SPARK!!SOUND!!SHOW!!が11月4日にニューシングル「STEAL!!」をリリースした。
「STEAL!!」は、テレビアニメ「アクダマドライブ」のオープニングテーマとして書き下ろされた楽曲。スサシらしい疾走感のあるミクスチャーサウンドが印象的な1曲に仕上がっている。ジャケットのアートワークは、「かいじゅうのうた」「南無」などこれまで多くのスサシ楽曲のミュージックビデオを手がけてきたクリエイティブユニット・Margtが担当。彼らは今年からスサシのビジュアル面を全面的にプロデュースしている。
この特集では、Margtを迎えてスサシとのクロストークを実施。2組の出会いのエピソードから、スサシがMargtとタッグを組んだことで広がったバンドの世界観、互いの創作における姿勢について語ってもらった。
取材・文 / 天野史彬 撮影 / 斎藤大嗣
NG出すくらいなら、Margtに頼む意味がない
──SPARK!!SOUND!!SHOW!!とMargtが最初にタッグを組んだのは、2017年の「かいじゅうのうた」のミュージックビデオですよね。
Arata Will Will Smith Sekuhara Nuclear(Margt) そうですね。もともと、俺らはタクマと知り合いだったんです。彼がAAAMYYY(Tempalay)とeimieっていうバンドをやっていた頃に、ミュージックビデオを撮ったことがあって。
チヨ(B, Cho / SPARK!!SOUND!!SHOW!!) で、タクマがスサシに入ったタイミングで「かいじゅうのうた」のMVを作りたいという話になったんですけど、予算もないし、イケてる知り合いもおらんし、どうしようと相談したんです。そしたらタクマが「信頼できる知り合いはいるけど、ニューヨークに住んでるわ」って。それがMargtだったんですよね。そこから連絡を取り合うようになりました。「かいじゅうのうた」は、もう完全にMargtに丸投げしたんです。「予算ないから、これでなんとかして」と。
Isamu Maeda(Margt) 実際のところ、あのときは何を作ったらええか、よくわからなかったです。スサシとは会ったこともなかったし。
Arata 撮りたい画をとにかく撮って、あとでつなげるっていう感じで作ったのは覚えてる。とりあえず女の子にゴジラのマスクを被ってもらったり、庭でぬいぐるみを焼いたり。あと、銃声の部分がカッコいいから、とにかくその部分はカッコよくキメよう、とか考えてましたね(笑)。最初にスサシを聴いたときは、かなり意味のわからん音楽やなって感じやったよな?
Isamu うん、謎やったわ。わけわからんものに対して、わけわからんものを返す感じというか。
タナカユーキ(Vo, G / SPARK!!SOUND!!SHOW!!) でも、いまだにあのMVの冒頭の「かいじゅうのうた」っていうロゴ、めっちゃカッコいいなって思う。
──Margtとしては、わけのわからないものとして出会って以来、どのようにしてスサシというバンドを理解し、受け止めていったのでしょう。
Arata スサシと一緒にやるときは、見たことのないものを作りたいというのが常にあって。あと攻撃的な曲が多い印象だったので、とりあえず「ヤンキーっぽくいこうぜ」というのは最初から言っていたんです。
Isamu それに、スサシは1つのジャンルというより、いろんなジャンルがミックスされてる。Margtとしては、だからこそのやりやすさもあるんです。簡単にイメージできるものではないからこそ、逆にいろんなことを試せるんですよね。サウンドが攻撃的だからといって、その攻撃性をストレートに表現しなくてもいいというか。あと、スサシはNGがほとんどないんですよ。普段は制限があることもあるけど、彼らの場合はどれだけ自由にやってもいい。
タクマ(Key, G, Cho / SPARK!!SOUND!!SHOW!!) そもそも、こっちからNG出すくらいなら、Margtに頼む意味がないから。
タナカ Margtに対してこっちから出すオーダーといったら、「常に攻めてほしい」ということだけやから。Margtは俺らすら置いていかれるくらい攻めてくれる。乗っかっていけばおもろい感じに転んでいくことがわかっているから、信頼できるんです。
スサシに一番フィットするMargtの表現
──Margtのクリエイティビティにおける芯は、どういった部分にあると思いますか?
