ナタリー PowerPush - SPECIAL OTHERS

話題沸騰のコラボ作品集「SPECIAL OTHERS」裏話

労働者の街・鶴見から生まれた曲

──さて、最後はASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤さんですが、彼と出会ったのはいつ頃ですか?

左から柳下武史(G)、宮原良太(Dr)

宮原 2005年のフジロックかな? アジカンは出てなかったんだけど、観に来てたみたいで。俺らは「アジカンの人だ!」っていう認識がもちろんあったんですけど、まさか興味を持ってくれるとも、混じれる部分があるとも思ってなかったんですが、その時に後藤くんが「ライブ観たよー。すげえカッコよかった」って話しかけてくれて。それが縁でアジカンのライブを観に行って、感動したんですよね。

──そのあとは?

宮原 アジカンが開催してる「酔杯(スイカップ)」っていうホールツアーに誘ってもらって。そこからロック界隈の人とのツテが広がっていったんです。俺らがJ-ROCKシーンで注目されるきっかけを作ってくれたのがアジカンなんですよね。

芹澤 彼なしにはホントに今の僕たちは語れないというか。アジカンがスペアザを広めてくれたと言っても過言ではない。

宮原 お世話になった兄貴のように思ってる相手なので、今回の作品を作るにあたってお願いしないわけがないでしょ!って感じで。

──後藤さんが歌うのは想像しやすかったですか?

柳下 一番イメージが湧きましたね。

芹澤 根本が似てるんだと思うんですよね。お互いの音源を聴いてるし、影響し合ってる部分もあると思うけど、元々近いものがあると思うんです。

──USインディ的なサウンドに日本的なメロディがあるところとか?

芹澤 日本的というより民族的なんですね、メロディラインが。細かい音符のスケールを使うんじゃなくて、ヨナ抜きの沖縄だったり、アフリカの人も使うっていう音階が好きなんだと思うんですよね、アジカンも俺たちも。

──なるほど。そして今回後藤さんは個人的というか内面的な歌詞を書いてきましたね

宮原 あるとき、後藤くんを車で自宅まで送ったときに、「Kjがすごかった」みたいな話をしたんですよ。で、そのときに「みんながこういう前向きなこと書いてるから、俺はちょっとみんなとは違うことを表現しようかな」って話してて。レコーディングしたのが俺らの出身地の鶴見だったこともあってか、そういうことを踏まえた歌詞を作ってくれましたね。

──後藤さんがSPECIAL OTHERSのホームを訪れて感じたことを書いたと。

宮原 鶴見の下町感みたいのを気に入ったみたいなんですよね。イギリスの労働者階級の街から有名なバンドってたくさん出てるじゃないですか。鶴見の雰囲気がそういう街と被ったんだと思うんです。あまり知られてないけど、日本にも労働者階級発の文化も着実にあって。後藤くんはそういうローカルなものにも注目してるんですよね。

SPECIAL OTHERS

芹澤 で、俺らもそれはずっと思ってたというか。自分たちの街を誇りに思ってるし。例えばOASISがイギリスのマンチェスター出身っていうのは世界中の人が知ってるじゃないですか。実際にはマンチェスターなんてどこにあるかわからないし、その街がすごいわけじゃないけど、出身であることに誇りを持って音楽をやってる人がいる。みんなそれぞれのバックボーンを出していけば、音楽が混ざり合って面白いと思うんですよね。

宮原 これは日本にも街によって音楽の違いがあるんですよ、ってことを知らしめる曲かもね(笑)。

芹澤 横浜っていうキーワードはこれまでいろんなところに出てきてたけど、鶴見をキーワードに出したバンドは俺たちが初めてかもしれないですね。

俺たちは「変化しないバンド」

──本作はSPECIAL OTHERSだからこそできたコラボ作品集だと思いますが、これを作ったことでこれからのことが見えてきたりしましたか?

