SKE48の通算30枚目のシングル「絶対インスピレーション」がリリースされた。
このシングルでは前作で一度選抜メンバーから外れた9期生・青海ひな乃を、初めて表題曲のセンターに抜擢。28th、29thシングルではSKE48最年少の林美澪がセンターを務めたが、今作も次世代メンバーの台頭が一番の注目ポイントになっている。このほか最近のSKE48は、バラエティ番組などで活躍し、高い知名度を持つ須田亜香里の卒業、小室哲哉がプロデュースを手がけるチームSオリジナル新公演のスタートなど話題が盛りだくさんだ。
音楽ナタリーでは新センターであるチームSの青海、今年からチームKⅡのリーダーを務めている7期生・太田彩夏、将棋や歴史など多彩な趣味を生かして活躍しているチームEの6期生・鎌田菜月の3人にインタビュー。それぞれのトピックについて思う存分話してもらった。
取材・文 / 小野田衛撮影 / 藤田二朗(photopicnic)
さよなら須田亜香里! 至近距離で目撃した“凄味”、伝えたい“感謝の気持ち”
2009年の加入以来、SKE48ひと筋で活躍してきた須田亜香里がとうとうグループを去る。ニューシングルType-Aのカップリングには須田の卒業ソロ曲「私の歩き方」も収録。グループ随一の知名度を誇る“SKE48の顔”を失う今、メンバーたちは何を思うのか。
──須田亜香里さんの卒業はSKE48にとっても非常に大きな出来事だと思います。一緒に活動してきたからこそ気付いた意外な一面などはありますか?
太田彩夏 うーん、難しいなあ。でも、確かにファンの人がイメージする亜香里さんと、実際に私たちが見ている姿は違うところもあると思うんですよ。
青海ひな乃 個人的にすごく印象に残っているのは、ラジオに2人で出演したときのこと。自己紹介で「どうも、青海ひな乃です」と普通に話したら、亜香里さんが「ん?」って違和感を覚えたみたいなんです。「それじゃ聞き取れないかも。名前、覚えてもらえないよ」と指摘してくれて。
鎌田菜月 えっ、どういうこと?
青海 私も最初は意味がわからなかったんです。でも、亜香里さんに言われて冷静に考えてみると、「あおうみひなの」って母音が多いし、確かに一発じゃ聞き取りづらい響きなんですよね。意識して口を開かないと伝わらないんです。その時点で私、デビューして3年目くらいだったんですけど、それまで亜香里さん以外は誰も指摘してくれなかった……というか、気付きませんでした。
太田 すごい話だね、それは。
青海 特にラジオだと顔も見えないし、表情も伝わらないじゃないですか。声だけで勝負しなくちゃいけないのに、自分の名前も聞き取ってもらえないようじゃ話にならないって亜香里さんは言うんです。なんというか、意識が違うなって圧倒されました。
太田 普段から地上波のテレビ番組にバンバン出ている人だから、視野が広いんだと思う。どうしたら世の中に届くのか、人一倍考えているだろうし。
青海 劇場に来てくださるファンの方は、ある程度、予備知識を持ってると思うんです。だけどもっと多くの人に知ってもらうには、そこに甘えてちゃダメなんですよね。「あうみ? おうみ? なんか自己紹介してたけど、名前がよくわからないな」って思われちゃうから。亜香里さんからは、こうも言われました。「いい? 青海という名字は珍しいんだよ? ということは、それってひな乃ちゃんの武器なんだから」って。それを聞いたら、3年間何も考えずに「青海ひな乃です」って自己紹介していたことが急に恥ずかしくなっちゃって……。
鎌田 いろいろ考えさせられる話だね。それを聞いて思い出したのは、かれこれ7年くらい前の公演。今、私はデビューして10年目なんだけど、SKE48に入って2、3年目くらいのタイミングだったかな。公演が終わってから、亜香里さんに聞かれたんですよ。「鎌田、なんでカッコいい曲のときにまぶしそうな顔をしているの?」って。私はもともと垂れ目だから、クールな顔をしようと思ったら睨みつけるような表情になっちゃうんです。でも、だからと言って「まぶしくないです。睨んでもいません」と主張しても言い訳のように聞こえちゃうんですよね。だって私たちのお仕事は、観る方がどう感じるかがすべてで、正直、こっちの事情なんて知ったこっちゃないわけで。
太田 うーん……確かにその通りだけど、難しいところですよね。
