SPARK!!SOUND!!SHOW!!|クリエイティブユニット・Margtとのタッグで広がったスサシの世界

「STEAL!!」に込めたそれぞれの正義

──今回の「STEAL!!」でも2組はタッグを組んでいますが、このジャケットはどのような意図で作られたのでしょうか?

Arata 打ち合わせをしたときに、「アウトレイジ」の「全員悪人」じゃないけど、何が悪で何が正義かもわからない「それぞれの正義」という話をユーキくんがしていたんです。じゃあ、その感覚を伝えようということで、人を助ける職業のお医者さんが、金儲けのために人を解剖していたっていう設定で、人間の内臓がゴールドになっている画を思いついて。人間が金(かね)になっているというイメージでジャケットを作りました。MVだと極悪そうなお医者さんをユーキくんに演じてもらっています。特に最近、打ち合わせの段階でユーキくんから出てくる言葉がめちゃくちゃキャッチーで面白いんですよね。それをキーワードにしながら掘り下げて、アイデアを出していくことも多いです。

Isamu ビジュアル面について直接的に言うわけじゃなく、その曲を作った経緯や歌詞の意味を、わかりやすい言葉で伝えてくれるからね。

──「STEAL!!」はアニメ「アクダマドライブ」の主題歌です。タナカさんはこの曲の歌詞を書くとき、どのようなことを考えていたのでしょう。

タナカユーキ(Vo, G / SPARK!!SOUND!!SHOW!!)

タナカ 「アクダマドライブ」のタイアップというのが前提にあって、このアニメは出てくるキャラクターは全員悪役なんですよね。で、考えてみたときに、世の中に「正義」とされるものがあり、それとは別の人たちは「悪」と呼ばれるけど、別に「悪」と呼ばれる人だって、それを自分たちの正義としてやっているんですよね。国が定めるルールからは違反しているかもしれないけど、その「悪」を貫き通すことが、その人の決めた生き方かもしれない。そもそも、ルールを作ったのだってずっと昔の人じゃないですか。その昔の人だって、同じ人間なわけですよね? 同じ人間同士なら、善も悪もないんちゃう?っていう。とりあえず「やったらダメ」と言われているからやらないことってたくさんあるけど、その人がその人なりに考えての行動なら、それはその人にとっての正義になるのかもしれない……そういうことを考えたときに、みんなが自分の視点でそれぞれの人生を生きればいいんじゃないかと思って。結局、決めるのは自分やから。だから、Arataが言っていた金目当てのお医者さんも、それがその人の生き方なら、それでいいと思うんですよ。そういうことをMargtの2人とオンライン上で打ち合わせしたら、言葉を使わず、ビジュアルとしてメッセージを込めて作ってくれました。

──作曲はタクマさんですが、どのようなことを考えながら作りましたか?

タクマ ……考えなんてあると思いますか?(笑)

──ないですか(笑)。

タクマ(Key, G, Cho / SPARK!!SOUND!!SHOW!!)

タクマ まあ、「アクダマドライブ」に合わせているわけではないんですけど、自分なりに「アニメのオープニングってこうっしょ?」という感じで作りました。

タナカ 「ヤンキーが思うアニメテイスト」っていう感じやね(笑)。いい具合に捻じれてる。

タクマ あと、いつもはユーキと会って曲を作っているんですけど、今回は自粛期間中で会えなくて。それが大変でしたね。会って作業をしていないから作りにくいんだっていうことにもお互い気付かず(笑)。がんばってiPhoneを使ってメロを作ったりしたんですけど、それで苦労したりして。そもそもユーキはスマホやパソコンを曲作りに使うタイプではなかったけど、この自粛期間でMacを買って曲作りを始めたんですよ。今後、ユーキが1人で打ち込みで作った曲とかも出てくると思います。

無視できないコロナ禍の変化

──Margtはコロナ禍の自粛期間において、クリエイティビティに変化はありましたか?

