同級生の松浦弥太郎との10代トーク
──番組では毎回「本」にまつわるさまざまな場所に赴いて、ゲストとトークを繰り広げていくんですよね。第1回は今日の取材場所にもなっている中目黒のCOW BOOKSさんが舞台で、ゲストは代表の松浦弥太郎さんです。先ほど「本屋が多様化していて面白い」とおっしゃっていましたが、そのことについて具体的に伺ってもいいでしょうか。
最近、ただ本を売るだけじゃないお店がすごく増えましたよね。バイヤーさんのこだわりが見えたり、ワークスペースが併設されていたり、またはあるテーマに特化して本を集めたお店だったり。まさにCOW BOOKSさんはその走りですよね。古い本が多いけどセレクトにこだわりがあって、20年前の立ち上げの頃からよく遊びに行っていました。
──収録で松浦さんとはどんなお話をされましたか?
松浦さんとは同じ1966年生まれで同級生なんですけど、10代の頃の話がすごく印象に残っていますね。10代の頃に感じていた時代のムードとかが似ているなあと。「この世界から逃げ出してどこへ行くのか」とお互い感じていた中で私はアイドルになって、松浦さんはアメリカに行ったわけですけど。あの話題はきっと、今10代の子が聴いても同じ気持ちを抱いてくれるんじゃないかなと思います。
──今から配信が楽しみです。ちなみに今後はどのようなゲストが登場されるんでしょうか。
本屋さんだけではなく本の装丁家さんや、小説家さんのところにもお邪魔する予定です。子供の頃から憧れている向田邦子さんの妹・向田和子さんにもご登場いただける予定で、とても楽しみですね。先日青山のSPIRALで行われた「いま、風が吹いている」(向田邦子の没後40年イベント)も和子さんが監修されていたんですけど、あれはとても素晴らしいイベントでした。あとは作家の山内マリコさん、フェミニズムに特化した書店のエトセトラブックスさんにもお邪魔する予定です。全部楽しみですね。
──小泉さんが行きたいところに行き、会いたい人に会いに行くという感じなんですね。
そうですね。スタッフみんなで会議して、会いたい人を挙げています(笑)。
──ちなみに小泉さんは、普段読む本をどのように選んでいますか?
書評の仕事を10年していたこともあって、出版社さんから新刊をめちゃくちゃ送っていただくんですよね。その中から選んで読むこともあるし、ぷらーっと本屋さんに行ってジャケ買いもします。そういうのが意外と運命の本だったりすることも多くて。あとは1冊の本を読んでいる中で別の本のタイトルが出てきたら、気になってそれを読んだり。そして終わらないサイクルができる(笑)。
──数珠つなぎに増えていく(笑)。お忙しいことと思いますが、読書の時間は意識して設けているんですか?
私は朝早く起きるんですが、朝6時から8時、9時くらいまでは誰にも邪魔されない時間で。10時を過ぎると電話やメールの応対をしなきゃいけなくなるので、そういう朝の時間に音楽を聴いたり本を読んだりしていますね。もうこの歳なので、明るい時間帯じゃないと目がつらいということもあり……。
──(笑)。お日様の光があるうちに。
そう、日が高いうちに(笑)。
どんどん脱線して、聴いた人のきっかけになりたい
そういえば、番組のBGMも自分で作ったんですよ。
──えっ、オリジナル曲をですか?
はい。友達の上田ケンジさんに連絡してみたら「やろうやろう」と言ってくれたんです。コロナの影響で、ミュージシャンも自宅でレコーディングできる環境を整えた人が多いですよね。リモートでも録音できちゃったり。曲ができたらウエケンさんのおうちにお邪魔して、歌入れさせてもらって、ジングルやBGMを完成させました。
──とても豪華ですね。そういうところにもポッドキャストのラフさが表れている気がします。
ですよね。パッと思いついたアイデアが否定されないという環境がすごくうれしいです。
──先日音楽ナタリーで斉藤和義さんと対談していただきましたが(参照:斉藤和義×小泉今日子対談)、その際に「自粛期間中にエンタテインメントの受け手としての楽しさを思い出した」と話されていたのが印象的でした。メディアとの付き合い方に関して、コロナ禍で意識が変わったところも大きかったのでしょうか。
そうですね。本を読む楽しさにもう一度向き合いたいと思ったのも自粛期間中でしたし、私はエンタメを発する側のエネルギーを純粋に受け取ることがしばらくできていなかったんだなということにも、この期間で気付いたんです。「ああ、私、1つひとつをちゃんと選んでなかったんだな」って。これまでは忙しくて、「この情報さえあればやっていける」というものをただ消化していたんですよね。今はテレビよりも、YouTubeやサブスクで関連コンテンツをどんどん自分で選んでいく楽しみを味わってしまいました。
──能動的に選ぶ楽しさに目覚めたんですね。
はい。選べる喜びと、サジェストしてもらうことで世界が広がる喜び。それをすごく楽しんでいます。自粛期間でお料理をする人が増えたとも聞きますけど、それも同じことなのかなと。料理をするにしても「じゃあ、いいフライパンが必要だよね」と考えたり、関心が広がっていくじゃないですか。今はすべてにおいて、みんなが1つひとつ選び直しているタイミングなのかなと思います。私は無神論者なんですけど、子供の頃から神様のような存在はいるような気がしていて。今回のコロナ禍も「みんな、このまま進んでいいんだっけ?」という感じで、神様が立ち止まるきっかけを与えてくれているような気がします。
──最後に、「ホントのコイズミさん」を今後どのような場所にしていきたいか、リスナーの方にどう楽しんでいただきたいかを教えていただければと思います。
私は「ホントのコイズミさん」は本を紹介する番組だとは思っていなくて。本が好きな人たちのお話を伺うというところがスタート地点だけど、そこからどんどん脱線していきたいんです。その脱線が面白ければ面白いほど、先ほど話したように、リスナーの方が新しいドアを開けるきっかけになれるんじゃないかと思っていて、それが理想ですね。聴いた人の次のアクションにつなげられるような時間にできたらいいなと思っています。
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2021年4月5日更新