鎌田 それで亜香里さんからの具体的なアドバイスとして、まず鏡の前に立ち、マスクをした状態で表情をつける練習をしたほうがいいと言われました。要するに目の動きだけで感情を伝えるトレーニングをするべきということです。そこからは目で表情をつけることを習慣化していきました。例えば鏡の前でドライヤーをかけるとき、1曲口ずさみつつ目で表情をつけてみたり。そういうことを繰り返していたら、驚くことに表情以外の部分でも効果が出てきたんですよ。私はダンスが苦手なんですけど、最近は「なっきぃのダンスは表現力があるよね」とファンの方から言っていただけることが増えたんです。はっきり言って、全部、亜香里さんのおかげですよ。
──須田さんって後輩をスパルタで鍛えるようなイメージは皆無ですが、話を伺っているとメンバーの観察力が尋常じゃないですね。
鎌田 いや、本当にそうなんですよ! 何かあったときに相談できる先輩として最初に頭に浮かぶのが亜香里さん。例えばアイドル、特にAKB48グループは黒髪ロングのイメージが強いじゃないですか。自分が髪を染めようとしたときも、亜香里さんに真っ先に相談しましたからね。
──事務所への確認が最初ではないんですか(笑)。
鎌田 本来だったらそうするべきなんですけど(笑)。それくらい亜香里さんを信用しているって言いたいんですよ。
青海 すごくわかる! ついつい頼りにしちゃうんですよね。
鎌田 本来、亜香里さんは自分が甘えたいタイプだと思うんです。だけど今のSKE48ではお姉さん的な役割をどうしても求められるから、すごく気張っている気もするんですよ。卒業したら肩の力を抜いて、甘えん坊な亜香里さんに戻ってほしいですね(笑)。
太田 この2人と比べると、私は亜香里さんとの関りがそこまで深くはないからエピソード的にも薄くなっちゃうんですけど、姿勢をビシッと正すことの大切さは須田さんに叩き込まれました。私はもともと猫背なので、少しでも気が緩むとすぐだらしない姿勢になってしまうんです。実際、須田さんからはよく注意されました。口で言われなくても、須田さんの姿を見るだけで「そういえば姿勢!」って意識するようになったんです。
鎌田 確かに亜香里さんは常に姿勢がビシッとしているもんね。バレエをやっていたことも大きいんだろうけど。
太田 一度、後ろからポンポンと肩を叩かれたことがあるんですよ。「あっ、須田さんだったんですか!」って振り向いたら、「誰か姿勢がいい子がいるなと思ったら、あやめろ(太田)だったんだね」と笑いかけてもらえて……。軽い気持ちで話しかけてくれただけかもしれないけど、私、それがものすごくうれしかったんですよ。なんだか須田さんに認められた気がして。
──いいエピソードですね。世の中的にも「SKE48といえば須田亜香里」みたいなイメージを持っている人も多いと思います。知名度がズバ抜けていますから。
青海 まったくもってその通りなんですけど、だからと言って私たちも亜香里さんにおんぶに抱っこではダメですからね。「安心して卒業してください」と言いたいです。10年以上も引っ張ってくれた亜香里さんがいなくなるからこそ、新しいSKE48を作るチャンスだとも思っていまして。私たちらしいやり方で、新しいSKE48を見せていきたいと今は意気込んでいます。
鎌田 今まで松井玲奈さんや松井珠理奈さんが中心になっていた時代もあったし、亜香里さんが引っ張っていく時代もありました。でも間違いなく言えるのは、SKE48はこれからも続いていくということ。最近だったら最年少メンバーの林美澪ちゃんが「Seventeen」の専属モデルになりましたし、個々の力でSKE48をもっと広められたらと思うんです。魅力的なメンバーがそろっていることは自分たちでもすごく感じますから。
新センター・青海が語るファンへの思い、鎌田&太田が解説する“ひな乃の注目ポイント”
「絶対インスピレーション」でセンターを務めるのは、21歳の9期生・青海ひな乃。2018年に加入し、若手ユニット・カミングフレーバーで頭角を現した彼女が、表題曲でセンターに立つのはこれが初めてだ。青天の霹靂だった発表の瞬間を本人が振り返りつつ、鎌田と太田が新センターの知られざる注目ポイントを解説してくれた。
──ファンからも驚きをもって迎えられた青海さんのセンター抜擢ですが、最初に聞いたときはどう感じましたか?
