峯田和伸インタビュー|銀杏BOYZと共鳴する「ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。」 (3/3)

本当は人前には出たくないんですよ

──「アイデン&ティティ」はバンドブーム終わりかけの1991年ぐらいの話で、峯田さんはリアルタイムでその空気感を知っている。でも今回の映画は1970年代終わりから80年代頭の話で、峯田さんはその時代を直接体験しているわけではない。自分が生きてきた時代とその時代のミュージシャンとの違いについて、何か思ったことはありますか?

違いはそんなになく、むしろ一緒だなと思いました。自分がバンドを始めて、ちっちゃいライブハウスに出るようになって、周りにいた競演者やお客さんを巻き込んでシーンがだんだん大きくなっていく感じ。その一方で解散するバンドもいる。それは「アイデン&ティティ」の1991、2年の状況と一緒だし、GOING STEADYを始めた1997年の新宿と渋谷のバンドシーンともあんまり変わらない。だから身に覚えがある感じがするんですよね。格好とか髪型とかそういう違いはありますけど。僕が当たり前だと思ってたライブハウスの景色のルーツをたどると、やっぱり1978、9年頃の東京ロッカーズがある。今回映画に参加して、ロックとかパンクが好きな自分のルーツをたどる旅ができた気がします。この経験は自分がこれからバンドやっていくうえでも大きいものになりましたね。最初に音が鳴った瞬間の衝撃というか、あのバーンっていう“始まりの音”を銀杏BOYZでも意識してやっていきたいと思いました。

──峯田さんがもし映画と同じ1970年代の終わりぐらいの東京にいたとしたら、どういうことをやってたと思いますか?

バンドをやろうと思うんじゃないですかね。一方で、今、自分が高校生だったら、バンドじゃなくてTikTokとかYouTubeをやってんのかなとか考えるんです。でもなあ……やってるかなあ? そもそも人前に出たくないタイプだし。バンドもしょうがなく客の前に出るしかないからやっているけど、本当は人前には出たくないんですよ。

──今さら何を言ってるんですか(笑)。じゃあ何をしたいんです?

音楽を聴いてたいというのが一番ですけど、自分でも作りたいし、作ったからには披露したい。そうなるとやっぱり人前に出なくちゃいけないんですよね。でも自分でケータイを持って「配信を観ているお客さん、どうもー」みたいなことはできない(笑)。多分どの世代にも一定数は自分から発信できない人がいると思うんですけど、僕はそっちのタイプです。

──でも峯田さんは昔からファンとの関係が濃密ですよね。自分のメールアドレスを公開して、1日20人ぐらいのメールをずっと読んでいたり。そういうファンの人たちの思いを愚直なぐらい真正面から受け止めてた。

ライブが終わって出待ちしてるやつがいて、そいつと話すうちに盛り上がっちゃって、じゃあ俺ん家来るか? ラーメン食っていくか?みたいなこともありましたね。

峯田和伸

銀杏が現体制になって変わったところと変わらないところ

──峯田さんとしては、ライブで何百人、何千人を相手にしても、結局その1人ひとりとの1対1のコミュニケーションを求めている、という意識があるんでしょうか?

あるかもしれないです。お客さんが300人だろうが3000人だろうがあまり意識しないようにしてるんですよね。去年アメリカツアーに行って、ひさしぶりに小さいハコを回ったらすごく楽しかったんですよ。スタッフがたくさんいるわけじゃないから大変だったけど、昔のゴイステのツアーを思い出したりして。だから5月から日本でも小さいライブハウスを回るツアーをやってみようと思って。

──なるほど。

僕にとってライブはもう、お祭りをやるっていう感覚なんです。どういう身分であれ、性別も年齢も関係なく、そこにいる人がみんなでうわーっとなったり、ふーって静かになったり、聴き入ったり……そういう「ハレ」と「ケ」の「ハレ」を作る意識ですね、昔から。その道具として曲があるみたいな。

──それは人前に出たくないっていう気持ちとどこかでぶつかるものなのか、それとも解決してるんですか?

曲を披露するには人前に立つしかないけど、怖くて出たくない、でもやんなくちゃいけないって気持ちがずっとぶつかってたんですよ。だからさっき言ったように、シャッターを降ろすように違う自分を降ろしてたんですけど、けっこうしんどかったので、もう少し自然体で出られたらな、みたいなところに最近は落ち着きました。

──ファンの思いを背負って……みたいな感じは薄れてきた?

それは10年ぐらい前になくなりました。メールアドレスを公開してた時代に比べたら、今はもう考えてないかもしれない。あとはもう好き勝手にやるわ、みたいな。

──そうすることで、自分の音楽や表現に変化はありましたか?

