SixTONES初のドラマタイアップ曲やライブ音源を含む7thシングル「わたし」を全曲レビュー

SixTONESの7thシングル「わたし」がリリースされた。

表題曲はメンバー松村北斗が出演するカンテレ・フジテレビ系ドラマ「恋なんて、本気でやってどうするの?」の挿入歌。4月18日の初回放送時に予告なしでオンエアされ、視聴者やSixTONESファンをざわつかせた。

音楽ナタリーではSixTONESにとって初のドラマタイアップ曲となる表題曲や6月2日に終幕したアリーナツアー「Feel da CITY」のライブ音源を含むシングルの初回盤A、B、通常盤の全収録曲をレビュー。そこには従来の音楽スタイルに固執することなく新たな表現力を獲得しようとする6人の気概が表れていた。

文 / 寺島咲菜

今年デビュー3年目を迎えたSixTONESは1月にアリーナツアー「Feel da CITY」をスタートさせたあと、2ndアルバム「CITY」をリリースし、3月には6thシングル「共鳴」を発表。その活動は順風満帆そのものと言える。またジェシーがイルミネーション・エンターテインメント製作のミュージックエンタテインメント「SING/シング:ネクストステージ」の吹替版でMISIAとデュエットし、京本大我がNHK-FM「今日は一日 ミスチル30周年三昧」でMr.Children「and I love you」「others」をカバーするなど、個々の才能もクローズアップされている。4月には6人そろってテレビ朝日系「題名のない音楽会」に出演。「世界一長寿のクラシック音楽番組」としてギネス認定された伝統ある同番組において、メンバーはオーケストラをバックに堂々たるパフォーマンスを見せた。その確かな実力で他アーティストからも一目置かれるSixTONESの7thシングル「わたし」はどんな作品に仕上がったのか。表題曲から順に紹介していく。

“わたし”の中で揺れる感情

「わたし」※全仕様共通の表題曲

ジャニーズJr.時代に「Amazing!!!!!!」を発表して以降、クール / ワイルド路線を軸に独自の音楽性を示してきたSixTONES。しかし表題曲「わたし」ではそういったスタイルにとらわれず、変化を恐れることなく新たな音楽と向き合う6人の姿が垣間見える。

「わたし」は「有り得ない」という強く断定的な言い回しで始まるものの、“あなた”に思い焦がれる“わたし”の繊細な心情が描かれていくラブバラード。「不確かなもんに 乱されたくないわ」と恋愛に否定的なスタンスをとりながらも「わかってはいるよ それでも止められないの」と本心を吐露する“わたし”が「なんだか“わたし”が わたしじゃない」と困惑する様は、「僕が僕じゃないみたいだ」(2021年2月発売のシングル曲)で描かれている主人公“僕”の姿ともリンクする。「わたし」では“あなた”との恋に逡巡する“わたし”の葛藤がつづられているが、ジェシーが歌う締めくくりのパート「“わたし”を 奪っていく」には主人公自身が恋に落ちる状況をどこか他人事のように受け入れていく様子がうかがえる。作詞、作曲、アレンジはSixTONES楽曲ではすっかりお馴染みのSAEKI youthK。ピアノを主体とした叙情的なサウンドにメンバーの湿り気のある艶っぽい声が重なる。

ワンカットで撮影されたシーンが象徴的なミュージックビデオも、公開と同時にたちまち話題を呼んだ。アイドルの代名詞とも言える笑顔を一切封印し、楽曲の世界観をドラマチックに演出する6人。前作「共鳴」に続いてダンスクルー・GANMIが手がけた振り付けを、SixTONESは美しくも儚げな表情で表現している。特筆すべきは松村北斗と田中樹、ジェシーと京本大我、髙地優吾と森本慎太郎がそれぞれペアとなるサビのダンスで、“わたし”の中に共存する相対する感情を表しているかのよう。センチメンタルな余韻があとを引く、SixTONESの新たなバラードソングが誕生した。

混沌とした映画の世界へ

「シアター」※初回盤Aカップリング曲

過去にもSixTONESの楽曲に携わったことのあるKOUDAI IWATSUBOが作詞、KOUDAI IWATSUBOとKuwagata Fukinoが作曲、Naoki ItaiとKuwagata Fukinoが編曲を担当した、ヒップホップの要素も織り交ぜられた重厚なロックチューン。英語と日本語を自在に交錯させながらサビで高揚に導く流れはまさにSixTONESの十八番だ。躍動感のあるバンドサウンドに絡みつくボーカルはどこかスリルをはらんでおり、そこにSixTONESらしさがあふれている。6人が誘うカオティックな映画の世界に身を委ねてみよう。

奇抜なダンスに歓喜、ライブの起爆剤となったキラーチューン

「WHIP THAT -Live from "Feel da CITY"-」※初回盤Bカップリング曲

ジャニーズJr.時代を代表するキラーチューン「RAM-PAM-PAM」(2021年1月発売「1ST」初回盤A[原石盤]収録)に代わって「Feel da CITY」ツアーのセットリストに組み込まれたトランスナンバー。ライブでは6人がエフェクトの効いたボーカルでオーディエンスを煽り、型破りなオリジナルダンスを披露するなどして、会場のボルテージを引き上げた。