宮原 そうだな……音楽的には変わらないと思いますね。別に今回も音楽性を変えたつもりはないし。ただ、このアルバムによってSPECIAL OTHERSっていうインストゥルメンタルバンドがいるってことに気付く人がいると思うし、そういう人たちに名前を覚えてもらえたらと思ってますね。

柳下 今回いろんな人とコラボして、改めてバンドって面白いなあって。4人に戻ったときのモチベーションも上がったというか。バンドの可能性を実感できたことが一番の収穫でしたね。

宮原 作品を出すたびに「変化」を求められてる気がするんですよね。雑誌の取材とかでよく言われるんですけど。もちろんそのほうが面白いのかもしれないけど、俺たちは「変化しないバンド」を押しにしてるんで。

芹澤 成長と変化は違うと思うし。僕らは成長はするけど、変化は目指してないんで。

──わかりました。では、最後にワンマンライブで恒例になっている柳下さんの俳句で締めていただきましょうか。

柳下 アルバムを総括する一句ですよね? うーん……(だいぶ悩む)。できた!「俺たちの / 作品たくさん / 効いてくれ」です。よろしくお願いします!

柳下武史(G) SPECIAL OTHERS

コラボ作品集「SPECIAL OTHERS」 / 2011年11月30日発売 / SPEEDSTAR RECORDS

  • 初回限定盤[CD+DVD] / 3675円(税込)Amazon.co.jpへ
  • 通常盤[CD] / 2100円(税込) / VICL-63795 / Amazon.co.jpへ
収録曲
  1. Sailin' / SPECIAL OTHERS&Kj(from Dragon Ash)
  2. あの国まで/ SPECIAL OTHERS&オオキノブオ(from ACIDMAN)、ホリエアツシ(from STRAIGHTENER)
  3. 空っぽ / SPECIAL OTHERS&キヨサク(from MONGOL800)
  4. イヨマンテ ウポポ / SPECIAL OTHERS&マレウレウ
  5. DANCE IN TSURUMI / SPECIAL OTHERS&後藤正文(from ASIAN KUNG-FU GENERATION)
  6. DOOR / SPECIAL OTHERS&サイプレス上野とロベルト吉野
初回限定盤DVD収録内容
  1. Uncle John
  2. IDOL
  3. AIMS
  4. Good morning
  5. Surdo
  6. STAR
  7. Laurentech
  8. PB
  9. Wait for The Sun
  10. 空っぽ / SPECIAL OTHERS & キヨサク(from MONGOL800)
  11. Sailin' / SPECIAL OTHERS & Kj(from Dragon Ash)
  12. あの国まで / SPECIAL OTHERS & オオキノブオ(from ACIDMAN), ホリエアツシ(from STRAIGHTENER)
SPECIAL OTHERS(すぺしゃるあざーず)

1995年、高校の同級生だった宮原良太(Dr)、又吉優也(B)、柳下武史(G)、芹澤優真(Key, Vo)の4人で結成。2000年から本格的な活動を開始する。2003年に制作した自主音源「INDY-ANN」がCRJ-Tokyoで7週連続チャートイン。2004年8月には1stミニアルバム「BEN」をリリースし、外資系CDショップで好セールスを記録する。続く2005年6月の2ndミニアルバム「UNCLE JOHN」発表後には「FUJI ROCK FESTIVAL '05」に出演し、大きな注目を集める。2006年6月にミニアルバム「IDOL」でメジャーデビュー。人懐っこくリラックスした音楽性は、「FUJI ROCK FESTIVAL」「朝霧JAM」をはじめとする数々の野外フェスやイベントで人気を博している。2009年にリリースしたアルバム「PB」、2010年にリリースした「THE GUIDE」は2作連続でオリコンウィークリーチャート初登場10位を記録した。そして 2011年は「コラボイヤー」と銘打ち、さまざまなアーティストとコラボレーションを展開中。