SPECIAL OTHERS 芹澤優真×CASIO「Privia」|CASIOのこだわりに宿った理屈抜きの気持ちよさ

CASIOからデジタルピアノ「Privia」シリーズの新型PX-S1000(BK)が発売された。

この新型Priviaは“プライベートピアノ”をコンセプトに、スタイリッシュなデザインと高品位なサウンドを両立させたハンマー付き鍵盤搭載のデジタルピアノ。Bluetoothを使ったオーディオ再生や、手持ちの音源とのセッションも楽しめる。

この特集ではSPECIAL OTHERSの芹澤優真(Key)にPX-S1000を試奏してもらい、グランドピアノならではの音や響きを再現したという鍵盤の弾き心地や、本機を使ってやってみたいことなどについて話してもらった。

取材・文 / 大谷隆之 撮影 / 須田卓馬

いかに“生っぽさ”を表現するか

──芹澤さんは本日初めて「Privia」を弾かれたんですよね?

芹澤優真

はい。さっきたっぷり試奏させてもらいました。ギターやベースなど、生音を再現した電子楽器っていろいろありますけど、アコースティックとの戦いが一番熾烈なのがピアノだと僕は思うんです。音色とか響きの再現はもちろんだけど、やっぱり鍵盤を叩いたときの微妙な感覚を再現するのがすごく難しい。

──そうなんですね。

今まで多くのエンジニアの方が、いかに“生っぽさ”を表現するか、研究を重ねてこられたと思うんです。それで言うと「Privia」は、プレイヤーが生ピアノに触っているとき無意識に感じ取っているものを、すべてデジタルで再現してくれている印象ですね。「これこれ、この感じ!」って、瞬時にわかりました。

──実際にグランドピアノを弾いたときの感覚に近かったということでしょうか?

そうですね。グランドピアノって、例えば「C」の鍵盤を押さえると単純に「C」の音が出てくるわけじゃないんです。あの大きなボディ内で、まず弦にハンマーが打ち付けられて、それによってほかの弦も共鳴したりする。言ってみれば空間そのものが鳴っているわけなんです。

──きっとそれが、生ピアノが持つ豊かさなんですね。

まさに。鍵盤弾きにとっては、そここそが命なんですよ。理屈じゃないところでそれを感じ取り、コントロールしながら演奏するので。それを正確に再現してくれる「Privia」は、めちゃくちゃありがたいなと。

見えるはずのない弦が見えます

──鍵盤を弾いたときのタッチはいかがでしたか?

重すぎず、軽すぎず、ちょうどよかったです。これまでいろんな電子ピアノを弾いてきた中で、「鍵盤ってこんなに重かったっけ?」と感じることが意外に多かったんですね。でも「Privia」は軽さの中に芯がある弾き心地というか……返りの感覚がすごく自然。海外のグランドピアノを弾いてるときの感覚に近い気がします。もしかしたらこれは、僕が先にオルガンから鍵盤に入ったこととも関係してるのかもしれませんが。

芹澤優真

──どういうことでしょう?

SPECIAL OTHERSは高校の仲間と組んだバンドなんですけど、僕がキーボード担当になったのはわりとあとの話で、最初はギターとかボーカルだったんです。でも次第にPhishみたいなジャムバンドが好きになって。それには鍵盤が不可欠だから、手の空いてるお前がやれと(笑)。それまでピアノの経験もなく、20歳のときローンでオルガンを買ったのが始まりなんです。そういう人間が改めてグランドピアノに触れると、まず「これは打楽器だ」って思う。身体的な感覚として。

──なるほど。

オルガンやフェンダー・ローズの場合は、さっき話したようなハンマーの機構がないので、鍵盤はどこまでいってもキーボードのイメージなんですよ。それに慣れた身体でアコースティックピアノを弾くと、物理的に何かを叩いてるアタック感が直接的に伝わってくる。「Privia」のタッチって、その感じにすごく近いんですよね。だから弾くと、指先が気持ちいい。

──ハンマー付き鍵盤搭載のデジタルピアノとしては、世界最小(※ハンマーアクション付き88鍵盤、スピーカー内蔵デジタルピアノの奥行サイズにおいて / 2019年1月現在CASIO調べ)だそうです。

この小さなボディに鍵盤を戻すためのリアルなハンマーが入っているのがすごいですよね。だってこれ、奥行きがほとんどないんですよ!

──確かに。従来モデルに比べると奥行きは約6cmも短くなっているそうです。

こうやって弾いているうちに、だんだんこの先に弦とハンマーが付いてるような気がしてくる。もう俺、さっきから見えるはずのない弦が見えますもん(笑)。タッチに関して言うと、高域の音を弾いたときには鍵盤が軽くてレスポンスも速く、逆に低音だとグッと押し込む感覚がある。たぶんゼロコンマ数秒の違いなんでしょうけど、そういった鍵の返りの違いも、明らかにシミュレートされてますよね。あとは速いフレーズを弾いたときに、音が自然に連なっていく響きもいい。ブツ切れ感がないというか、隣り合った弦と弦が共鳴している感じがします。