音楽ナタリー Power Push - SPECIAL OTHERS
“10年選手”の4人が目指してきた誰でも楽しめるジャムの形
あえてお化粧はしないサウンド
──表題曲「WINDOW」はダブ調をベースにした曲で。まさに、未来に向けて開けていくような晴れやかな感じが印象的です。このタイトルはどこから思い付いたんですか?
この曲をレコーディングした夜、たまたま車が故障していて、ヤギ(柳下)の車に乗せてもらって帰ったんです。助手席からいろんな家の窓を眺めてて。ふと「世の中には本当にいろいろな個性の窓があるんだな」と思ったんですね。その1つひとつには、自分が知らない人生がある……。そう考えると、この街には膨大な物語が眠っている気がしてきて。すごくカッコいいと思ったんですよ(笑)。で、アルバム表題曲のタイトルにいただきました。
──言われてみれば、タイトなリズムの中にちょっと郷愁をそそる懐かしさも漂っていて、屋外ステージで聴くとグッときそうです。そういえばスペアザの楽曲には、「ライブで再現できないアレンジはしない」というルールがありますが、今回もそこは変わらず?
うん、変わらないです。僕ら、高校時代は一緒に6人編成のバンドをやってたんですね。卒業後は4人でセッションを続けて。20歳のときみんなで芹澤に無理やりオルガンを買わせて、名前もSPECIAL OTHERSにしたんですけど。
柳下 その前後から本気でライブをやるようになってね。
そう。考えてみれば、この4人がそれぞれどの楽器を選んで音を出すかを決めた時点で、それがバンドのコンセプトになってたんですよね。もともと「FUJI ROCK FESTIVAL '99」でPhishに出会って衝撃を受けて、生バンドでジャムをやりたくて続けてきたわけで。その意味では、“4人の両手両足でこと足りる”アレンジを目指して音楽を作ってきたんです。
又吉 今回の「WINDOW」もそこは変わらないよね。昔も今も、ライブで再現できないアレンジはしない。DTMは導入したけど、ギターの重ね録りはやってないし。
──そこはもう、潔いくらいに徹底してますね。
柳下 それをやり始めると、どこまでもブレてしまうから。むしろ制約の中で自由に遊ぶやり方のほうが、僕たちは好きなんです。
芹澤 海外のバンドのライブを観に行くと、たまにCD音源とのギャップに驚くことってあるじゃないですか。最近だとVampire Weekendとか、「これ、ホントに同じ曲?」って思ったり。まあ、あそこまで極端だと、それはそれで感心するんだけど(笑)。でも俺たちはライブの空気感をそのままCDに封じ込めたいし、逆にライブを観てくれたお客さんには、「CDよりさらにエキサイティングですね」と言ってもらいたい。
柳下 今の録音テクノロジーを使えばいろんなことができるけど、あえてお化粧はしない。
芹澤 女の子と同じで、スッピンのかわいさには結局かなわないしね(笑)。
転機はアジカンツアー
──では少し視点を変えて。SPECIAL OTHERSは来年デビュー10周年を迎えますね。2000年にSPECIAL OTHERSとして活動をスタートさせて、自主制作でCDをリリースして。2006年6月にはミニアルバム「IDOL」でメジャーデビューを果たしたわけですが、これまでの軌跡を振り返ったとき、最大の転機はいつでした?
うーん……インディーズ時代に最初のCDを出したのも大きかったけど、デカかったのは2006年、アジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)の後藤(正文)くんが俺らをツアーの前座に抜擢してくれたことじゃないかな。まだ一般にはほとんど知られてなかった時期で。僕ら、ロック系のミュージシャンやリスナーとの接点もほとんどなかったんですけど、彼がフックアップしてくれて一気に世界が広りました。
芹澤 確かに、あれが一番の分岐点だったかもしれないね。だって、それまで最大200~300人クラスのライブハウスでしかやったことなかった俺らが、いきなり大勢の前で演奏できたわけですから。それ以降、「アジカンのライブで観て好きになりました」という人がひっきりなしにライブに来てくれるようになって。
柳下 確か後藤くん、その前年の「FUJI ROCK FESTIVAL '05」で僕らのライブを観てくれたんですよ。
──そう考えると、改めてスペアザの活動とフェスの関わりって深い気がしますね。いろんなつながりを作ってくれたという意味で。
本当にそう思います。デビュー当時、僕らみたいにインストしかやらないジャムバンドって、音楽シーンの中でかなり特殊だったと思うんです。でもフェスに出ると、みんなフラットに聴いてくれるじゃないですか。そもそも僕ら自身が、日本のフェス第1世代だし。そこでいろんな音楽と出会い、影響を受け、自分たちもその舞台に立ちたいと思ってプロになったところがあるので。
──確かにこの十数年、多様な音楽を体験できるフェス文化が日本のリスナーの耳を育ててきた部分はありそうです。
柳下 うん。ジャンルの垣根がなくなった感じはすごいしますよね。例えば「FUJI ROCK FESTIVAL」なら、ORANGE COURTに出るお目当てのバンドを観に行く途中で、FIELD OF HEAVENに出ていたスペアザを知ってくれた人もいただろうし。その意味では、俺らがずっとやってたストリートライブの大きい版というか(笑)。いろんな通りがかりの人に「ふーん、歌詞はないけど、こういう音楽も面白いな」って思ってもらえた場かもしれませんね。
次のページ » 夢は主催フェス、企画ライブ、オリコン1位
- ニューアルバム「WINDOW」2015年10月14日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
- 「WINDOW」
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3780円 / VIZL-857 / Amazon.co.jp
- 通常盤 [CD] 3024円 / VICL-64397 / Amazon.co.jp
CD収録曲
- LIGHT
- I'LL BE BACK
- TWO JET
- neon
- Celesta Session
- SPE TRAIN
- Good Luck
- Backstreet
- Week
- Marimba Session
- WINDOW
初回限定盤DVD収録内容
- 「デビュー10年のキセキ ~大車輪~」
SPECIAL OTHERS(スペシャルアザーズ)
1995年、高校の同級生だった宮原“TOYIN”良太(Dr)、又吉“SEGUN”優也(B)、柳下“DAYO”武史(G)、芹澤“REMI”優真(Key)の4人で結成。2000年から本格的に活動を始め、2004年8月に1stミニアルバム「BEN」をリリース。2005年6月の2ndミニアルバム「UNCLE JOHN」発表後には「FUJI ROCK FESTIVAL '05」に出演し、大きな注目を集める。2006年6月にミニアルバム「IDOL」でメジャーデビューを果たす。2011年11月にさまざまなアーティストと共演したコラボ作品集「SPECIAL OTHERS」を発表し、2013年6月には初の東京・日本武道館公演を成功させた。2014年10月に、メンバー4人がアコースティック楽器で演奏する新プロジェクト「SPECIAL OTHERS ACOUSTIC」名義での“デビュー”アルバム「LIGHT」をリリース。2015年10月に3年ぶりとなるアルバム「WINDOW」を発表し、11月からは全国23都市を回るワンマンツアーを開催する。