ナタリー PowerPush - SPECIAL OTHERS

話題沸騰のコラボ作品集「SPECIAL OTHERS」裏話

女子トーク全開だったマレウレウ

──マレウレウと共演した「イヨマンテ ウポポ」は、アイヌ民謡のカバーなんですよね。

左から柳下武史(G)、宮原良太(Dr)

柳下 これはマレウレウに歌を録ってもらって、それをデータで送ってもらって、その歌を聴きながら俺たちがセッションしながら作っていくという方法で作業して。これだけはほかと違った作り方でしたね。

宮原 曲の中に大きな展開が2つあるんですけど、それが歌にハマったときが楽しかったですね。「あ、このキーだと合った!」みたいな。元々一定のキーの曲じゃないので、本当に合うかどうか不安もあったんですけど、それが合っていくのが楽しかった。

芹澤 自分たちが意図してないところで、「お? すげえ切なくなった」とか「あ、気持ちいい」みたいに聴こえ方が変化するんですよ。

──アイヌ民謡のメロディにジャズ的な転調がハマったりして、面白いですよね。

柳下 ジャズというより、ループ的なジャズヒップホップみたいな感じを意識してましたね。

──マレウレウは唯一の女性参加アーティストですが、一緒にレコーディングをしてみていかがでしたか。

宮原 面白いですよ。女子トークがすごいんですよ。親戚の女性たちが集まってる雰囲気というか(笑)。

柳下 B級ゾンビ映画の話とかしてて、歌ってるときの神聖な雰囲気からかけ離れてる。

芹澤 でも、その傍らで鹿のアキレス腱でトンコリって楽器の弦を作ってたりするんですよ。それが絶妙なバランスで。

柳下 フラットな視点というか、俺たちが音楽を楽しんでるのと同じ感じでアイヌの伝統とかを引き継いでるっていうのが面白かったですね。

「俺ら基本パンクですよ」

──そして「DOOR」でコラボしたサイプレス上野とロベルト吉野は皆さんと同郷ですね。

宮原 同郷の後輩です。

芹澤 お互い世間に知られてない頃からセッションしてて。

宮原 横浜のアンダーグラウンドのシーンで、みんなで溜まって遊んでたときからの後輩ですね。

──2人の出身は横浜の中でもちょっと危ない界隈らしいですね。

左から芹澤優真(Key, Vo)、宮原良太(Dr)

宮原 そうですね。彼らの出身地は戸塚区にあった横浜ドリームランドの近くなんですけど、伊勢佐木町とか福富町とか横浜の古い歓楽街とは違った独特の雰囲気があるんです。

芹澤 とんでもねえとこです(笑)。

──そういう話聞くと「怖そう」とか「ヤンキーなの?」って思いますけど、そういうわけじゃないんですよね。

芹澤 別に俺らがヤンキーってわけじゃないですけど、周りはそんなんばっかでしたね。

──サ上とロ吉の音楽を皆さんはどう見てますか?

宮原 ドリームハイツの団地の文化の音楽ですね。

芹澤 そこでしか絶対生まれないヒップホップっていうか。団地って労働者の人も多いから。そういうコミュニティから生まれてきた音楽だと思いますね。ヤンキーとかスケーターとかがいっぱいいる中で作ったって感じがする。どん詰まり感があるからこそ、クリエイトするっていう(笑)。

──まさに日本のヒップホップですね。

宮原 そうですね。

芹澤 どん詰まりでお金もなくて、なんにもないからなんとかそこにファンタジーを作ろうとするというか。ファンタジーを作って遊ぶのが楽しくなる。それは俺らも一緒。

宮原 新しい音楽ってそういったところから生まれてくるんだと思うんですよね。

──SPECIAL OTHERSからこんなパンク論を聞くとは意外です。

宮原 いや、俺ら基本パンクですよ。

──やりたいことやれてるから、今、みんな温和な感じだけど……。

芹澤 そうですね(笑)。これがそうじゃなかったら、えらいささくれだってると思いますよ。

──なるほどね。ではサ上とロ吉の2人とは特に何も相談しなくても、共感できるようなリリックやトラックが上がってきた?

