブ「TOUR 10 NAMELESS LIBERTY SIX BLULLETS FINAL THE NAMELESS LIBERTY」を行った。