作詞家・須藤優は伸びしろがすごくある
──2曲目の「Eleven Back」は、1曲目とはまったくサウンドが違いますね。ビートは打ち込みですか?
須藤 完全に打ち込みです。
──どんなふうに作った曲ですか?
須藤 これは宏介が昔ソロでやっていたイベントのために2人で作った、最初期の曲のリメイクです。イントロとサビはすごくいいなと思っていたけど全体の流れを作りきれていなくて、ずっとお蔵に入っていたものを「やっぱりいいよね」ということになって急遽作り直しました。サビはできていたから、宏介にAメロとBメロを新しく作ってもらって。最初は「できるかな」という不安のほうが大きかったんですけど、宏介の弾き語りでAメロBメロをもらったときに「これだ!」というものが浮かびました。音像は打ち込みで、ベースがグルーヴィな感じになりました。
──今だからこそ完成させられた曲。
須藤 そうですね。自分たちの成長を感じられた曲です。
──続いては「柊」。個人的に大好きな曲です。いいメロディ、いい歌、いい歌詞、以上。という感じがします。どんなイメージで作った曲ですか。
須藤 いい曲書きたいな、と思っていました(笑)。
──(笑)。
須藤 「音楽に詳しくない人が聴いてもグッとくるようなものを作りたい」と常に考えているんですけど、普段はミュージシャンの目線で見ちゃうというか、解像度を高くして見ちゃうことが多いので。J-POPとは?というところに重きを置きつつ、その中でTenTwentyっぽさを出すにはどうしたらいいか?ということを考えて作りました。
斎藤 仮の歌詞まで入った完成度の高いデモが届いたんですよ。スッティー的にもすごく思い入れが強い曲で「メロディはこのままで。歌詞だけ変えて」みたいな感じだったので。今までは自分の好きなほうにメロディを動かしながら歌詞を書いていたけど、「これはメロディ固定で作詞家として臨もう」と考えて、とにかくいい歌にしようと作っていきました。冬の別れを思う切なさも温かさもある曲、という世界が仮の歌詞の段階からあって、題材としてすごく素敵だなと思ったので、そこを軸に。
──須藤さんの歌詞があったんですね。
須藤 歌詞はあんまり書いたことがなかったけど、40歳になったし、今までやったことのないことをしようと考えてチャレンジしてみました。これからはそういうこともがんばってみようかなと思っています。
──でも今回は「書き換えていいよ」と。
須藤 そうです。1回書いてみたけど、宏介の好きな言葉で紡いでほしいと思ったので。
──斎藤さん、どうですか? 作詞家・須藤優の可能性は。
斎藤 伸びしろがすごくあると思います。
須藤 優しい言い方だな(笑)。
斎藤 いや、でも本当に発明に勝るものはないというか。素晴らしい作詞家が頭を悩ませて作った1曲でも、大元を作った人のたった1行の「ここはこの言葉がいいんだ」という発明に勝るものはなくて。この曲の歌詞で言うと「So Many Love」を繰り返すところとか、落ちサビ前の「ごめんね」のところとかは、仮の歌詞をそのまま使ってるんです。そこは作詞家・スッティーの発明だったので、これ以上は書けないと思ってそのまま使って、あとはパズルを埋めるように書いていきました。
──素敵な曲です。一転して、その次の「マツリカは夜に咲く」は、クラヴィネットやサックスが活躍する、謎の無国籍なグルーヴを感じる妖しくてカッコいい曲ですね。これはどのように生まれた曲ですか?
須藤 「何か面白い曲を作りたいな」というところから始まって、クラヴィネットのフレーズを最初に思いついて、そこから流れを組み立てていきました。踊れる面白い曲になったから「ここにソプラノサックスを入れたらさらに面白いかな」とか、全体的に音で遊んだ感じです。ジャンルで言うとファンクというか、ヒップホップっぽさもありつつ。
──ラップも入っていますしね。斎藤さん、この曲についてはどうですか?
斎藤 EPの制作の順番で言うと「ハレ」を最初に、「マツリカは夜に咲く」は2番目に作ったんですね。なので「ハレ」の反動みたいなものはけっこう強かったかもしれない。「ハレ」が、天井なく空に向かって開けた曲だったので、そこの反動で「マツリカは夜に咲く」には閉塞感があって、その中でどうあがくか?というところが肝だったかなと思います。
──ある意味つながっている。
斎藤 作る時期が近いと似たテーマになるというのは、このEPを聴き直していて感じたりはします。
──マツリカって、ジャスミンのことでしたっけ。
斎藤 そうです。「夜に咲く花は何?」ってChatGPTに聞いたら何個か出てきて、その中で響きが一番よかった(笑)。「バオバブ」とかもあったんですけど、バオバブだと歌にならないなと思って(笑)。あと、ジャスミンティーを毎日飲んでいるので、そういう身近さもあって使いました。
──エキゾチックな感じがしますね。ちょっと謎めいた。
斎藤 夜に咲く花って面白いなと思ったんですよ。人に見てほしいから咲いているわけじゃないというか。人間にもそれはあって、人に見てほしい努力と、見られなくてもいいものがあるよなとか。
雑味や衝動を面白く思えている
──そして今回のEPの中では最初に作った曲で、去年10月に先行配信リリースされた「ハレ」が最後に入ってます。改めて、この曲はTenTwentyにとってどんな曲ですか?
