RECではギター / ドラムのパートチェンジも
──サスフォーの強いところは、そういう往年のロックが持つロマンを感じさせる楽曲がありつつ、「Venezia」や「Betty」みたいにムーディな楽曲も存在すること。そこがほかの同世代バンドとの違いだなと思うんです。
Washiyama 確かに。でも「Betty」に関しては2015年ぐらいからあった曲で。
Dennis 僕がバンドに入る前、メンバーからFacebookで連絡をもらったときからあった音源ですね。
Sawada Dennisをバンドに誘ったとき、最初に聴かせたのが「Betty」だったよね。
Washiyama その前のドラムがルイスっていう外国人だったんですけど、ボサノバとかラテン系のドラムを叩くやつだったので、そういう要素を入れたいなと思って書いて。なんだかんだ、いまだに生き残っている曲ですね。当時、自分が通っていた音楽学校の色みたいなものもめちゃめちゃ入っていて、それがDennisの加入によってまたちょっと違うものに変化して。「Venezia」と「Betty」をやっているときのDennisのドラムは、それこそFukudaくんが言うように「やれるものならやってみろ」って感じだよね(笑)。
Dennis そうですね。
Sawada まあ、完コピは無理でしょうな(笑)。
Dennis すごく情緒的な楽曲なので、今までの人生をにじませながら叩かないといけない曲かな。なので、コピーしてくださるときもそこを意識すると、自分なりのプレイができるかもしれないですね。
──そんなムーディな「Betty」ですが、ギターソロはかなり派手ですよね。
Washiyama このギターソロは俺が弾いているんですけど、当時の音楽学校にいた頃に感じた怒りをギターに添えてみた感じですね。本当はジャズの道に進むはずだったんですが、1年で学校が“爆発”したので、怒りのフュージョンギターソロという(笑)。
Fukuda 学校が潰れたってことです。
──なるほど……。この2曲に加えて、「Tell Them」も独特の存在感を放っています。
Sawada 「Tell Them」はDennisが書いてくれたんだよね。
──クライマックスにふさわしい1曲だと思いました。
Washiyama 空気感が急に変わりますものね。
Dennis 僕はピアノが弾けないんですけど、これはピアノっぽい感じをギターで再現できないかなというところから始まった曲なんです。
Washiyama レコーディングではギターをDennisが弾いていて、ドラムを俺が叩いているという。
──えっ? そうなんですね。
Washiyama 最近、ライブでも頻繁にパートを交代するんですけど、お互い違う楽器のほうがいい顔しているんですよ。俺もドラムを叩いているときは、めっちゃニヤニヤしているし。
Fukuda いつもすごく楽しそう。
Dennis ギターも楽しいですね(笑)。
Washiyama いい顔で弾くもんね。そういう要素も合わせて感じてもらいたいパートチェンジというか、Dennisが歌も担当してるし。
サスフォーのソウルを感じて
──この曲ではDennisさんの歌がいい味を出しているんですよね。
Washiyama そう、めっちゃいい歌。
Dennis うれしい。ありがとうございます。
──こういうソウルテイストって以前の楽曲にもちりばめられていたと思うんですけど、「Tell Them」ではそこにより特化しながら、歌やプレイ含め“聴かせる”ことをより重視したというか。
Dennis そうですね。結局、説得力を持たせるという意味では、楽器をめちゃめちゃ練習したところで歌には勝てないんですよね。人の心に届くっていう点でも、どんな楽器もやっぱり歌には勝てないとドラマーながら思うので、このアルバムで歌うことになる前から歌の練習をしておいてよかったなと思ってます(笑)。
Washiyama 確かにね(笑)。前のミニアルバム「GIANTSTAMP」(2019年7月発表)でもDennisとデュオで歌う曲はあったんですけど、こんなにがっつりとDennisの歌をフィーチャーしたのは、ある意味サスフォーとしてもこいつの歌を全面に打ち出していきたいという意思表示でもある。あと、サスフォーを聴いてなんとなくソウルとかR&Bの要素を感じると思ってくれた人が、本格的なソウルを体感できる場所にもなるんじゃないかな。そういう意味でも、「Tell Them」みたいにDennisの要素ががっつり入った曲を今後も入れられたらなと思っています。それにしてもこの曲、本当にいい位置に入っていますよね。
──本当にその通りで、ここでクライマックスを迎えて「INVERSION」でアルバムを締めくくる、この流れが完璧なんですよ。
Sawada でも、実はその流れでかなり揉めまして(笑)。1度は別の曲順でフィックスしたんですけど、ギリギリのタイミングで「やっぱり(曲順を)変えたいかもしれない」って、メンバーじゃなくてマネージャーから言われて。そこから喫茶店で長時間ディスカッションしてできたのが、完璧とおっしゃっていただいた今の曲順なんです(笑)。
Washiyama しかも、本当に完成の直前にね。俺もエンジニアとしてマスタリングに関わっていたので、曲間をまた作り直さないといけなかったんですよ。
Sawada いや、マジですごかったですね。喫茶店で10時間くらい話し合いましたから(笑)。
──ギリギリまでがんばった甲斐がありましたね。あと、このアルバムって音がめちゃめちゃいいですよね?
Washiyama ああ、ありがとうございます。
Sawada カッコいいですよね。
Washiyama レコーディングスタジオの影響もあるのかな。POD STUDIOという狛江にあるPIZZA OF DEATHのスタジオと、町田にあるDUTCH MAMA STUDIOで録音したんですが、比率的には9割ぐらいPOD STUDIOなんです。そのスタジオとすごく相性がいいというか、それこそドラムの録り音が特徴的で。
Dennis レコーディングルームに入ってしゃべるだけでも、このアルバムの音になる感じがするくらいの。
Washiyama 加えて、そのスタジオのことを熟知しているレコーディングエンジニアの方と俺らとの相性もすごくよくて、楽しく録れたのが一番デカかった。その次に、俺のエンジニアリングがめちゃめちゃうまくなったって感じですかね。
Fukuda ミックスは彼が手がけたので。
Washiyama 例えば「BIGHEAD」とかはめちゃめちゃな感じになることなく、自分の中でのリミットが作れるようになったし。あと、俺以外のメンバーがレコーディングの音に対して理解を深めてくれたことも大きくて。「ブレイクアウト・ジャンキーブルースメン」とか「HEY DUDE」、そして「KARMA」を録ったことで、どういうやったら楽曲に寄り添う音が出せるかが、なんとなく伝わってくるようになったんです。そこが一番デカいかな。スタジオとか録っている人の力も大きいけど、何より録音に対して真摯に立ち向かってくれたメンバーがいたから、こういう音になったのかもしれませんね。
Fukuda 確かにみんな、最近変わったよね。確実にアップグレードしていると思うし。その甲斐あって、バンドとしてのアンサンブルもまとまってきたのかな。
Sawada ようやく、本当の意味でバンドになれた感があるよね。
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