Souにとっての「深層」
──アルバムの話も伺わせてください。初めてのオリジナル曲が収録されるアルバムを、Souさんはどういう作品にしようと考えたんですか?
僕は“歌ってみた”をやり続けてきたわけですけど、作詞作曲にも初めて挑戦して、もうワンステップ上にいけるんじゃないかと思っていて。その分岐点というか、折り返し地点となるのが今回のアルバム「深層から」なんです。
──5月に行われたワンマンライブ「Salir」のタイトルは「出発」を意味するスペイン語でしたね
そう。ワンマンライブのイメージとも共通するものがあります。アルバムは「Salir」の続編というか、同じ思いを持って作った作品ですね。だから今まで活動してきた僕の象徴とも言えるボカロ曲のカバーも入っていますし、これから僕がやりたいことのビジョンが見えるようなオリジナルの新曲も入っているんです。
──「深層から」というタイトルの由来は?
1stアルバム「水奏レグルス」(2015年12月発売)の流れを汲んで海のイメージを踏襲したかったのと、自分が活動してきたインターネットの世界をアンダーグラウンドなものと捉え、そこから浮上していくようなテーマにしたくて。インターネットのカルチャーがアンダーグラウンドであるかどうかは置いといて、自分がこれから上に上がっていくようなイメージを持ちたかったので「深層から」という言葉を選んだんです。僕は自分の音源に毎回「Sou」という言葉を入れているので、「深層」という言葉がピッタリだなと。
──そういえば「水奏レグルス」のアートワークでは海の奥底のようなビジュアルが描かれていました。
そこから今度は海面に向けて上がっていく絵にしたくて。これから始まるんだ、という明るい兆しをビジュアルで表現したかったんです。
Eveくんになら全部任せられる
──アルバムにはEveさんの楽曲「トーキョーゲットー」のカバーと、Eveさん書き下ろしの新曲「グレイの海」が収録されています。数あるEveさんの楽曲から「トーキョーゲットー」を選んだのはなぜですか?
Eveくんの曲はわりといろいろ歌っているんですけど、「トーキョーゲットー」と「sister」をまだ歌ってなかったんです。アルバムにはまだ歌っていないEveくんの曲を入れようと思っていたので、必然的にこの二択だったんですけど、どっちを入れるかはけっこう悩んで。最初は「sister」を歌う気満々だったんですけど、わりと日によって「トーキョーゲットー」を歌いたくなるときも多くて、最終的に決めるときに歌いたかったほうとして「トーキョーゲットー」を選びました。
──いろんな作家さんの曲をカバーする中で、Eveさんの曲の特徴はどんなところにあると捉えていますか?
“歌ってみた”をやっているとボカロのカバーをすることが多くなるんですけど、Eveくんの曲は明確にボカロの曲とは違う。完全に邦楽ロック寄りのサウンドというか。だからほかの曲を歌うときとは心構えが変わるんですよね。
──書き下ろし曲をお願いする際に、何かオーダーはしたんですか?
オーダーはまったくしてなくて、完全にお任せしました。「蒼」(2018年2月発売のコラボアルバム)のときもそうなんですけど、信頼しているからこそ、オーダーはいらないかなと思っていて。Eveくんになら全部任せられるというか。
──新曲「グレイの海」は、Eveさんのアルバム「おとぎ」以降のサウンドを感じさせる楽曲ですよね。
そうなんですよ。トラップ系のリズムと電子ドラムが入っていて、Eveくんが直近でリリースした「闇夜」に近いサウンド、要は最新のEveくんの曲が届いたのがうれしくて。僕が期待していた以上の、ベストアンサーが返ってきた感じがしました。
「ライブのことは無視して、なんでもしてください!」
──アルバムにはEveさんのほかにも羽生まゐごさん、sasakure.UKさん、蝶々Pさんが書き下ろしの新曲を提供しています。この人選はSouさん本人が?
