26歳の「ぶちかませ」を叫んだ「自分革命」
──学生時代に書いたという曲についても聞かせてください。中でも「Dear drops」はかなり古い曲ということですが。
「Dear drops」は僕が初めて書いた曲なんですよ。シンガーソングライターになりたいと言ってるのにオリジナル曲がない、どうしようというときに作った曲で。つかまり立ちみたいな曲なんですけど、原点を振り返る5周年のタイミングだからこそ出せた感はあります。
──この曲を作っていた時期の自分は、今の自分からどう見えますか?
学生時代に作った4曲すべてに言えるんですけど、とても青いなと思います。その中でも「自分革命」に一番青さを感じます。
──「自分革命」はかなりパンクなアレンジになってますね。
どうアレンジするか、最初はかなり困ったんですよ。原曲からテンポを上げてみたり、Dメロでちょっと雰囲気を変えてみたりして。最終的にはアレンジも相まって26歳の「ぶちかませ」を叫べたと思います。
──5年以上前に自分自身を奮い立たせるために書いた曲が、ちゃんと今の自分の曲になっている。
昔の自分にバトンを渡されている感覚があります。青いけど、その青さがちょっと眩しいというか。そういう曲が今の僕にバトンを渡して、アルバムが「最終想者」で終わるのもきれいですよね。こうやって過去の曲が整って、形になると救われます。
──デビュー5周年のアニバーサリーに、改めて自分がどこから来てどこに行くのかを表現したアルバムということでしょうか。
そうですね。その言葉がとてもしっくりきます。自分の音楽はずっと模索していくものだと思いつつも、ひとまず5周年という節目のタイミングで出した答えはこれです、という。そういうアルバムですね。で、今回のアルバムは船とか航海の旅のイメージで。前回の「HOMETOWN」ツアー(「Tani Yuuki Hall Tour 2024『HOMETOWN』」)は汽車のイメージだったんですけど、今回のアルバムの1曲目「everyday」には電車の音が入っているんです。狙ったわけではないけど、前回のツアーのテーマをちゃんとアルバムに引き継いでいる。そこもアルバムの中で気に入っているポイントですね。
この5年に人生が詰まっている
──9月に始まるツアーや、武道館に向けてはどんなイメージがありますか?
どうするかはいまだにスタッフと話しているんですけど、僕の原点はやっぱり「Myra」で。自分の実家の壁をバックに撮った映像から音楽活動がスタートしたので、そういうルーツ的なものを感じさせるような演出も取り入れたいと思ってます。スペースの都合上、どう表現できるかはわからないですが、そこから航海の旅に出るような演出もできたらいいですね。あとは来てくれた人に何を持って帰ってもらおうかというのも考えています。
──このアルバムには船旅のイメージがあるという話ですけど、自分が帆を張って海を航海している。そこに一緒に乗ってくれる人がいる。そういうイメージもツアーにおいてとても大事なのではないかと。
そうですね。お客さんも、一緒に作る人たちも、乗組員として一緒に作っていく。ライブとかツアーって、それに近いものがありますよね。
──以前のインタビューでは、「kotodama」ツアーの頃は歌う理由が見つからなかったという話もしていました。そこからはモードも変わったのではないかと思います。自分のことではなく、聴いてくれる人に何を届けるか向き合いながら音楽を作っているような。その変化はこの5年の中でも特に大きかったんじゃないかと思うんですけど、どうでしょうか?
そうですね。歌う理由が見つからないままの世界線、そのまま砂になって塵になってしまったような世界線もあったかもしれない。でも、そんなこと言ってる場合じゃない。そこを脱出することができたんだと思います。たぶん“病み”の期間が終わったんじゃないですかね。「kotodama」の頃は急激な状況の変化への戸惑いや疲弊もあって、自分の中で辻褄を合わせることができなかった。「後悔史」で「もう二度と見失わないように」と歌ったように、その反動を経て、やっと落ち着きを取り戻したんだと思います。ただ、あのときはあのときで、自分のリアルを書き記したいということだったんでしょうね。
──改めて、Taniさんにとってのこの5年はどういう期間だったと思いますか?
激動の状況に適応したり、殻を破ったり、新しいことを始めてみたり、行き詰まったり、選択肢が増えて、その中で何かを選ばなくちゃいけなかったりとか……なんだか“人生”って感じがします。でもやっぱり、今に近付けば近付くほど色濃くて。「Myra」以前では経験できなかったこと、当時置いてきてしまったものも、ここで取り返している気がします。経験値もそうだし、人との関わり合いもそうだし。楽曲制作とかMVとか撮影も含めたクリエイティブなこともそうで、いろんなことが回収できている。この5年に人生が詰まっているというか、濃密だったなと思います。
公演情報
Tani Yuuki Free Live "Bon Voyage!" at横浜赤レンガ倉庫
2025年6月29日(日)神奈川県 横浜赤レンガ倉庫
Tani Yuuki Live Tour 2025 "Still love… this"
- 2025年9月25日(木)神奈川県 茅ヶ崎市民文化会館
- 2025年10月4日(土)千葉県 森のホール21 大ホール
- 2025年10月13日(月・祝)大阪府 グランキューブ大阪(大阪府立国際会議場)メインホール
- 2025年10月17日(金)石川県 本多の森 北電ホール
- 2025年10月23日(木)愛知県 刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール
- 2025年11月2日(日)宮城県 仙台サンプラザホール
- 2025年11月9日(日)広島県 上野学園ホール
- 2025年11月14日(金)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
- 2025年11月22日(土)奈良県 なら100年会館
- 2025年11月28日(金)福岡県 福岡サンパレス
- 2025年12月6日(土)沖縄県 那覇文化芸術劇場なはーと 大劇場
- 2025年12月15日(月)東京都 日本武道館
プロフィール
Tani Yuuki(タニユウキ)
1998年生まれ、神奈川県茅ヶ崎出身のシンガーソングライター。配信シングル「Myra」「W/X/Y」がティーンを中心に支持され大ヒット。その優しく切ない歌声と、恋愛に思い悩む日常を描いた歌詞がSNSで人気を集めている。2021年12月に初のアルバム「Memories」を配信リリースし、2022年4月にはタワーレコード限定でCD盤を発表。2025年6月に3rdアルバム「航海士」をリリース。9月より全国ホールツアーを行い、12月15日に東京・日本武道館で単独公演を行う。
Tani Yuuki|Tani Yuuki オフィシャルサイト・ファンクラブ「谷乃湯 ~たにのゆ~」
Tani Yuuki♨️ (@yu___09___11) | X