着実に登らないとたどり着けない
──「東京流星群」の演奏後のMCでは、渋谷さんが「10年、俺らは随分ゆっくり歩いてると思うんだよね」っておっしゃってました。改めて振り返ってみて、この10年間皆さんはゆっくり歩いてきたと思いますか?
柳沢 10年という時間自体は短かったと思います。でもそのゆっくりは、バンドの“サクセスストーリー”のペースでしょ?(笑)
渋谷 そう、その“サクセスストーリー”としてだね(笑)。サクセスと今の段階で言ってしまっていいかはわからないけど、そういう意味で10年はゆっくり歩いてきたと思います。
柳沢 何と比べて遅いのかはわからないけど、きっとバンドを始めた頃の僕たちは、もっともっと早いペースで駆け抜けられると思ってたし。そもそも21歳でメジャーデビューをしたときにはもう売れたと思ったもんね。その前に大会でも優勝してるしね。
上杉 そのときの自分たちからしたら、今の年齢でタワーマンションに住んでポルシェ乗ってると思ってたもんね。
渋谷 あはは(笑)。結婚して、子供もいてね。
柳沢 Zeppという場所に来たところまでで10年かかったと考えると、昔から知ってくれてる人たちに対しては、ちょっとのんびりに感じさせちゃったかもなって思いますね。
──ゆっくりだったからこそ、着実に階段を登ってきたという思いもありますか?
柳沢 はい。「着実に登らないとたどり着けないんですね」っていうのを、身を以て実感しているバンドだと思います。よく「2段飛ばしで来た」とかそういう比喩って言いますよね。2段飛ばしでも3段飛ばしでもいいんですけど、一歩一歩着実に進まないと絶対に前には進めないんですよ。ほっといても自分たちがそういうところに立てるとはやっぱりまったく思えないというか。だから毎回毎回ツアーで自分たちの中では小さい目標をこまめに決めて、「それをクリアするためにどうするんですか」っていうのを本当に考えてきました。
──そしてその日のMCでは「こっからはスピードを上げていく」という言葉も出ていました。
渋谷 闇雲にスピードを上げていくっていうよりは、そうなる実感があったし、そうなったほうが面白いかなって、そういう意味で言った言葉ですね。ポンポン上がっていく姿を見せることが、今観てくれてる人も一番楽しいんじゃないかなって。あとはZeppをソールドできるようになったり、大きな会場でやることに対する恐怖心がなくなったことによって、自分らの中である程度先を想像できるようになったことがすごくでかいと思うんですよね。多くの仲間が増えてきているのであれば、先に進むスピードはおのずと上がってくると思ってるので。
上杉 どんどん歳をとっていきますしねえ。1日1日も早く感じていきますしね。
柳沢 おじいさんみたいだな(笑)。
上杉 やっぱ続けてきて、なかなかいい年齢になってきて。これから音楽性であったりとか、歌詞も変わってくるだろうし、できることも変わってくるだろうし。ちょっとずつキャパシティも上げさせてもらって、お客さんが付いてきてくださっている中で、できることっていうのはあると思うので。点で見るんじゃなくて、線で考えて、貪欲に行動していきたいです。
柳沢 「こっからはスピードを上げていく」っていうのも、「そうでありたい」っていう思いがもちろんあるし。逆を言えば「Zeppまで10年かけたい」と思ってかけたわけじゃない。できることならみんなが言ってる通り、僕らだってもっともっと、最初から大きいところでやりたいっていう願望はもちろんありました。じゃあ「次の目標にもう10年かけたいか」って言われたら別にそういうわけじゃないし、熟成させればいいわけじゃないっていうのはすごく思っているので。この先どっかにまたもしかしたら壁が現れるかもしれないけど、やっぱりその先にいきたいから、スピードもそうだし、「もっともっと」っていう気持ちはより強く思ってますね。
絶妙なバランスで一個の塊になれてる
──メンバーそれぞれのライブDVDの見どころを教えてください。
渋谷 僕はオフショットですかね。打ち上げとか、そういう普段は見られない部分が入っているので。人となりが見える瞬間が詰まった作品になっていると思いますね。
柳沢 僕はライブが始まるシーンですかね。ホントにギリの瞬間まで裏でおちゃらけてて、「じゃあお願いしまーす」っていってひろ(藤原)が出てって、リーダーが出てって、僕が出てって、渋谷がその様子を見てて、パッて変わる瞬間が映ってるっていうのは面白いなと。見どころはそこですね。
上杉 初めてのライブDVDなので、僕はどうやってライブをやってるかがわかるっていうところもポイントだと思います。最近うれしいことに、コピーバンドをしてくれてる子たちがいるんですけど、そういう子に研究して観てほしいですね。僕も高校生のときに好きなバンドのライブDVDを観ながら、弾き方を真似したりとか、「こんな音でやってるんだ」っていう、そういうのが楽しかったんで。
藤原 僕は……いつもけっこうすごい顔でドラムを叩いていて、今回の作品でもマネージャーが気を遣って削除してくれてるチンパンジーみたいな顔のヤツとかあるんですけど(笑)。でも削除した以外でも、渋谷の後ろでチラッとそういう顔で映ってたりするので、そこを観ていただけるとうれしいですね。
上杉 一時停止して写真とか撮って楽しめるね(笑)。
──ライブパフォーマンスを観ていても、お話を聞いていても、メンバーの皆さんの絆は本当に強いのだろうなと感じます。特にSUPER BEAVERは柳沢さんがほとんどの楽曲の作詞作曲をしていて、渋谷さんがフロントマンとして歌唱するスタイルですが、本当に渋谷さんの心の底から出た言葉だと思うような説得力がありますよね。なぜそこまで一体感のあるパフォーマンスができるのでしょうか。