そうですね。もう自分が曲を書いてほしい人にお願いしました。羽生まゐごさんには、以前ごはんに行ったときに「ぜひ曲を書きたい」とおっしゃっていただいていたんです。この機会に絶対お願いしたいなと思って。羽生さんにはアルバムが「深層」をイメージしてる、ということを伝えていたんです。そうしたら「鯰」という魚の曲を書いていただいて。
──「鯰」は羽生さんの持ち味である和テイストなサウンドが盛り込まれた曲に仕上げられています。
さすがですよね。いろんなボカロPの方々の曲を聴いてきましたけど、羽生さんのような曲を書いている人って界隈に全然いないんですよ。「〇〇っぽい」みたいなものに当てはめられない。「羽生まゐご」というカテゴリのサウンドだと思っています。羽生さんの曲はバラードが多いんですけど、「鯰」は歌詞が詰め込まれていてリズム感がすごく求められる曲なんです。だからノリノリで歌わせてもらいましたし、曲の後半ではコーラスも入ってきてライブで歌うのも楽しそうなんですよね。
──「シンソウ」は有形ランペイジさんの提供曲ですが、昨年リリースされたコラボアルバム「蒼」ではsasakure.UKさんの「tig-hug」をカバーしていましたよね。
はい。「蒼」のときはずっと歌いたかったけどうまく歌えていなかった「tig-hug」を収録してみたんですけど、今回は思い切ってsasakureさん率いる有形ランペイジさんに書き下ろしのお願いをしてみたんです。曲作りをお願いしたら、「ライブを意識して作るのと、好き勝手に作るの、どっちがいい?」と聞かれまして……。
──どう答えたんですか?
「ライブのことは無視して、なんでもしてください!」って。
──おそらくライブで歌うことになるにも関わらず、好き勝手に作ってもらうことにしたんですね。
なんのしがらみもなく、有形ランペイジさんが僕のために曲を作ったらどうなるんだろうというのが気になっちゃって。ライブのことはライブのときに考えればいいわけですから。
──書き下ろし曲「シンソウ」はどのような出来でしたか?
100点の曲が届きました。曲をお願いするとき、僕が今どういうことを考えているかとか、僕がこれからどうありたいかとか、sasakureさんにいろいろ伝えて「僕の曲にしてください」とオーダーしたんです。そうしたら僕が言いたいこと、表現したいことを的確に曲に詰め込んでくれて。本当に100点の曲です。このメチャクチャ難しい曲が、ライブでどう再現されるのか、楽しみにしててください(笑)。
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「心做し」の対となる曲
- Sou「深層から」
- 2019年7月31日発売 / Virgin Music
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初回限定盤A [CD+DVD]
2916円 / TYCT-69156 -
初回限定盤B
[CD+ブックレット]
2916円 / TYCT-69157 -
通常盤 [CD]
2484円 / TYCT-69158
- CD収録曲
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- 愚者のパレード
- トーキョーゲットー
- ハングリーニコル
- 鯰
- flos
- ノイド
- シンソウ
- 波に名前をつけること、僕らの呼吸に終わりがあること。
- エリカ
- グレイの海
- Q
- 心做し
- 証として
- 初回限定盤A DVD収録内容
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- 「愚者のパレード」MUSIC VIDEO
- 「ノイド」MUSIC VIDEO
- Sou(ソウ)
- 2013年に動画共有サイトに歌唱動画を投稿し、シンガーとしての活動をスタートさせる。 2015年に投稿した動画「【爽快に】右に曲ガール 歌ってみた ver.Sou」は、ニコニコ動画内で222万回以上再生(2019年7月現在)されるなど、大きな注目を集める。同年12月にはデビューアルバム「水奏レグルス」を、2017年9月にはボカロP・ナユタン星人とのコラボアルバム「ナユタン星への爽快列車」を、2018年2月にはEveとのコラボアルバム「蒼」を発表した。2019年3月には初めて作詞作曲に挑戦した楽曲「愚者のパレード」を配信リリース。5月には東京・マイナビBLITZ赤坂にて初のワンマンライブ「Salir」を開催した。また7月にはニューアルバム「深層から」を発表し、8月にはアルバムを携えた東名阪ツアー「深層から見た景色」を行う。
2019年8月1日更新