SPARK!!SOUND!!SHOW!!|原田ちあきとの異色コラボで生まれた「HAPPY BIRTH DIE」

SPARK!!SOUND!!SHOW!!が6月30日にニューシングル「HAPPY BIRTH DIE feat. 原田ちあき」をリリースした。

「HAPPY BIRTH DIE」は、独特なタッチのイラストで知られるイラストレーター・原田ちあきをフィーチャリングゲストに迎えた1曲。シングルには52ページ構成のブックレットが付属しており、原田による描き下ろしイラストやメンバーインタビューなど充実したコンテンツが掲載されている。デザインはスサシのビジュアル面を全面的にプロデュースするクリエイティブユニット・Margt(PERIMETRON)が担当した。

音楽ナタリーでは、スサシと原田にインタビュー。「HAPPY BIRTH DIE」の話題はもちろん、2組の出会いのエピソードや、バンドがイラストレーターをフィーチャリングゲストに迎えるという一見異色なコラボが実現した背景について語ってもらった。

取材・文 / 真貝聡 撮影 / 森好弘

恋敵から始まった関係

──まずはSPARK!!SOUND!!SHOW!!と原田さんの関係から教えてもらえますか?

タナカユーキ(Vo, G) 俺らは空きっ腹に酒のボーカルの(田中)幸輝と昔からよくつるんでるんですけど、幸輝が結婚することになって、相手を聞いたら原田ちあきちゃんだったんですよ。だから幸輝がいなかったら、もうちょっと出会いが遅なってたかなと。

──知り合ったのは何年前なんですか?

タナカ めっちゃ最近っすよ。結婚して1、2年だもんね?

原田 そうっすな!

SPARK!!SOUND!!SHOW!!と原田ちあき。取材中の様子。

イチロー(Dr, Cho) そもそも幸輝とはどこで知り合ったの?

タナカ おお、それ聞きたいわ。

原田 高校生の頃、知り合いだった軽音部の子と空きっ腹に酒がめちゃめちゃ仲良しやって。ある日、学校の廊下に「空きっ腹に酒がライブをやります」みたいな貼り紙があったの。私はルールを守ることが好きだから、その貼り紙を見たときは「高校生のくせに酒という言葉をバンド名に付けてるの嫌だな」と思っていて(笑)。そこから時間が流れて、私が二十歳くらいになってイラストを描く活動を始めた頃に、たまたま「今、公園でバンドマンたちが酒盛りしてるから、遊びに来ませんか?」という誘いがきて、行ってみたら幸輝くんがいて。

タナカ そこで出会うんや。

原田 知り合いから「こいつ、空きっ腹に酒のボーカルやねん」と紹介されたときに「名前だけ知ってます」と言ったら悪い印象を与えちゃったみたいで(笑)。お近付きの印に自分のグッズを幸輝くんにあげようとしたら「いや、いらない」って言われて。「もう、この人とは仲よくなることはないだろう」と思ったのが最初の出会いでございます。

タナカユーキ(Vo, G)

タナカ そっから結婚までいくんやからオモロいな(笑)。

原田 だけど幸輝くん、いいところもあります(笑)。

タナカ もちろんもちろん、あんなに優しい奴はおらんもんな。

原田 会ったことのない犬を想像して泣くような人だから。そんな幸輝くんが仲のいい人しか見れないInstagramのストーリーズに、私が家でふざけている動画を上げ続けていて、それを見て認知してくれたんだよね?

タナカ そうやね。ちあきちゃんが描いている絵は前から知っていたけど、ちゃんと人柄を知ったのはインスタがきっかけ。

原田 私、全然バンドに詳しくないんですよ。幸輝くんがあるときから「スサシ、スサシ」って言うようになって、最初は「どこの女や、それは!」と思ってた。

一同 (笑)。

原田 「今日はスサシとライブだ」「スサシと遊んでくる」「スサシの家に行って来る」という話を頻繁に聞かされていたんですけど、当時はスサシさんを知らないから「また、そのバンドのとこに行くんか!」と腹を立てていました(笑)。

チヨ(B, Cho) 言ってしまえば、僕たちとちあきちゃんは恋敵から始まった関係です(笑)。

──スサシの正体がわかったときはどう思いました?

原田 それこそ幸輝くんが好きな「無愛愛」をきっかけに、スサシさんの音楽を聴かせてもらったりライブを観せてもらったりして。こんなにも不思議な音楽を奏でる方々がいるのか!と思いました(笑)。

スサシと原田ちあき、お互いの印象

──メンバーについては、どんな印象をお持ちですか?

原田 運動神経がよさそうな人たち(笑)。

タナカ 最初にそれ!?(笑)

SPARK!!SOUND!!SHOW!!

原田 今回、「HAPPY BIRTH DIE」のジャケットでスサシさんを女の子として描かせていただいたので、女性として見てるかも(笑)。

イチロー やっぱり恋敵にされちゃうんや。

チヨ しかも1人ひとりのイラストを描いてもらったうえに、ちゃんとキャラ設定まで考えてくれていたじゃないですか。あれはめっちゃ面白かったです。

タナカ 特に面白かったのがイチローの設定で、爆乳の帰国子女で「栄養が全部乳にいく。とにかく、引くほど足が速い」っていう。

イチロー (笑)。

原田 ふふふ。ライブ会場で皆さんにご挨拶をさせていただいたことはあるんですけど、実際に遊んだりちゃんとお話ししたことがあるのはユーキくんとタクマくんだけなんです。まだ未知の部分が皆さんにあったので、ただただ見た目の印象とかMVでの立ち位置とかライブの雰囲気からキャラ設定を考えました。

──せっかくなので、メンバー1人ひとりのイメージを教えてもらえますか。

原田 チヨさんはすごくファビュラスな方ですよね。服装もそうですけど、いつも爪にマニキュアを塗っていておしゃれでいらっしゃる。

チヨ 細かく見てくれていて、ありがとうございます!