渋谷 10年以上の長い年月を一緒に過ごしていて、もちろん自分の生活や時間もあるけど、一番重きに置いているところで同じことを4人で経験してきたら、それはそういう精神的なグルーヴも生まれますからね。それを柳沢が全部曲にしてくれて。単純にそれに感動して4人がやっているからだと思います。4人が何をしたくて何を伝えたいかを統一できているという、塊としての威力は強いと思いますね。
上杉 うん。最初からこれがやれてたわけじゃないからね。それこそいろいろ試してこの形になってるんで。今はさっき言った通り、大事な部分でもリズム隊が演奏に集中することができているけど、集中しないでフォワードみたいになっていた時期もあったし。やっぱりバンドとしては、4人いても、武器として持っている1つの塊しか投げられないと思っていて。だからその塊の純度をどれだけ高くするかっていうのを考えて考えてこの形になっていて。チームプレイですね。フォワードだけじゃだめだし、ディフェンダーもいるし、ミッドフィルダーもいるし、みたいな。そういうことを会話で伝えることもありますけど、長年一緒にバンドをやってれば感覚的にわかる部分もあって。
藤原 今までの経験をちゃんと共有できてるし、柳沢の曲にも歌詞にもちゃんと共感できて、彼の言葉ですけど、みんなの言葉みたいに思えています。そこに対して「ちょっと違うんだよなー」とか「うん、わかるわかる」じゃなくて、「“マジ”でそう思う!」みたいな感じだし。それを本気で伝えたいと思ってるので。4人がお客さんに対して歌で、演奏で、言葉で、“マジ”でやってるんで、伝わるんじゃないかなと思います。
柳沢 うん。かつ僕が渋谷のMCだったり、言葉から影響を受けることだってやっぱりあるし。だからこそ「渋谷はこんな言い方しねーよな」って思って書ける部分もありますからね。今まで10年以上やってこれてる理由としては、ひろが言う“マジ”の上で、各々がタイミング、ポイントで相手の立て方を知ってるっていうのが、すなわち一体感にもつながってると思います。気を遣うっていう意味じゃなくて「よし、ここはお前が行っといで」っていう、それがわかってるのってすごく素敵なことだと思って。最近「渋谷さんが曲書いてるんだと思ってました」って言われることも多いんですけど、すごくいいことだなと思うんですよね。届けたいだけの話であって、実質どっちでもいい気がしてるというか。「歌担当は渋谷です」なだけで。それぞれの役割をみんながちゃんとわかってるからこそ、絶妙なバランスで1個になれてるんだと思います。
- ライブDVD+小説「10th Anniversary Special Set『未来の続けかた』」2016年10月12日発売 / 4298円 / [NOiD] / murffin discs / NOID-0014
- 「哀余る」
- 2016.04.10 @Zepp DiverCity
SUPER BEAVER 10周年〆「都会のラクダSP~スーパーフィーバー~」
収録内容
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- 361°
- 鼓動
- 言えって
- ことば
- 歓びの明日に
- あなた
- シアワセ
- 深呼吸
- らしさ
- 日常サイクル
- your song
- 人として
- 青い春
- ルール
- うるさい
- 証明
- 東京流星群
- ありがとう
- 愛する
- 秘密
- ILP
- 渋谷龍太(Vo)初の書き下ろし小説「都会のラクダ」全208ページ
ライブ情報
10th Anniversary Special Set「未来の続けかた」発売記念 トーク&サイン会
- 2016年10月13日(木)東京都 タワーレコード新宿店 7F イベントスペース
20:00~ - 2016年10月16日(日)愛知県 名古屋PARCO 西館一階エントランス
15:00~ - 2016年10月21日(金)大阪府 タワーレコード難波店 5Fイベントスペース
19:00~ - 詳しくはこちら
SUPER BEAVER(スーパービーバー)
2005年に東京で結成されたロックバンド。メンバーは渋谷龍太(Vo)、柳沢亮太(G)、上杉研太(B)、藤原“28才”広明(Dr)の4人。ギターロックを基調としたエモーショナルなサウンドと、メッセージ性あふれるまっすぐな歌詞を特徴とする。2009年6月にEPICレコードジャパンよりシングル「深呼吸」でメジャーデビュー。2010年10月にリリースされたミニアルバム「SUPER BEAVER」の収録曲「ささやかな」が、映画「ソラニン」のラストシーンで使用され話題を呼んだ。2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを実施。2012年に自主レーベル「I×L×P× RECORDS」を立ち上げ、シングル「歓びの明日に」を発表した。2013年、東京・Shibuya eggmanのスタッフ・YUMAが「mini muff records」内に発足させたロックレーベル[NOiD]とタッグを組み、翌2014年2月にフルアルバム「361°」をリリースした。その後精力的にツアーや自主企画ライブを開催し、9月にはテレビアニメ「ばらかもん」の主題歌「らしさ」を含むシングル「らしさ / わたくしごと」を発表した。同月に柳沢が緊急入院するという事態に見舞われたが、バンドはサポートメンバーを迎えライブ出演をキャンセルすることなく敢行。柳沢の退院後にアルバムの制作に入り、バンド結成10周年の節目に当たる2015年4月1日、アルバム「愛する」をリリースした。2016年1月より3カ月連続でシングルをリリースし、4月にはバンド史上最大規模のワンマンライブを東京・Zepp DiverCity TOKYOにて開催。6月にフルアルバム「27」を発表し、10月にZepp DiverCity TOKYO公演の様子を収めたライブDVDと渋谷による書き下ろし小説「都会のラクダ」をパッケージした「10th Anniversary Special Set『未来の続けかた』」を発売する。