Arata 基本、俺らはパンクスな部分があるんですよね。見た目の部分というより、精神性でっていうことなんですけど。
Isamu ストレートに表現したくない。だから、もし僕らがもろパンクのバンドにMVを作るとすると、「まんまパンクやん」というものにはならないと思う。
Arata キラキラポップみたいな感じにするな(笑)。
──“固定観念”とか“お決まり”とか、そういうものに対するアンチテーゼがあるんですね。
Arata そうですね。常に何かにイラついている感じがあるんです。自分たちのそういう部分を、スサシの作品だとめちゃくちゃ出せるんですよ。
──スサシとMargtがここまでコラボレーションを積み重ねてきたのは、それだけ最初の「かいじゅうのうた」の手応えが大きかったということですよね。
チヨ 決定的やったのは「南無」のMVだと思います。あのときはディスカッションして作っていって、スサシとMargtでやれることを確立した感じがあったんですよね。Margtと一緒にやるときって、僕ら自身も見えていなかったものまで見えるというか、視界が360°くらい広がる感覚がある。それに「南無」のMVは、みんながスサシに対して抱いていたイメージを、ビジュアルとしてパッケージングして提示してくれた感じがしたんです。
Arata 「南無」は当初、“反乱”“団結”といったテーマをいくつか並べていったんですけど、その中に“上京”とか、そういうちょっとふざけた言葉も入れ込んでいって。そもそも曲がめっちゃキャッチーだから、画がストイックすぎてもハマらないんですよね。それなら、ちょっとギャグっぽい言葉も入れようということで、「バイトも休む」っていう歌詞もあるし、上京してきたばかりの金のないティーンネイジャーが思っていそうなことも並べていったっていう(笑)。
Isamu 「家賃」とか、急に生活に寄り添っていく感じで(笑)。
タナカ そういうところが、俺らとMargtはめっちゃ合うなと思っていて。要はユーモアがあるんですよね。Margtは2人とも関西人やから、しゃべっているときのテンポ感もめっちゃ合う。それに、ユーモアはあるけど、アウトプットされるものはシュッとしたクールなものになっている。シュッとしているんだけど、関西人的な洒落も効いてるところがめちゃくちゃいいんです。言ってしまえば、スサシも洒落で曲を作っているから。さっきArataが言ってた「銃声がヤバい」みたいな、そのくらいの感じで曲を作っているんで(笑)。なので、Margtが好き勝手やってくれたものが、最終的にスサシに一番フィットするっていうくらい、めっちゃ合うと思うし、一緒にやるのが楽なんです。
Isamu ただ「南無」以降、スサシのビデオを編集するときは必ずと言っていいほど目が痛くなる(笑)。「南無」のときはストロボの見すぎで右目が腫れたけど、この間の「Tokyo Murder」の編集のときは吐いたりしましたね(笑)。
チヨ 「南無」のMVはストロボの使いすぎで、本当に危ないから、最初に注意書きを入れてたくらいだしね。
タナカ あの注意書きが怖いから、未だに「南無」のビデオだけは見れていないっていう人もいるらしいからな。「責任は負いません」とか書いてあるし(笑)。
Arata でも、スサシとやるときは放送できないくらいギリギリのものを作りたいなっていうのはあるからなあ。
──イチローさんは、Margtの作る作品にはどのような印象を抱いていますか?
イチロー(Dr / SPARK!!SOUND!!SHOW!!) MVを作っているときは、制作の途中段階で見せてもらったりするんですけど、いつも新感覚すぎて、もはやいい悪いを超えて、すごいなって思ってますね。
Arata 「よくわかんない」ってことでしょ?(笑)
イチロー そう(笑)。でも、その「よくわかんない」感じがMargtらしさだし、同時にスサシらしさにもつながっているんだと思います。
タナカ 地味にいいこと言ってるな(笑)。
Arata まあ、自分たちでもたまによくわからんくなるときあるからな。「何作ってんねやろうな、俺ら?」って(笑)。
Isamu ふとしたときに、「これ、ほんまにカッコええんか?」と自分たちでもなるから(笑)。でも、振り切ってたらいいのかなって。中途半端はダメだけど、振り切ってたら全然いい。
タナカ ええなあ。そういうところがほんまにええわ。
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「STEAL!!」に込めたそれぞれの正義