田村ゆかり、精力的すぎる音楽活動の真意「自分ではこれがハイペースだとも感じていないんですよ」 (3/3)

ウサギ、めっちゃくちゃかわいいですよ……

──7曲目の「Wonder habit」の作編曲は田村さんの作品初参加となる永塚健登さんですね。スカの要素が入った軽快な楽曲で、松井さんによる歌詞はツアータイトルにもつながるウサギがモチーフになっています。

この曲は、実は「かくれんぼ。」の時点でやりとりをしていたんですよ。そのときは結局保留になっちゃったんですけど、今聴いてもかわいらしい曲だなと思って、改めて仕上げてもらいました。ウサギをモチーフにしたのは、私が今ウサギと住んでいるというのもあって……以前、猫みたいな女の子の歌詞を書いてもらったことはあったんですけど、今回はツアーのタイトルが「Honey bunny」なので、ウサギのような女の子として書いてもらいました。

田村ゆかり「I love it♡」ジャケット

田村ゆかり「I love it♡」ジャケット

──ウサギのhabit=習性を。

はい。「Da Da Da 抱っこしちゃってもいいから」というフレーズを見たときは、ちょっとびっくりしちゃいましたね。あまり松井さんのイメージになかったから。

──タイトルやテーマを考えると、ツアーではこの曲がフックになるのかなと思いました。ちなみに、ウサギってかわいいですか? 実は少しだけ飼ってみようかと悩んだことがあって……。

めっちゃくちゃかわいいですよ……。私は基本的に猫が好きだったんです。でもウサギに出会ってからは断然ウサギ派ですね。ただ、犬や猫に求めているものを考えているんだったら、犬猫にしたほうがいいですよ。ウサギは本当に懐かないというか、懐いてはいるんですけど、犬や猫のような行動はあまりしないから。

──そこがいい、ってことですか?

まあ寄ってきてくれたほうがうれしいですけど(笑)。寄ってくるくせに、触ろうとしたらピョンと逃げちゃうんですよ。触られるのがあまり好きじゃないので。常にべったりはしないんだけど、寝てたりしたらいつの間にかこのへん(頭のあたり)にいて、すごい覗き込まれてたり、そういうことはあります。鳴いたりしないから一方的に話しかけちゃう感じになっちゃうので、それで大丈夫だったらウサギはかわいいと思います。あと、よく「ウサギは飼うのに手がかからない」と言われますけど、手はかかります(笑)。抱っこが本当に嫌いなので、傷だらけになりますけど、それでよければ。

──じゃあ「抱っこしちゃってもいいから」というのは本来難しいこと?

そうなんですよ。だからこれは本当に懐いてるよって意味です。

自分ではこれがハイペースだとも感じていないんですよ

──そしてラストの「好きしかありえない」はブラスロックのような華やかさがあって、作品を大団円で締めくくるような楽曲ですね。ライブの会場がパッと明るくなる場面が想像できます。

そうですね。ブラスが目立つ曲を求めていたわけじゃないんですが、デモを聴いたときに、このブラスの底抜けに明るい感じがすごく印象に残って。

──歌詞については、先ほどお話に挙がった「ようこそ」的なお出迎えソングと対になる……。

「また会おうね」のやつですね。「また会おうね」というか「ありがとな!」みたいな(笑)。

──ライブで歌う「ありがとな!」がまた増えたと。

はい。最初はツアーのセットリストを組むのに曲がないかもってけっこう迷ってたんですけど、2枚のEPに加えてこのミニアルバムができたので、今度は逆に「この曲、入れたかったのに入る場所がないな……」と悩む曲も多くなりました。

──でも基本的にはこの半年でできた新曲が多く披露されるツアーになりそう?

そうなると思います。

──ツアーは6月頭から9月まで続きますけど、合計22本となるとけっこう大変ですよね。

私もいい歳になっているので、スタッフ側としては本数を減らしたほうがいいという意見だったんですよ。「一応会場の候補は多めにあるけど……ここから選んでね」って。ただ、自分の人生を考えたときに、ここで10数本に減らしたとして、来年同じようにやれるかどうかは年齢的にも集客的にもわからないじゃないですか。だったらやれるうちにやっといたほうがいいじゃん、というふうに思っていて。これだけの本数あったら全部が満員になるとは思わないですけど、じゃあ来年22本もやれるのかと言ったらわからないし。

──合計28公演という過去最長だった昨年のツアーを経てもなおそう思うということは、ロングツアーが楽しかったということですよね?

28本と言うと大変そうに聞こえるかもしれませんけど、私は週末にしかライブをやっていないので、期間的には長くなるけどそんなにずーっとライブを続けてやるわけではないんですよ。だから特につらいということもなく。

──2017年に個人のレーベルCana ariaを立ち上げたのは、特に制作に追われることなくマイペースに、スローペースに活動するのが目的だと思っていたんです。でも実際はコンスタントに作品を作ってはツアーを回って……という。田村さんにとってのマイペースがこれほどハイペースになるというのは想像していなかったので、少し驚いているんです。