Isamu 僕、4月がめちゃくちゃ暇やったんですけど、ずっと家にいて思ったのは、こういう暇な時間はめっちゃ大切やなって。しばらく映画を観たりマンガを読んだりすることもできていなかったから、この自粛期間は率先してインプットしていました。それがアウトプットに直接生きているかはわからないけど、「そういえば家、好きやったな」と思い出せたのがよかったですね。あとはやっぱり、自分たちが作るものにおいて、無視できないことが増えたと思う。コロナ以降、Black Lives Matterの話とかもそうだけど、そういうことをまったくなかったことにして作品を作ることは、今後ないんじゃないですかね。それくらい、何かしら作品に影響は出てくると思うんですよ。

Arata そうやね。コロナとか、Black Lives Matterとか、オリンピックの中止とか、ビッグニュースが続きすぎて、世紀末感あったなと思うんですよ。「もう地球終わるんちゃうか」というソワソワ感というか。俺としても「これ、ヤバいんじゃねえ?」「仕事なくなるんちゃう?」という、ちょっとした不安はあって。思えばコロナ以降、自分が作るビジュアルに、青空とかをめっちゃ使うようになったんですよね。「スサ死e.p.」もそうだったし、TENDOUJIの作品とかもそうだけど、「また青空や」って。それは意識的なことではなく、自分でもあとから気が付くくらいなんですけど。深層心理に、きっと何かがあったんでしょうね。

Margt

タナカ わかる。俺も自粛期間中は、あの閉鎖的な状況だったからこそ、「花」とか「空」みたいなワードをめっちゃリリックに使いたくなってた。実際、自粛中はベランダに出ることが多かったし、自分で花を買ってみたりもしたし。“外”を感じたかったんだと思う。

──スサシの作品の世界観においても、やはりコロナ以降の社会の在り様は反映されていくものですか?

タナカ 今、Margtの2人の話を聞いていて思ったんですけど、俺も反射的にリリックに反映されるものはあったなと思うんですよね。自粛期間中にチヨも曲を作るようになって、その曲にタイトルを付けたんですけど、それが「イエロー」というタイトルで。これは、肌の色のことを言っているんです。オリンピックがどうこうっていうこともラップの中で言及したりしているし、やっぱりMargtの2人が言うように、無視はできないんですよね。意識せずとも、作品に出てくるものはあると思う。それに、俺らがそういうことを作品にして残すことで、お客さんが知って、考えたりしてくれたらいいなと思うし。

──そうですよね。

タナカ 世界で起こっていることを意識しながら生きていくのか、それとも、まったく世の中のことには触れずに、中身のないことだけを言い続けてお客さんとピースになっていくのか……自分はどっちかなと考えると、ちゃんと世の中の出来事についても交えながら歌っているほうが、感情を込めて表現しやすいなって思う。俺は確実に、何年か前に比べるとニュースを見ることが増えたし、Twitterとかから世の中の状況を知ることも多くなったんですよ。そこから見えること、思うことは、意識せずとも楽曲に表れるのかなと思います。

SPARK!!SOUND!!SHOW!!

チヨ あと僕らはバンドなんで、こういう状況になると必然的にライブもできなくなるし、影響はめちゃくちゃあって。だからこそ、前よりもメンバーで頭を使ってディスカッションすることは増えたんですよね。

タクマ 最近、チヨとユーキと俺の3人でよくディスカッションしてるんですよ。

──3人で?

チヨ 3人ですね。僕が酔っぱらった勢いで思いついたことを、そのときのテンションで「これ面白くない?」とユーキとタクマに相談して、そのアイデアを3人で揉んでいって。

タナカ あの酔っ払い電話かわいいよな(笑)。今までそんなことやらなかったけど、コロナ期間だからこそ、アイデア出さないとっていうのもあったし、3人でよく話し合ってますね。

──3人で?

タナカ 3人っすね。

──イチローさんは……。

イチロー(Dr, Cho / SPARK!!SOUND!!SHOW!!)

イチロー 僕は……アイデアがまとまった段階で、業務連絡がきます。僕が知るのはスタッフよりもあとですね。

一同 (笑)。

チヨ まぁ、イチローはファンタジスタなんで、アイデアが固まっていない状態で伝えちゃうと、そっちに引っ張られちゃうんですよ。でも固まったものを投げると、完璧に仕上げてきてくれるんです。

イチロー そう、そういうことです。

タクマ チヨ、フォローうまいな(笑)。