音楽ナタリー Power Push - SPECIAL OTHERS

“10年選手”の4人が目指してきた誰でも楽しめるジャムの形

SPECIAL OTHERSがニューアルバム「WINDOW」をリリースした。

本作は「Have a Nice Day」以来約3年ぶりのアルバム。2000年の結成から15年以上のキャリアを誇る彼らが築き上げてきた、心地よく熟成されたアンサンブルが存分に楽しめる1作だ。

今回音楽ナタリーでは、デビュー10周年の節目を前に発表される「WINDOW」の制作エピソードや、バンドのターニングポイントとなった出来事などを聞いた。

取材・文 / 大谷隆之 撮影 / 西槇太一

音数が増えカオス状態が楽しいエレクトリック編成

──新作「WINDOW」、すごくよかったです。SPECIAL OTHERSらしい熱と疾走感が渦巻きつつ、じっくり聴き込むとディテールが緻密に作り込まれていて。

SPECIAL OTHERS

宮原 "TOYIN" 良太(Dr) あ、そう聞こえました? だとしたらすごいうれしいっす。

──ちょうど1年前にアコースティック編成のSPECIAL OTHERS ACOUSTIC名義でアルバム「LIGHT」をリリースして、今作はエレクトリック編成では3年ぶりのフルアルバムですね。1曲目はどちらも同じ「LIGHT」ですが、同じ曲なのにイメージがガラリと変わっているのも刺激的でした。

宮原 そこはあまり深く考えてなかったんですよ。レコーディングを終えて曲順を考えるとき、冒頭にハマるのがたまたまあの曲だったという。ほとんどイントロの1音の華々しさで決めた感じです。ただ、それによって前作との対比は際立ったし、つながり感みたいなものも生まれて……まあ結果オーライだったかなと(笑)。

柳下 "DAYO" 武史(G) 僕ら、配信とかストリーミングじゃなく完全にCD世代なんで。自分たちのアルバムを出すときも、どこか店頭の試聴機で聴いてもらうイメージをしてるんですね。1曲目にアルバムを象徴するキャッチーな曲が入ってると、通して聴きたくなるじゃないですか。「LIGHT」はその点、ぴったりだったので。

──アコースティック編成を経験したことで、レコーディングのやり方が変わった部分はありましたか?

宮原 基本的には変わらないかな。ただ、1度アコースティックと真剣に向き合ったことで、今回改めてエレクトリックの楽しさを再確認できたのは大きかった気がする。アコースティック楽器って、やっぱり出音も小さいし。4人がお互いの音をしっかり聴き合っていないと鋭いグルーヴが出ないんです。一方、エレクトリックならボリュームも大きくできるし。各パートが「うおーっ!」って叫ぶようなテンションで演奏しても、それなりにハマってくれる(笑)。音数が増えてカオス状態になるのがかえって気持ちいいというか。

又吉 "SEGUN" 優也(B)

又吉 "SEGUN" 優也(B) 今回のエレクトリック版「LIGHT」のクライマックスなんて、まさにそういう展開になってますよね。僕はSPECIAL OTHERS ACOUSTICではマンドリンを弾いてたんですが、今回はベースに戻って。自分的にはかなり歪ませた音色でゴリゴリしたフレーズを弾いてます。それによって前作「LIGHT」とは違ったエキサイティングさが出せた気はしますね。

芹澤 "REMI" 優真(Key) 要は、それぞれに違った魅力があるんですよ。アコースティック編成の場合は音数が少なめだし、ブレイクを作るときも各自が意識を研ぎ澄まして、ここだというタイミングを全員で完璧に合わせないといけない。技術的には大変だったけど、今回「WINDOW」でアドリブを弾くにあたって、ドラムやベースが刻むビートのニュアンスまでより生々しく感じ取れるようになった思うんですね。それによって、よりタイトなソロを弾けたと思うし。経験値としてはやっぱり大きかったですね。

柳下 これまでエレクトリックの編成では、空間に音を敷きつめる感覚が強かった気がします。でも、1つひとつの音を緻密に重ねてグルーヴを磨いていくやり方は、アコースティック編成ですごく学べたと思う。その意味で「WINDOW」では、キャンバスに絵の具を塗りすぎないというか。あえて余白を残すような作り方が自然にできたかもしれませんね。

「正解が出るまで止まって考える」スペアザスタイル

──アレンジの緻密さは増しつつ、セッションを通じて踊れる曲を作っていくというアプローチ自体は変わらなかった?