原田 ユーキくんは会うたびに髪の毛の色が違うのが印象的。あと、初めて会ったときは家に来てくれたんですけど、その日はお互いに人見知りをしていて。3回くらい会ってからはフレンドリーに接してくれたので、同じ人見知りとしてすごく親近感を抱いています。

タナカ 最初に会ったとき、俺の印象よくないやろなと思っていたんですよ。だって幸輝をずっと連れ回してる張本人やから。マジで恋敵というか浮気相手やと思われてるやろと思って、心のソーシャルディスタンスは保っていたかも。

原田 なるほど(笑)。次に、タクマくんは4人の中で一番お会いしているかもしれないです。一緒に遊んだり家に来てくれたりして。タクマくんは私が何をやっても褒めてくれるんですよ。「今のグッドだったよ」と全部肯定してくれるので、一緒にいると自己肯定感が上がる。私の担任だったらよかったのに、と思った。

イチロー(Dr, Cho)

チヨ イチローはどう?

原田 イチローさんの印象は……元気!

一同 (笑)。

原田 もしかしたら一番ちゃんとしゃべったことがないかもしれないですね。

イチロー みんなと比べたら全然しゃべってないよね。去年の3月に渋谷のOZ studioでやったポップアップショップに遊びに来てくれたときに、挨拶して少し話したくらいだと思う。

原田 なのでゆっくり遊んでみたいです。よかったらお家に来てください!

イチロー ぜひお邪魔させてください!

タナカ だけど、イチローは犬が嫌いやからな。

イチロー そうそう、昔犬に追いかけられたことがあって。そのトラウマで苦手になったんだけど、最近は小さい犬を見たら触る練習させてもらってる。

原田 あ、じゃあうちの犬はダメだ(笑)。すっごい噛むし!

イチロー 噛むんや。そしたらもうちょい耐性を付けてから行きます(笑)。

──逆に、スサシの皆さんから見て原田さんはどんな人ですか?

タクマ(Key, G, Cho) とにかく才能の人かな。絵や歌だけじゃなくて、ダンスとか何を表現しても全部ちあきちゃんの色を出せるから、そういう意味で才能の塊だと思います。

両者の魅力が詰まったブックレット

──両者の関係や印象を聞けたところで、ここからが本題なんですけど、今回「HAPPY BIRTH DIE feat. 原田ちあき」で原田さんに声をかけた経緯を教えてください。

イチロー タクマが幸輝と一緒に曲を作ったことがあって、その仮歌をちあきちゃんが歌っていたんですよ。その音源がすごくよくて、今回コラボすることになったんだよね。

原田 そうそう! しかも今回は歌だけじゃなくて、シングルに付属するブックレットでもイラストを描かせてもらって。

──そのアプローチが面白いですよね。

チヨ 今までだったらフェスに出て、お客さんにライブを観てもらってバンドの名前が広がっていくみたいな流れがあったじゃないですか。でもコロナで従来の活動ができなくなった。今は普通にCDを出してもそんなに広がっていかないし、売上枚数もだいたい予測がついちゃうんですよね。それなら特殊な形でリリースするほうが面白いんじゃないか、という話になって。一見のお客さんが見ても「スサシってこういうバンドなんだ」と、バンドのカラーがわかってもらえるとか、僕らのファンが見ても面白いと思えるようなリミテッドアイテムを作りたいというところからアイデアが生まれました。

──ブックレットの内容については、どのように決めていったんですか?

チヨ まずはどんなコンテンツを盛り込むかを話し合って、そこからMargt(King Gnu / millennium paradeの常田大希が主宰するクリエイティブレーベル・PERIMETRON所属のクリエイティブユニット)に本のデザインと監修をお願いして、ちあきちゃんにイラストを描いてもらうという流れでした。

──原田さんには、どのようなオーダーを出したんですか?

チヨ タイトルが「HAPPY BIRTH DIE」なので、“生まれ変わり”とか“輪廻転生”というキーワードをコンセプトにお願いしました。

SPARK!!SOUND!!SHOW!!と原田ちあき。取材中の様子。

原田 そうですね。そのあとにMargtさんがいろいろとアイデアを練ってくださって、何を描くのかも全部ディレクションしてもらいました。悪魔の赤ちゃんとか今まで描いたことのないオーダーをいただいて、みんなと擦り合わせていくのが楽しかったですね。あとは私が普段描いている女の子のイラストも採用してくださって、私の作品に対してのリスペクトも感じられてうれしかったです。

タナカ 女の子のイラストに関しては、まさに原田ちあきブランドの代表やからさ。俺らからすれば貸していただいた、みたいな感覚やったよな。悪魔の赤ちゃんが原田ちあき作だったとは今知った。あれはめっちゃナイス!

──原田さんのイラストのほかには、インタビューページやコラージュ写真など、まるでカルチャー雑誌のようにコンテンツが充実してますよね。

チヨ そうですね。あくまでブックとして楽しんでもらいたいから、このページを見てください!というよりも全ページを読んでくださいって感じですね。カルチャー誌っぽさもあれば、ユーキのライブレポートやツアー中の写真も載せているので、ツアーパンフレット的な見方もできる1冊だと思います。

タナカ 確かにページ単体という楽しみ方じゃないかもな。

原田 あと、表紙でMargtさんが私の絵を曼荼羅みたいにしてくださったのはうれしかった。

チヨ せっかくなので、今回は表紙のポスターも付けているんですよ。それもめちゃめちゃオススメです。