青海 それがですね、スタッフさんから「ファンクラブの撮影があるから来て」と呼ばれて指定された部屋に着くと、偉い人たちがやけにたくさん集まっていたんですよ。当然、これはただ事じゃないなって気付きますよね。「ヤバい! 何か怒られるようなことしたっけ?」とか焦っちゃって、うろたえながら一度ドアを閉めました(笑)。
鎌田 わかる! 偉い人が集まっていると、「怒られる!?」って最初に頭によぎるよね(笑)。
青海 そこで言われたのが「選抜に復帰したよ」、それから「次のセンターは青海だから」ということ。私からするとダブルでの驚きだったから、もう茫然としちゃって……。正直、こうして取材を受けている今でも実感が湧かないくらいなので、そのときは半信半疑で本当に唖然としていました。やっとのことで口にした言葉が「……嘘ですよね?」でした(笑)。
──レコーディングやミュージックビデオの撮影を進める中、徐々に気持ちにも変化が生じましたか?
青海 そうですね。とにかく自分の中で大きかったのは、前回のシングルで選抜から落ちたことなんです。それによってファンの方を悲しませてしまったから、すごく悔しくて……。今回、選抜復帰に加えてセンター就任という大きな“おまけ”もついてきて、「これでファンの方に恩返しができたかな」という気持ちが一番にありました。今思うと、選抜落ちしたことで得るものもたくさんあったんですよね。ファンの方たちの温かい応援に支えられていることに改めて気付けたし、そのためにももっとがんばらなきゃと考えるようになりました。
──センターとしての責任感は感じてます?
青海 「私が引っ張っていきます!」という覚悟みたいなものは正直言ってないんですよ。というのも、今のSKE48には私以外にも素敵なメンバーがたくさんいて、「みんなで新しいSKE48を盛り上げていこう!」と盛り上がっている状態なので。みんなが覚悟を持ち、みんなが責任感を持つのが今のSKE48。もちろん私だって後輩に対しては、きちんとした背中を見せていきたいという気持ちはあります。今まで先輩たちが私にそうしてくれたように。
──読者の中には、まだ青海さんの魅力を知らない人もいるかもしれません。太田さんと鎌田さんのほうから改めて新センターのチャームポイントを解説していただけますか?
鎌田 かしこまりました! そういうことでしたら、まずはひな乃の腹筋に注目してください! 見事にバッキバキですから。
青海 いきなり腹筋の話から入るのかー(笑)。
鎌田 シングル表題曲としては初センターですけど、すでにほかの曲でセンターはやっていて。その姿がめちゃくちゃハマっていたんですよ。真ん中が映える人物。なんというか、華があるんですよね。理屈を超えた吸引力がある。これは申し訳ないけど写真や動画じゃ伝わりきらないと思うんです。AKB48グループは会いに行けるアイドルなわけですし、実際にひな乃のことを見にきていただけたら、そしてひな乃の腹筋と存在感を実感していただけたらと思います!
青海 マズい。ここまで褒められると、逆になんだか気まずくなってくる(笑)。
鎌田 最初から華があるのは事実なんですけど、同時に努力家でもあるんですよ。そこがすごい。「あれ? 青海ちゃんが戻ってこないね」という話になったとき、同期の子が「まだレッスン場で鬼練しています」と教えてくれたこともありますし。
──素晴らしい! では、太田さんからもお願いできますか?
太田 私にとってひな乃は後輩でもあるんですけど、学年としては同じだから親近感が沸くんですよね。だけど最近は、憧れの感情のほうが強くなっているかもしれない。特にこの前のチームSの新公演では、センターを務める姿が本当に輝いていて……。人を惹きつける力の強さにビックリしました。だから今回のシングルでセンターになったのも、私の中では驚きはないんですよ。妥当だなっていうのが正直な感想。言葉にするのは難しいんだけど、独特のオーラがあるんですよ。
青海 フフフ……うれしいねー。でも実際、私も根拠のない自信を持ちながら踊っていますから(笑)。
太田 そういう気持ちがパフォーマンスに出るんだろうね。
鎌田 それはあると思う! なにしろ圧倒的な“陽属性”ですから。月じゃなくて太陽。日陰じゃなくて日向。
太田 性格的にも怖いもの知らずだしね。でもセンターに立つ人って、そういう部分も大事じゃないですか。周りをパっと明るく照らす、素晴らしいセンターだと思います!