柳下 ですね。たぶんそこは、メジャーデビューする前からずっと同じだと思います。まずは4人でスタジオに入って、とにかく音を出してみて……。「今のちょっといいよね」というアイデアが生まれたら、レコーダーを回すという。

──そこからは、どんなプロセスで仕上げていくんですか?

宮原 "TOYIN" 良太(Dr)

宮原 それは曲次第ですね。例えばカッコいいイントロが浮かんだときは、そのフレーズを繰り返し演奏して。その次にどんな展開が来たら一番気持ちいいかを一生懸命考える。この「正解が出るまで止まって考える」っていうのが、たぶん俺たちのいいポイントだと思うんですよ(笑)。セッションで曲を作るときこそ、勢いや惰性に流されちゃいけない。それでつまらなくなってるバンド、けっこう少なくないと思うので……。ただ最近は、僕らも議論はしなくなりましたが。言葉であれこれ考えても本当に意味がなくて。結局、迷ったときはいろいろ演奏してみるのが一番早い。これは経験から学びました。

又吉 いろんなパターンを試した挙げ句、結局何もハマらないってことも多々あるし(笑)。そういうときは無理せず1回寝かせます。で、何カ月かして4人で聴き直すと、「こういう展開は?」っていうアイデアが見えたりするんですよ。あとは誰かの鼻歌から曲が生まれるケースもあるし。本当にいろいろです。

──確かにスペアザの楽曲は、4人のインタープレイをふんだんに盛り込みつつも、構成がかっちりしたものが多いですね。キャッチーな主旋律やサビがしっかり用意されていて。ディープなジャムバンドみたいに延々とインプロビゼーションが続くことはまずない。

宮原 うん。それだとみんなで踊れないでしょ。俺たちはずっと、誰でも楽しめるジャムバンドを目指してきたから。そういう意味でのポピュラリティは常に持っていたいなと。

芹澤 どんなに激しいインタープレイをやっていても、起承転結が感じられて、一見のお客さんでもちゃんと踊れる。僕たちにとってこれってすごく大事なんですよ。自分らが好きで影響を受けてきたジャムバンドも、基本的にはそういう人たちでしたし。

──具体的にはどういったバンドですか?

芹澤 Phishなんかまさにそうですよね。1曲は長いけど、どれもはっきりと聴かせどころがある。Medeski Martin & Woodもそう。自己満足的なジャムじゃなくて、ライブに来たお客の期待に絶対応えてくれる。最近はややスピリチュアルすぎてついていけない瞬間もあるけど。

柳下 はははは(笑)。確かに。

宮原 要は、自分たちもインタープレイを楽しんで、お客さんにも踊ってもらえるのが理想なんですよね。ジャムバンド的な演奏に、クラブカルチャー的なおしゃれなビートもうまくミックスしてね。

ニューアルバム「WINDOW」2015年10月14日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
「WINDOW」
初回限定盤 [CD+DVD] 3780円 / VIZL-857 / Amazon.co.jp
通常盤 [CD] 3024円 / VICL-64397 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. LIGHT
  2. I'LL BE BACK
  3. TWO JET
  4. neon
  5. Celesta Session
  6. SPE TRAIN
  7. Good Luck
  8. Backstreet
  9. Week
  10. Marimba Session
  11. WINDOW
初回限定盤DVD収録内容
  • 「デビュー10年のキセキ ~大車輪~」
SPECIAL OTHERS(スペシャルアザーズ)

SPECIAL OTHERS1995年、高校の同級生だった宮原“TOYIN”良太(Dr)、又吉“SEGUN”優也(B)、柳下“DAYO”武史(G)、芹澤“REMI”優真(Key)の4人で結成。2000年から本格的に活動を始め、2004年8月に1stミニアルバム「BEN」をリリース。2005年6月の2ndミニアルバム「UNCLE JOHN」発表後には「FUJI ROCK FESTIVAL '05」に出演し、大きな注目を集める。2006年6月にミニアルバム「IDOL」でメジャーデビューを果たす。2011年11月にさまざまなアーティストと共演したコラボ作品集「SPECIAL OTHERS」を発表し、2013年6月には初の東京・日本武道館公演を成功させた。2014年10月に、メンバー4人がアコースティック楽器で演奏する新プロジェクト「SPECIAL OTHERS ACOUSTIC」名義での“デビュー”アルバム「LIGHT」をリリース。2015年10月に3年ぶりとなるアルバム「WINDOW」を発表し、11月からは全国23都市を回るワンマンツアーを開催する。