又吉 リリックは俺らとの「思い出」みたいなものですね。

柳下 でも何も言わなかったわけじゃないんですよ。

宮原 連絡が取れなくなって、俺たちが怒るっていう事件があって(笑)。

芹澤 連絡つかないのに、グラタンを食べるか食べないかとかTwitterに書いてるし。

一同 (笑)。

──仕事って感じではなかったんでしょうね。

芹澤 まあ、昔からの仲間だしそうでしょうね。でも俺らはそれどころじゃなくて、「もう、やんねえ」って1回断ったんですよ。絶縁するぐらいの勢いで。

──そこからどうしたんですか?

芹澤 そしたら上野くんが、自分の仕事を飛ばして俺らが作業してるスタジオに謝りに来てくれて。

宮原 こっちがびっくりするぐらいの真剣さで謝られたんで、なんか「スクールウォーズ」みたいな感じになって。結果、楽曲はスポ根っぽい空気感が出ていい感じに仕上がりました。

コラボ作品集「SPECIAL OTHERS」 / 2011年11月30日発売 / SPEEDSTAR RECORDS

  • 初回限定盤[CD+DVD] / 3675円(税込)Amazon.co.jpへ
  • 通常盤[CD] / 2100円(税込) / VICL-63795 / Amazon.co.jpへ
収録曲
  1. Sailin' / SPECIAL OTHERS&Kj(from Dragon Ash)
  2. あの国まで/ SPECIAL OTHERS&オオキノブオ(from ACIDMAN)、ホリエアツシ(from STRAIGHTENER)
  3. 空っぽ / SPECIAL OTHERS&キヨサク(from MONGOL800)
  4. イヨマンテ ウポポ / SPECIAL OTHERS&マレウレウ
  5. DANCE IN TSURUMI / SPECIAL OTHERS&後藤正文(from ASIAN KUNG-FU GENERATION)
  6. DOOR / SPECIAL OTHERS&サイプレス上野とロベルト吉野
初回限定盤DVD収録内容
  1. Uncle John
  2. IDOL
  3. AIMS
  4. Good morning
  5. Surdo
  6. STAR
  7. Laurentech
  8. PB
  9. Wait for The Sun
  10. 空っぽ / SPECIAL OTHERS & キヨサク(from MONGOL800)
  11. Sailin' / SPECIAL OTHERS & Kj(from Dragon Ash)
  12. あの国まで / SPECIAL OTHERS & オオキノブオ(from ACIDMAN), ホリエアツシ(from STRAIGHTENER)
SPECIAL OTHERS(すぺしゃるあざーず)

1995年、高校の同級生だった宮原良太(Dr)、又吉優也(B)、柳下武史(G)、芹澤優真(Key, Vo)の4人で結成。2000年から本格的な活動を開始する。2003年に制作した自主音源「INDY-ANN」がCRJ-Tokyoで7週連続チャートイン。2004年8月には1stミニアルバム「BEN」をリリースし、外資系CDショップで好セールスを記録する。続く2005年6月の2ndミニアルバム「UNCLE JOHN」発表後には「FUJI ROCK FESTIVAL '05」に出演し、大きな注目を集める。2006年6月にミニアルバム「IDOL」でメジャーデビュー。人懐っこくリラックスした音楽性は、「FUJI ROCK FESTIVAL」「朝霧JAM」をはじめとする数々の野外フェスやイベントで人気を博している。2009年にリリースしたアルバム「PB」、2010年にリリースした「THE GUIDE」は2作連続でオリコンウィークリーチャート初登場10位を記録した。そして 2011年は「コラボイヤー」と銘打ち、さまざまなアーティストとコラボレーションを展開中。