Sou×武市和希(mol-74)インタビュー|「ことばのこり」に込められた思いを昇華する表情豊かな歌声

Souが7月17日にニューアルバム「センス・オブ・ワンダー」をリリースした。

「センス・オブ・ワンダー」には、三原康司(フレデリック)、mol-74、ポルカドットスティングレイ、稲葉曇、原口沙輔、ナユタン星人ら多彩な作家陣による提供曲や、Sou自身が手がけた楽曲などさまざまなタイプの全12曲を収録。Souの表情豊かな歌声が堪能できる1作になっている。中でも収録曲「ことばのこり」を提供したmol-74は、Souが昔から曲を愛聴していたアーティスト。音楽ナタリーではSouと武市和希(mol-74)にインタビューし、お互いの印象や楽曲提供のオファーの経緯、「ことばのこり」の制作エピソードを聞いた。

取材・文 / 北野創

Souくんの声がすごく好き

──Souさんのニューアルバム「センス・オブ・ワンダー」には、mol-74が楽曲提供した「ことばのこり」が収録されています。お二人はこの曲でご一緒する前から接点があったんですか?

Sou 僕が以前にmol-74さんの「エイプリル」をカバーさせていただいたことがあって。そのときには面識はなくて、シンプルに大好きな楽曲だったので、歌わせていただいたんですけど……。

武市和希(mol-74) それを僕がたまたま当時のTwitterで見かけて。Souくんの存在はそのとき初めて知ったのですが、やっぱり自分たちの楽曲をカバーしてもらえるのはうれしいことなので、「どんなふうに歌ってくれているのかな?」と思って聴いてみたらすごくよかったんですよね。それで僕がTwitterでお礼のメッセージを送って、少しだけやりとりしたというのが最初の接点でした。

Sou あのときは動画をアップしてすぐにメッセージをもらえてすごくうれしかったです。

──Souさんはmol-74の楽曲をよく聴いていたのでしょうか。

Sou はい。mol-74さんの楽曲に出会った時期は、大学生くらいのときに邦ロックにハマって、確かその頃から聴いていました。それこそ最初に知ったきっかけは「エイプリル」で。mol-74さんの楽曲は全部好きなんですけど、オルタナとかポストロックのような雰囲気がありつつ、メロディラインだけ聴いても胸がキュッとなるバランス感がすごくいいなと思っていて。ご本人を前にして語るのは恐れ多いんですけど(笑)。

Sou

Sou

武市 うれしいけど照れますね(笑)。音楽というのは、どこでどんな人が聴いてくれるかはわからないもので、意外な人が自分たちのことを知ってくれていることもあります。しばらく連絡を取っていなかった昔の友達から「聴いたよ」という連絡が来たりもするし。今はネットやサブスクがあるので、いろんな出会いがあるのはいいことだと思うんですよ。そんな中でSouくんが知ってくれて、こうして出会えたことがうれしいですね。

イチかバチかでmol-74に声をかけた

──Souさんとしては、そういったご縁もあって楽曲提供のお願いをしたわけですか?

Sou 正直、最初はイチかバチかで声をかけてみたところがありました(笑)。というのも、僕とmol-74さんは界隈が少し違うじゃないですか。僕の中では、バンドがネット発のアーティストに楽曲を書き下ろすイメージがあまりなかったので、断られてもしょうがないくらいの気持ちでいて。

武市 そうだったんだ。話をもらったとき、メンバー全員、すごく喜んでました。

Sou よかったです!

──先ほどSouさんから「界隈が違う」というお話が出ましたが、今回のアルバムには、フレデリックの三原康司さんやポルカドットスティングレイも参加していて、あえて垣根を越えた取り組みをしたように見受けられます。

Sou 僕はこれまでボーカロイドのシーンで活動をさせていただくことが多かったのですが、一方で、邦ロックやいろんな音楽を聴いてきた過去があって。これまでのアルバムではボカロP以外の方から楽曲を提供してもらう発想があまりなかったのですが、よくよく考えたら同じ「音楽」だよなと。今はネット発の音楽も普及して、垣根がなくなってきているように感じているので、今回、僕が好きなバンドの方たちにも声をかけさせていただきました。

武市 ここ数年、バンド界隈でも、例えばヒップホップのアーティストをフィーチャーしたりとか、ジャンル的な垣根を越えて1つの作品を作ることが増えているので、Souくんの発想は今っぽいなと思いますね。「センス・オブ・ワンダー」を聴かせてもらって、いろんな要素が入っているけど違和感はなかったですし、むしろSouくんというボーカリストがすべてをつないでいる感覚があって。いちリスナーとしてすごくいいアルバムだと思いました。

Sou うわあ、めっちゃうれしいです……!

──mol-74としても、今回のような楽曲提供という機会を含め、ジャンルの垣根を越えたコラボレーションに興味があったのでしょうか?

武市 そうですね。過去にも女性ボーカルユニットのCYNHNさんの曲や映画「サヨナラまでの30分」の劇中歌などを提供させていただいたことがありますし、僕はジャンルに対して閉鎖的な考えはなくて。もちろん自分たちが好きだと思う人とやりたいという前提はあるのですが、いい化学反応が起きそうなアーティストとのコラボはワクワクしますし、Souくんから楽曲提供のお話をもらったときも、ネガティブな感情は1ミリもなかったです。それは僕だけでなくメンバー全員が同じ気持ちだったと思います。

mol-74

mol-74

──Souさんとご一緒することでいい化学反応が起こりそうな予感があった?

武市 ありました。まず、僕はSouくんの声がすごく好きで。以前、Zepp Nambaのライブにメンバー全員でお邪魔させてもらったのですが、ライブでの歌声も素晴らしかったですし、楽屋で挨拶をさせてもらったときの話している声もすごくいいんですよね。今もお話させてもらっていますけど、「めちゃくちゃいい声やなあ」と思いながら聞いています(笑)。

Sou 照れますね(笑)。

武市 正直な話をすると、僕はボカロの楽曲をあまり通っていなくて、数曲くらいしかわからないんですよ。でも、そういうジャンル云々ではなく、単純にSouくんの声が好きなので、「自分たちの楽曲にSouくんの声が乗ったらどうなるんだろう?」というワクワク感がありました。

Sou さっきから照れるお言葉ばかりです(笑)。