sumika|最高も最悪も味わった2020年を経て伝えたいこと

「本音」のライバル

──ダブルAサイドのもう1曲、「Late Show」は豪快にぶっ飛ばしていくロックチューンですね。「本音」とまったく違う雰囲気で、いい意味で驚きました。

片岡 「本音」という核となる曲ができたので、カウンターのように違う曲を持ってこようというのは“sumikaあるある”なんです(笑)。強いやつに会うとワクワクして、そのライバルを作ろうとする癖があるんですよね。「イコール / Traveling」のときも、先にできた「イコール」のライバルとして「Traveling」を作ったので。そのときのやり方と似ていたと思います。

──プレイヤーとしてはやりがいのある曲なんじゃないですか? 特にリズム隊は。

荒井智之(Dr, Cho)
黒田隼之介(G, Cho)

荒井 勢いでバーッと録って、楽しかったですね。「本音」はプロデューサーさんに付いてもらって、タイアップということもあっていろんな方たちの話を聞きながら組み上げて、ああいう素晴らしい楽曲ができたんですけど、「Late Show」はタイアップもないし、プロデューサーさんもいなくて。メンバーだけで楽曲のみに矢印を向けてレコーディングに臨めたのも、それはそれでよかったです。いいテンション感で録れたんじゃないかなと思っています。

──テイクも少なかったですか?

荒井 そうですね。それは体力的な問題もあるんですけど(笑)、勢いで録ったほうがいいタイプの楽曲ではあるので、短い時間で集中して録りました。「バンドやってるな」という感じがすごくしたし、そのマインドもうまく音に乗っている気がします。

黒田 「本音」から時間が空かないまま、同じ日にレコーディングしたんですよ。本来は後日、「Late Show」のギター用にダビングの時間をいただいていたんです。おおよその構成はできていたものの、細かいところは詰めていない状態で、明日までに考えようという気持ちでいたら、いきなりメンバーから「隼ちゃんも一緒に録るよ」と言われて、「ええっ、あれ?」みたいな(笑)。それで逆に緊張感を持って、「うおー!」という変な熱量が演奏にこもったなと思います。

──それ、わざとの可能性もあるのでは?(笑) 「隼ちゃんにはそのほうがいいだろう」みたいな。

片岡 バレたか(笑)。

黒田 いやあ、素晴らしいバンドですよ(笑)。結局、いいものができてよかったです。あとから1人でダビングするより、一緒に録れたほうがよかったと思うので。みんながそこまで考えていたかどうかは知らないですけどね。

──キーボードに関してはどのようなことを意識しましたか?

小川貴之(Key, Cho)

小川 僕はこの曲に関してはパソコンで音色を作る役割で、一発録りには参加しなかったんですよ。だから「本音」のレコーディングが終わってから、僕は家に帰って「Late Show」の音色を作っていて。そしたらみんなが録った音のラフミックスが送られてきて、「バチクソカッコいい!」と思いました。あまりにカッコよすぎて、Twitterに書き込んだんですよ。特に何とは言わずに「メンバーの鳴らす音 カッケェなあ!!」って(笑)。でもキーボード抜きで成立していたから「俺はどうすればいいんだろう?」って悩んでるときに、片岡さんから「みんなと同じ熱量マックスで入れてほしい」という連絡をいただいて、そこでガラッと考えを変えました。間を埋めるのではなく、「俺も一緒に行くよ!」という感じのキーボードプレイにしましたね。

──片岡さん、メンバーの心に火をつけちゃいましたね。

片岡 「本音」と続けて同じ日に録ったので、より勢いのある感じになったのかなと。これが別日になっていたら、テンションも違ったでしょうし。両A面として出すうえで、同日にレコーディングしたことに意味があるなと思います。いい意味での「本音」のライバルが、ちゃんと誕生しました。全然似ていないタイプの選手で、前陣速攻とカットマンみたいな。

──(笑)。卓球で言うと。

片岡 バンドの一発録りで、隼ちゃんのフレーズができていないのはわかっていたんですよ。わかってたけど、ブースにいてくれるだけで全然違うので。そのときの布陣が、僕の向かいに隼ちゃんがいて、間にベースのスッティー(須藤優)がいて、右に荒井がいて、4人で円になる形で。あれが三角形だったら全然違ったグルーヴになっていたと思います。4人で音をバン!と出したときに「これだな」と思ったし、エンジニアの省二郎さんもテンションが上がってきて「歪みを上げろ!」ってずーっと言ってて、これ以上やると割れちゃうよって(笑)。それでも上げまくったら、案の定ハウリングして、どう手なずけようかと思ったら「それがカッコいい!」と言われて、これはやるしかないなと。そうやってエンジニアも含めてみんなで化学反応を起こしたものをおがりんに渡したら、説明する前に熱を感じ取ってくれました。そこにキーボードを入れて、「2020年のうちに表現したかったsumikaの音はこれです」というものが、ちゃんとできあがったなと思います。

ここから花火大会が始まる

──「Late Show」のテーマは恋愛ですか?

片岡健太(Vo, G)

片岡 恋愛だと思うんですけどね。

──恋愛っぽいけど、言葉使いがシュールですよね。

片岡 これはね、デモが2年前にあったんですよ。そのとき何があったということもなくて、こういう歌詞を書こうと思って、まったく悩まずに書き切りました。降りてきました。

──後悔、怒り、皮肉、諦め、いろんな感情がぐしゃぐしゃになっているような。

片岡 そうですね。まあきっと、ここから学ぶこともあるでしょうという、大事な過程だったんじゃないかなと思います。なかなか言葉で表現しづらい歌詞ですよね。解釈はお任せします(笑)。

──とりあえず、ライブでやったらとんでもない騒ぎを引き起こす曲だということはわかります。

片岡 ぶっ飛ぶと思いますね。

──こうなると、ライブしたくなりますね。

片岡 ね。やりたいです。

黒田 思い切り歪ませたい(笑)。

──まるでタイプの異なる2曲に加えて、初回限定盤にはさっきお話した「Dress farm 2020」のための8曲が全部入った特典CDが付いてくるということで。とても豪華ですね。

片岡 特典CDが本編よりボリューミーです(笑)。2020年のうちに「Dress farm 2020」の活動をまとめておきたかったんですよね。CDリリースは1月ですけど、「2020年はこういうことをしましたよ」というのがわかる1枚になっているんじゃないかなと思います。sumikaの2020年を振り返るためには、「本音」「Late Show」だけじゃなくて「Dress farm 2020」の曲も必要だなと思うので。

──2021年はどういう年になりそうですか?

片岡 今年やるはずだったことを来年やり直すだけっていうのは、2021年がかわいそうなので。今年の分はもちろんやりつつ、来年にやる予定だったこともちゃんとやりたいです。ただ、今年の負の感情を全部吹っ飛ばすためには、2年分じゃ足りないだろうと思うので、5年、10年分の気持ちを込めて活動していきたいですね。2021年にこの気持ちを爆発させる準備は、もう最終段階に入っているので、ここから花火大会が始まるという感じです。楽しみにしていてください。

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