音楽ナタリー Power Push - SUPER BEAVER

フロントマン渋谷龍太書き下ろし小説と共に振り返る歩み

渋谷龍太書き下ろし小説と振り返るSUPER BEAVERの歩み

小説を読んでからDVDを観てほしい

藤原“28才”広明(Dr)

──藤原さんは渋谷さんの目線で見た、バンドのこれまでをつづった小説を読んでどんなことを感じましたか?

藤原 グッときましたね。自分たちのことが書かれてるから、もちろん知っていたつもりなんだけど文章になるといい意味で生々しく感じて。渋谷と直接話して「こういうふうに思ってる」って言われるよりも、“手紙感”っていうんですかね。くるものがありました。

柳沢 うん。俯瞰でずっと書かれてるんだけど、何回か渋谷が主観になるシーンが出てくるから、僕らが読んでもグッとくるし、面白いよね。

──今回小説を読み終えてからすぐにDVDを観させていただいたんですけど、ライブが始まる前のZepp DiverCity TOKYOに機材を搬入しているシーンでもう涙腺が崩壊していました(笑)。

一同 あははは(笑)。

柳沢 冒頭のね(笑)。僕らも小説を読んでからDVDを観てほしいなと思っていて。そういう観方をすると「知ってる知ってるこのバンド!」みたいな気持ちになって、「あれ? わりとこんなでかい会場で一丁前にライブやってるよ!」っていう感じになりますよね。

上杉研太(B)

渋谷 「あーこいつら知ってる!」ってなりますね(笑)。確かに、親近感が湧くしずっと知ってた特別なバンドみたいに見えるかもしれないなあ……保護者目線というか。

上杉 小説自体も振り返って終わりじゃなくて、今につながっているっていう終わり方をするから、そこに一番グッときましたね。読んだ人がSUPER BEAVERの今をさらに愛せるような作品になってるんじゃないかなと。

柳沢 208ページあるけど、読書が苦手な人にもがんばって読み終わってからDVD観てほしいなあ(笑)。

渋谷 でもすごくリズムを重視して書いてたんで、読みやすいとは思うんですよね。ポンポン読めるんじゃないかな。

やっと日の目を見たメジャー時代の曲

──そして今回のライブDVDに収録されるZepp DiverCity TOKYO公演、実際に会場に足を運んだのですがすごく熱いライブでした。フロアには終始熱気が蔓延していて。

上杉 燃えてましたねえ。こっちが変に気を許したらヤバいなっていう空気がありました。だからリズムを崩しちゃいけないと思って、冷静になろうと思ってやってましたけど(笑)。

藤原“28才”広明(Dr)(撮影:青木カズロー)

藤原 うん。それは俺もあった。

柳沢 リズム隊がしっかりしてくれていたからこそ、俺と渋谷が暴れられたっていうのはあるかな。演者とお客さんって割り切っちゃうとそれはそうなんですけど、SUPER BEAVERのZeppワンマンライブっていうのはやる側も観る側も初めてだったし、それはやっぱお互いに高ぶりますよね。俺らは「いつもと変わらない大切なライブの1つ」っていう気持ちもあったけど、俺らもお客さんもやっぱりワクワクしていて。あの日はそのワクワクがいい感じにぶつかっていて、そういう熱があったと思います。

渋谷 俺も何も考えずにいっちゃったらけっこう最初から危なくなりそうだった。2曲目で声が枯れちゃうとか(笑)。だから冷静に10年を振り返りながら、「10周年を経た自分らは『こういうバンドなんだ』」っていうのを見せたいって思ってやってました。それで最後の最後に、ふと会場を見渡したときは大変感動しましたね。バックヤードにいるスタッフのこと、2階席で観てるバンドマン、親戚、家族。そして何よりもフロアに集まってくれた大勢の人がいて、「10年かかっちゃったけど、ここでこんだけの人が観てくれてるバンドになれたのか」「いい日だなあ」ってめちゃくちゃ思ったので。実際にステージに立つまでは、いろんなところで「10なんて数字、別にどうでもいい」って言ってたんですけど、やっぱりあの日は絶対にスペシャルだった。

柳沢亮太(G)(Photo by Suzuki Kouhei)

柳沢 単純にステージから見える景色を「すげえ」って思ったよね。やっぱり自分たちで作り上げてきたものだし、こういうところに立てるように努力してきたから。それはこの先も同じで、もっともっと大きいところでやりたいし。でもZeppとか、何千人の前でライブをやるとかって、今まではずっと夢物語だったんですよね。すげえバカみたいな言い方ですけど、“夢が叶ったシーン”がそこにあったような気がするんですよ。誰かのイベントじゃなくて、自分たちであそこに立ってたっていうのは。「嘘じゃないじゃん! ホントじゃん!」みたいな。メジャーのときのスタッフとか、いろんな人が来てくれていたし。そういう景色を見ながら、「ちっとも売れなかったんだけど大好きだったんだよな」って思いながらメジャー時代の曲をやって、「やっと日の目を見たね。これだけの人に聞いてもらえてよかったね」っていう、うれしい気持ちになりました(笑)。