メーカーに所属していると、アーティストは1人じゃないから、当然ですけどいろんなスケジュールがパズルのように決まっていくと思うんです。その中で、アーティスト単体でこのくらいは売り上げないと、という目標のうえでリリースを組んだりイベントをやったり。それは全然否定することじゃないんですけど、私はそれがきっと嫌だったんだと思うんですね。当時はそんなこと考えてもいませんでしたけど、自分でやるようになって、好きに動ける今のスタイルが私には合ってたんだなと気が付いた。やりたかったらやればいいし、やりたくなければやらなければいいし、ちょっと暇になったからハワイにでも行こうかとか……。

──(笑)。

そんな感じが合ってたのかなって思います。ゆっくりやっていくことももちろんできるんですけど、機会があるんだったらやりたいよねっていう。そもそも自分ではこれがハイペースだとも感じていないんですよ。終わるとすぐ忘れちゃうから(笑)。終わったら「楽しかったね。じゃあ次!」ってなっちゃう。きっと昔から、そのくらいのペースでやりたかったんだと思うんですよね。

──なるほど。このアルバムを出してツアーをやって、というバンドマンみたいな泥臭い人生を続けていくのかな?と思いまして、そのへんどう考えているのかなと思っていたんです。

わかんないですよ? 急にやめるかもしれないし(笑)。最近は、お客さんのニーズにばかり応えていたら、自分がやりたいことができなくなっちゃうなと思っていて。もちろんそれは「突き放していきたい」ということではなくて。例えばブルーノートみたいな小さな会場でのライブをやりたくても、「でもそれだと入れない人が多くなって不満が出ちゃうよな」と思うと実現は難しいなと考えてしまう。だったらいつやれるの?と思ったら……10年後にやるとして、お客さんが50人くらいに減っていたらやれないだろうし、だったら今のうちにやったほうがいい。

──確かに。もちろんチケットの当選倍率は高くなって、取れなかった人の不満の声は浴びてしまうと思いますけど、それ以上に機を逃してほしくはないですね。

今やんなかったら、というか、なんならもっと前にやってたほうがきっと楽しかったと思うんですよ。やりたいと思ったことは、そう思っているうちにやっておかないと。その前にまずはツアーがありますけど……チケットはまだ買えますので、ぜひ来てください(笑)。

──そんな岡崎体育さんのようなことを(笑)。

あのゴールデンボンバーさんのCM観ました?(参照:皆さんご存知ですか?ゴールデンボンバー、広島&山口公演の券売促すCM公開) あれ、私たちもやりたいなと思ったんですけど、CMを作って飛んでいくお金とそれを観て売れるであろうチケットの代金を考えたら、これCM代のほうが高くつきそうだからうちはやれないなって(笑)。あの、みんなチケットはないと思いがちで、あとになって「チケットあるの知らなかった」と言われたりしますけど、あります。チケットは、あります! ありまーーーす! あはははは!

公演情報

田村ゆかり LOVE ♡ LIVE 2024 *Honey bunny*

  • 2024年6月1日(土)東京都 J:COMホール八王子
  • 2024年6月2日(日)東京都 J:COMホール八王子
  • 2024年6月8日(土)千葉県 浦安市文化会館 大ホール
  • 2024年6月9日(日)栃木県 栃木県総合文化センター メインホール
  • 2024年6月22日(土)愛知県 Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
  • 2024年6月23日(日)埼玉県 大宮ソニックシティ 大ホール
  • 2024年6月29日(土)福岡県 福岡サンパレス
  • 2024年6月30日(日)熊本県 市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
  • 2024年7月6日(土)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2024年7月13日(土)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
  • 2024年7月14日(日)京都府 ロームシアター京都 メインホール
  • 2024年7月20日(土)神奈川県 神奈川県民ホール
  • 2024年7月21日(日)群馬県 高崎芸術劇場 大劇場
  • 2024年8月4日(日)茨城県 水戸市民会館 グロービスホール
  • 2024年8月10日(土)新潟県 新潟テルサ
  • 2024年8月12日(月・振休)石川県 本多の森 北電ホール
  • 2024年8月17日(土)静岡県 アクトシティ浜松 大ホール
  • 2024年8月18日(日)大阪府 グランキューブ大阪(大阪国際会議場)
  • 2024年8月31日(土)岡山県 倉敷市民会館
  • 2024年9月1日(日)愛媛県 松山市民会館
  • 2024年9月7日(土)東京都 東京ガーデンシアター
  • 2024年9月8日(日)東京都 東京ガーデンシアター

プロフィール

田村ゆかり(タムラユカリ)

2月27日生まれ、福岡出身の声優アーティスト。1997年にCDデビューを果たし、声優および歌手としての活動を始める。いずれも精力的な活動で着実に評価を集め、2008年には声優として3人目となる日本武道館公演を行った。2017年に自身のレーベル・Cana ariaを立ち上げ、同年11月にCana aria第1弾作品となるミニアルバム「Princess ♡ Limited」を発表。以降もコンスタントに作品をリリースしている。2023年4月には通算13枚目のオリジナルアルバム「かくれんぼ。」を発表し、同年4月から9月にかけて全国ツアー「田村ゆかり LOVE ♡ LIVE 2023 *with me?*」を行った。11月に6曲入りEP「Altoemion」、12月に4曲入りEP「You Are The World!」をリリースし、2024年5月に8曲入りミニアルバム「I love it♡」を発表。6月から9月にかけて全20会場、合計22公演の全国ツアー「田村ゆかり LOVE ♡ LIVE 2024 *Honey bunny*」を行う。

※記事初出時より小見出しを一部変更しました。

2024年5月31日更新