自分であんまり分析したことないですけど、言われてみれば少し変わってきたかもしれない。……あ、いやでも変わってないかもな。ライブに対するスタンスは変わったけど、自分が作る音楽に関しては変わってないのかもと思う出来事が最近あったんです。今、新曲をずっと作ってるんですけど、部屋で歌詞を考えてたら、なんか昔のゴイステとか初期の銀杏みたいな歌詞になっててびっくりしました。全然変わってねえのか、俺、みたいな。ちょっと変な曲でしたねえ。

──それは興味深い。

そろそろアルバムを出したいと思っていて。レコーディングも進めているんですけど、自分がやりたいことと楽器を演奏しているメンバーのやりたいことが合うようになってきて、前のアルバムに比べたら、音がいい感じになってきた気がします。前はもうちょっとバラバラな部分もあったんですよね。同じビジョンが見えてないというか。もちろん曲は僕が作りますけど、それをみんなで演奏するとき、具体的にこういう色なんだよねってあまり伝えないから。まずは各々でやってみて、ある程度さまになったらもうこれでレコーディングすればいいか、みたいな感じだったんです。今は自分が作曲したときに考えていた色をわざわざメンバーに言わなくても、みんなその色が見えている気がする。この感じ、すごくいいなって思ってます。

──それって田口監督の演出方法と似通ってませんか。

そうかもしれない! トモロヲさんの影響かもしれないです。昔の銀杏のオリジナルメンバーのときって、俺が独裁政権みたいに全部指示を出していたんですよ。その結果、アルバムは2枚出せたけど、うまくいかず、人間関係が破綻して終わりました。音楽を続けるにあたって、ちょっとそこは変えないとダメだな、と思った苦い経験です。でもその経験があったからだんだん今みたいになってきたのかも。

最後までロックにしがみついていたい

──独裁政権を組んでたときは、めちゃくちゃ音にこだわりがあって、その通りにやってくれないと困るっていう感じだったんでしょう?

そうでしたね。今はもうそこに面白みは感じなくて、もうちょっと自分の想定外のところを求めるようになってきた。当初自分が思い描いていたような形じゃないけど、これはこれでカッコいい、むしろこれのほうがカッコいいじゃん!みたいな。そういう楽しみを知ったのがここ15年くらいかな。

峯田和伸

──それがバンドの醍醐味ですね。ほかのメンバーの意思や持ち味も受け入れるような、そういう懐の深さが出てきた。

もちろん今もミックスとか、すごく細かくこだわるところはあるんです。でも昔に比べると、みんなが持ってきてくれるものに対していいじゃんって言えるようになった。そういう点では演出の指示を受けて演技をする俳優の経験が音楽にも生かされているのかもしれないです。アメリカツアーをバンドメンバーと一緒に回ったのも、自分にとっては大きな変化だったんですよ。自分がやりたいことを言葉で一方的に伝えるより、自分の歌をメンバーが聴いて、それに合う音を鳴らしてくれるように、自然となっていったらいいなってずっと思ってた。アメリカツアーでみんなその感覚がつかめてきたので、この感じで国内ツアーを回って、いろんなところでいいライブができたらなと思います。

──人前には出たくないものの、ライブはやっぱり楽しいんですね。

もちろん疲れたり、プレッシャーも多少あったりするけど、大きい声で、大きい音で音楽を鳴らせるのは楽しいです。でもね、今後世の中がどうなっていくかわからない。時代が進んで、急にギターの爆音が人間の脳に悪い影響があるとか言われて、すっごいミニマムな、静かな音楽がもてはやされるようになる可能性もあるじゃないですか。ライブハウスでの音量も小さくする風潮になって、大きい音で音楽を聴いたり鳴らしたりすることが受け入れられなくなる時代がいつか来るかもしれない。

──価値観の転換ですね。世代的な問題とか時代的な問題で、我々が当然だと思って共有していた感じ方や概念が、ちょっと先の世代になると全然共有されてないこともよくあります。言うならば、古い世代の感性がガラクタになっちゃうような、価値観がガラッと変わる瞬間っていうのはなかなか立ち会えるものじゃない。

そうですよね。僕は最初にロックをやった人じゃないし、新しく何かを発明するタイプでもない。最初にロックは鳴らせなかったけど、価値観が転換していろんなものがガラクタになって、いろんな人が辞めていくとしても、僕は最後までロックにしがみついていたいと思っています。

プロフィール

峯田和伸(ミネタカズノブ)

1977年12月10日生まれ、山形県出身。1996年にロックバンドGOING STEADYを結成し、CDデビュー。2003年、GOING STEADY解散後、銀杏BOYZとして再始動。同年に主演映画「アイデン&ティティ」で銀幕デビューを果たす。2026年3月公開の映画「ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。」では若葉竜也とダブル主演を務める。銀杏BOYZとしては2026年5月から7月にかけて「銀杏BOYZ ツアー2026 夢で逢えないから☆」を開催。全国8カ所のライブハウスを巡る。