上杉 日の目を見たかどうかはわかりませんけど(笑)。昔から聴いてくれてる一番近いファンであるうちの母は、終演後に話したときに昔の曲のことを「もはや違う曲なんだね」って言ってました。同じ曲なんだけど同じ演奏じゃないし、歌も違うし。うちの親父も「いやー、こんなこと言うのもなんだけど、うまくなったよなあ! 渋谷の歌の説得力も違うし、お前ら、よう失敗しないでこんな弾けるようになって!」って(笑)。

柳沢 そこかあ(笑)。うれしいですね。

──キャパシティの大きなライブハウスならではの演出もありましたね。「うるさい」では紗幕が降りてリリックビデオが投影される中での演奏でした。

柳沢 紗幕の中でドキドキしてたね(笑)。

「うるさい」演奏時の様子。(撮影:青木カズロー)

渋谷 紗幕って外から観たらけっこう中の人のシルエットが見えるんですけど、紗幕の内側からは全然外が見えないから、さっきまで全部顔が見えてたお客さんが見えなくなっちゃって。リハーサルをやらせていただいたとはいえ、「どうしよう!」って。

上杉 そう考えると歌が一番大変だね。俺らは演奏に徹してればいいわけで。お客さんは喜んでくれてみんな「ギャー!」ってなってたけど、俺は「んー」(真顔で)って演奏してて(笑)。

渋谷 「ど、どこに向けて歌えば……!」っていうのはありましたね。でも多くの方に来ていただいたし、それなりのチケットのお金をいただいているし。そのお金を使ってできる演出で楽しませたいっていう気持ちはやっぱりありましたからね。僕らのスタンスや武器にしてることを、別の形で表現するっていうのは面白いと思いますし。それは会場が大きくなったからこそできることですよね。

柳沢 キメが多い曲に対して、映像の構成もキメが多かったから、さらにカッコよく見せれたよね。

ライブDVD+小説「10th Anniversary Special Set『未来の続けかた』」2016年10月12日発売 / 4298円 / [NOiD] / murffin discs / NOID-0014
「哀余る」
  • 2016.04.10 @Zepp DiverCity
    SUPER BEAVER 10周年〆「都会のラクダSP~スーパーフィーバー~」
収録内容
  1. 361°
  2. 鼓動
  3. 言えって
  4. ことば
  5. 歓びの明日に
  6. あなた
  7. シアワセ
  8. 深呼吸
  9. らしさ
  10. 日常サイクル
  1. your song
  2. 人として
  3. 青い春
  4. ルール
  5. うるさい
  6. 証明
  7. 東京流星群
  8. ありがとう
  9. 愛する
  10. 秘密
  11. ILP
  • 渋谷龍太(Vo)初の書き下ろし小説「都会のラクダ」全208ページ
ライブ情報
10th Anniversary Special Set「未来の続けかた」発売記念 トーク&サイン会
  • 2016年10月13日(木)東京都 タワーレコード新宿店 7F イベントスペース
    20:00~
  • 2016年10月16日(日)愛知県 名古屋PARCO 西館一階エントランス
    15:00~
  • 2016年10月21日(金)大阪府 タワーレコード難波店 5Fイベントスペース
    19:00~
  • 詳しくはこちら

SUPER BEAVER(スーパービーバー)
SUPER BEAVER

2005年に東京で結成されたロックバンド。メンバーは渋谷龍太(Vo)、柳沢亮太(G)、上杉研太(B)、藤原“28才”広明(Dr)の4人。ギターロックを基調としたエモーショナルなサウンドと、メッセージ性あふれるまっすぐな歌詞を特徴とする。2009年6月にEPICレコードジャパンよりシングル「深呼吸」でメジャーデビュー。2010年10月にリリースされたミニアルバム「SUPER BEAVER」の収録曲「ささやかな」が、映画「ソラニン」のラストシーンで使用され話題を呼んだ。2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを実施。2012年に自主レーベル「I×L×P× RECORDS」を立ち上げ、シングル「歓びの明日に」を発表した。2013年、東京・Shibuya eggmanのスタッフ・YUMAが「mini muff records」内に発足させたロックレーベル[NOiD]とタッグを組み、翌2014年2月にフルアルバム「361°」をリリースした。その後精力的にツアーや自主企画ライブを開催し、9月にはテレビアニメ「ばらかもん」の主題歌「らしさ」を含むシングル「らしさ / わたくしごと」を発表した。同月に柳沢が緊急入院するという事態に見舞われたが、バンドはサポートメンバーを迎えライブ出演をキャンセルすることなく敢行。柳沢の退院後にアルバムの制作に入り、バンド結成10周年の節目に当たる2015年4月1日、アルバム「愛する」をリリースした。2016年1月より3カ月連続でシングルをリリースし、4月にはバンド史上最大規模のワンマンライブを東京・Zepp DiverCity TOKYOにて開催。6月にフルアルバム「27」を発表し、10月にZepp DiverCity TOKYO公演の様子を収めたライブDVDと渋谷による書き下ろし小説「都会のラクダ」をパッケージした「10th Anniversary Special Set『未来の続けかた』」を発売する。