須藤 この曲も今だからできたというか、昔のTenTwentyだったらここまで暴れていなかったかもしれない。はみ出したようなミックスでハイが強調されていたり、ギターもファズでガンガンに歪んでいたり、演奏も合っているようで合っていないというか、グシャグシャにしているので。そういう雑味や衝動みたいな部分を「それもいいよね」と思えるようになった曲ですね。
──雑味というワードは、すごくしっくり来ます。確かにTenTwentyの6年間を振り返ると、雑味のよさを味わう方向へどんどん進んできている気がします。
須藤 雑味を出したのは宏介のひと言がきっかけで。もともと「ハレ」はもうちょっと整理された曲だったんですけど「ギターがめっちゃ歪んでも面白そうだね」と言われたので「確かに」と。
斎藤 僕は音楽を聴くとき、自然とギターに耳が行ってしまうんですけど、この曲が持っているポテンシャルに対してはもっとギターの押しが強いほうが、いろんなものが一丸となるんじゃないかな?と思って。それこそ初期のTenTwentyでは絶対に作れなかった曲だったし、テーマとしてもすごく前向きで、希望に満ちた曲ですね。
──そうですね。歌詞の力がとても強い曲です。
斎藤 自分自身が、根っからの「前を向いて明るく生きましょう」という人ではない分、これまでだったら多少なりとも「これでいいのかな?」みたいな違和感があったと思うんですけど、今はそれが一切なくて。「これはいい曲だから出したい」と言えるようになったのも、TenTwentyの歴史を重ねてきた成果だろうし、その反動で「マツリカは夜に咲く」みたいな曲を作るのもまたTenTwentyだし。どれも今のTenTwentyにしかできない曲たちになったんじゃないかなと感じています。
──という、現在のTenTwentyを刻み込んだ5曲を収めた自信作を携えて2月18日からはリリースツアーが始まります(※取材は2月上旬に実施)。どんなイメージで臨みますか?
須藤 EPの5曲が輝くのはもちろん、昔の曲も「定番の流れだよね」とはならないように考えているので。自分らにとってもお客さんにとっても面白いものになる、ということは常に頭に置いています。
──そのあと4月には東京と大阪で、初のビルボードライブ公演があります。
斎藤 初めてなのでめっちゃ楽しみだし、絶対いいライブになるとは思っているんですけど、今現在何をやるかはゼロです(笑)。ただ2人で話しているのは、極力同期(シーケンスデータ)を流さず、人力で演奏したいということ。あとはサポートミュージシャンたちもいつもと違う、1音1音に説得力のある人たちに来てもらうので、そこも含めてどういうふうになるのかな?という期待がすごくありますね。自分自身もできるだけ、その環境やメンバーに影響を受けたいと思いながら臨むので、そこで自分がどういう歌を歌って、どういうギターを弾いて、TenTwentyが今後どういうふうに進んでいくのか、そしてその経験を持ち帰って新しい曲を作っていくことに、ものすごく興味があります。シンプルに楽しみですね。
公演情報
TenTwenty ONE MAN LIVE TOUR 2026「Abyss Red」
- 2026年2月18日(水)福岡県 DRUM LOGOS
- 2026年2月26日(木)大阪府 なんばHatch
- 2026年2月27日(金)愛知県 DIAMOND HALL
- 2026年3月6日(金)宮城県 Rensa
- 2026年3月8日(日)石川県 EIGHT HALL
- 2026年3月11日(水)神奈川県 KT Zepp Yokohama
TenTwenty Billboard Live Tour 2026「NIGHTFLY」
- 2026年4月7日(火)東京都 ビルボードライブ東京
[1stステージ]OPEN 17:00 / START 18:00
[2ndステージ]OPEN 20:00 / START 21:00 - 2026年4月9日(木)大阪府 ビルボードライブ大阪
[1stステージ]OPEN 17:00 / START 18:00
[2ndステージ]OPEN 20:00 / START 21:00
プロフィール
TenTwenty(テントゥエンティ)
斎藤宏介(Vo, G / UNISON SQUARE GARDEN)と須藤優(B / ex. U&DESIGN)が結成したバンド。2020年1月に初の音源となるアルバム「White White」を発表した。その後も精力的な音源リリースとライブ活動を展開。2025年3月に初のEP「Border=Border」をリリースし、このタイミングでバンド名の表記をXIIXからTenTwentyに変更した。2026年2月に2作目のEP「Abyss Red」をリリース。同月より全国6都市を回るライブツアーを開催する。
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