アリーナ中に響き渡る“永遠”のハーモニー

「Everlasting -Live from "Feel da CITY"-」※初回盤Bカップリング曲

「題名のない音楽会」でも歌われた、豊潤なハーモニーが染み渡るバラードソング。この曲を聴けば、6人がひたむきに音楽と向き合い、誠実に歌声を届ける姿が自ずとイメージできる。歌詞には温かなメッセージがちりばめられているが、特に「変わりはしない 終わりはしない When I close my eyes The memories keep on shining bright」というフレーズは、変容する現代において多くの人々の心に光を灯すだろう。

本編ラストに生まれたピースフルなひととき

「Good Times -Live from "Feel da CITY"-」※初回盤Bカップリング曲

ツアーの本編を締めくくる、英語詞がメインのゴスペル風ナンバー。観客のハンドクラップに包まれながら、6人が代わる代わるパートを回し、サビで朗らかな歌声を重ねるパフォーマンスはライブ終盤をドラマチックに彩った。

あふれ出すSixTONESの“オンガク”愛

「オンガク」※通常盤カップリング曲

SixTONESが“オンガク”への思いを真っ向から掲げるポップチューン。結成7周年、デビュー2周年を迎えたグループが今後もアーティストとして邁進していく……そんな決意も感じられる。爽快感をたたえた突き抜けるようなメロディや京本の美しいロングトーンは“オンガク”に秘められた無限の可能性を表現しているかのよう。作詞作曲は「わたし」と同様にSAEKI youthKが、編曲は「シアター」も担当したNaoki Itaiが手がけている。

色褪せることのない失恋ソング

「セピア」※通常盤カップリング曲

作詞はKanao Itabashiと日韓の音楽シーンで活躍するMayu Wakisaka、作曲および編曲は「8am」(「CITY」収録曲)にも携わったサイモン・ヤンロフが手がける感傷的なナンバー。ジェシーの心地よいフェイクでスタートし、優美なストリングスやシンセサイザーに乗せて“君”を失った“僕”の後悔、過去との決別が歌われている。「マスカラ」(2021年8月発売のシングル曲)や「Gum Tape」(「共鳴」通常盤カップリング)に並ぶ色褪せない失恋ソングとして歌い継がれるだろう。

マーチングバンドと“共鳴”

「共鳴 -Brave Marching Band Remix-」※通常盤カップリング曲

テレビアニメ「『半妖の夜叉姫』弐の章」のオープニングテーマとして注目された、3月発売の6thシングルの表題曲(参照:SixTONESの“6”thシングルを全曲レビュー、「共鳴」というタイトルの必然性と6人の思いを紐解く)が早くもリミックスバージョンで登場。マーチングバンドの参加によって、より厚みを増したアグレッシブなサウンドが胸を熱くする。


「わたし」は異なる内容のDVDが付属する初回盤AおよびB、CDのみの通常盤が用意される。初回盤Aに付属するDVDには表題曲のMVとそのメイキング、MVのソロムービーが、初回盤BのDVDには2ndアルバム「CITY」のレコーディング風景やユニット曲のMVの撮影舞台裏からなる「Documentary of "CITY"」がそれぞれ収録される。

SixTONESがパーソナリティを務めている、ニッポン放送「SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル」。5月21日放送回ではデビュー曲「Imitation Rain」を手がけたYOSHIKI(X JAPAN)が告知なしでゲスト出演し、メンバーとひさびさの再会を果たした。また番組内では「SixTONESの東京ドーム公演が決定した暁にはYOSHIKIがピアノで参加する」という約束が両者の間でなされた。生みの親であるYOSHIKI、リスナーを前にアーティストとしてさらなるステップアップを誓ったSixTONES。6人はどんな景色を見せてくれるのだろうか、今後の活躍から目が離せない。

プロフィール

SixTONES(ストーンズ)

ジェシー、京本大我、松村北斗、髙地優吾、森本慎太郎、田中樹からなる6人組ユニット。ジャニーズJr.時代の2018年3月より公式YouTubeチャンネル・ジャニーズJr.チャンネルで金曜日を担当し、10月に「YouTube アーティストプロモ」キャンペーンに選ばれた。同年11月には滝沢秀明プロデュースによる「JAPONICA STYLE」のミュージックビデオを公開し、話題を集める。2020年1月にSnow Manと同時に1stシングルをリリース。デビュー曲「Imitation Rain」はYOSHIKI(X JAPAN)が手がけた。4月に冠レギュラー番組「SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル」がニッポン放送でスタート。7月に2ndシングル「NAVIGATOR」、11月に3rdシングル「NEW ERA」をリリース。2021年には初のフルアルバム「1ST」のほか、4thシングル「僕が僕じゃないみたいだ」と5thシングル「マスカラ」を発表した。2022年1月に2ndアルバム「CITY」、3月に6thシングル「共鳴」をリリース。1月から6月にかけてアリーナツアー「Feel da CITY」を開催し、6月には7thシングル「わたし」を発表した。