音楽ナタリー PowerPush - シシド・カフカ
チャレンジを繰り返すドラムボーカリストの今
常に変化を求める
──ライブと言えば、ドラムではなくアコースティックギターで弾き語りもされていましたね。2013年の渋谷CLUB QUATTRO公演で歌った「群青」のように、自分の弱い気持ちを真摯に歌う側面もあるんだと、すごく意外に感じました。
「カフカナイズ」(2013年リリースの1stフルアルバム)やそのリリースライブではいろいろな角度から自分を発信してみたんです。そしたら「『群青』が一番好きです」って言ってくれる人がいて。それで「もっと柔らかくいってもいいんだ」とは思いましたね。
──もっといろんな自分を出していこうと。
はい。アルバムで皆さんの反応を見たり、これまで自分がやってきたことを振り返ったりして「もっと大きく舵を取ってみようか」って気持ちになって、アルバム後にはもう一度大きな舵を取りましたね。
──それが昨年の配信曲「ダメかしら?」ですね。ミュージックビデオではドラムを叩かずにダンスを披露していて、その意外性が話題を呼びました(参照:シシド・カフカ、キュートなダンスで「ダメかしら?」)。
「こんな私どうかな」っていう提示の1つとして、みんなに見てもらおうと思ったんです。
──ファンの方々からもらったリアクションはどういったものでしたか?
すごく素直な反応をもらえたと思いました。拒否じゃなくて「シシド・カフカにこんな一面もあるんだ」って受け入れてくれるっていう。すごく心強いなと思いましたね。もちろん楽曲がちゃんとロックしてたからっていうのがあるんでしょうけど。
──ご自身の手応えはいかがでしたか?
「シシド・カフカの音楽」って、生音とデジタルサウンドがすごく上手に調合されているロックだって思っていて。毎回ドラムの音も全部こだわっていて、「ダメかしら?」でもビンテージのドラムを使用してみたんです。だから音楽面で大きくブレてるつもりはさらさらなくて、見せ方としては振り切ってみたけど、音は直線上の1つにある作品のつもりです。
シシド・カフカはまずやってみる
──シシドさんはモデルやドラマ出演などもされていて、よくも悪くも「マルチにいろいろやってる人」という見られ方をされることが多いのではないかと思います。その状況についてご自身ではどう感じていますか?
シシド・カフカでデビューする前は音楽以外の活動を考えていなかったからいろいろやることに最初は抵抗がありましたね。でもモデル業、女優業をきっかけにシシド・カフカを知ってもらえたらそれはありがたいことだと思うようになりました(笑)。それにモデルや演技の世界で一生懸命やっている方々から学べることもあるんです。そう思えるようになったので、楽しくやらせていただいてることのほうが多いですね。お話をいただけるのはありがたい、とりあえずやってみますかって。
──話を聞いていると、シシドさんは「まずやってみよう」って感じで動くことが多いですね。
あははは(笑)。そうですね。二の足踏むことも多いんですけど、なんかいろいろやっちゃってます。ずっと避けてきたものにチャレンジしてみたら「なんだ、意外にいけるじゃないか」「意外に面白いじゃないか」と思えたことが、いーっぱいあったんです。
──いーっぱい(笑)。
あったんですよ。だからチャンスをいただけたもの、興味を持ったものはとりあえず触ってみるようにはしてます。ビキナーズラックでもなんかヒットすれば当然ハマっていきますし、その結果視野が広がったり会話が広がったりってするのはやっぱり素敵なことなので。臆せずやっていきたいですね。
斉藤和義が開けたドア
──今回の「Don't be love」は、斉藤和義さんとのコラボレーションということで、音楽的なチャレンジとしてかなり大きなものと言えますね。
大きかったですね。まさか受けていただけると思ってなかったので。
──そもそもどこからこの話が始まっていたのでしょうか。
ようやくアーティストとしてのシシド・カフカを自分の中で確立できて、ちょっとした自信が持てたところで今だったら先輩方に「どうもシシド・カフカです、一緒にやってもらえませんか」って自分の色を持ち込めるんじゃないかって思ってたんです。それでとにかくセッションがしたいセッションがしたいってずっと言ってて。で、エイベックスに移籍が決まったタイミングで一緒にやってみたいアーティストさんの名前を挙げた結果、斉藤和義さんが受けてくださったっていう。
──今までにない曲調で、シシド・カフカさんの作品という意味でも新しいものになった。これは斉藤さんに具体的な依頼をして生まれたものですか?
いえ。とりあえず和義さんにシシド・カフカっていうのを知ってもらい、私へのイメージを膨らませるという形で好きに作っていただきました。そういう形で作られた楽曲を私自身が聴いてみたかったというのもあったので。
──「Don't be love」は斉藤和義さんならではの繊細で哀愁のあるメロディのナンバーに仕上がっていますね。実際聴いてみていかがでしたか。
意外でした。和義さんの音楽は好きでこれまでも聴いてたんですけど「こう来たか」ってビックリしましたね。この舵の切り方は私だけではできないので、すごくありがたい結果になったなと思いました。
──それを歌うことでシシドさんは新たな音楽の扉を開いてもらったような感覚になった。
そうですね。自分がこういう曲調を選択してこなかったのに和義さんがけっこう簡単に「こっちのドアどう?」って開けてくれたって感じです。面白かったですね。
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CD収録内容
- Don't be love feat.斉藤和義
- Trans fatty acid feat.KenKen(from RIZE)
ほか
CD+DVD盤付属DVD収録内容
- Don't be love feat.斉藤和義(Video Clip)
- シシド・カフカ Session Mini Album
「K5(Kの累乗)」リリース記念ライブ「フミコム」 - 2015年6月17日(水)東京都 TSUTAYA O-WEST
シシド・カフカ
メキシコ生まれ。中学生時代にアルゼンチンでドラムを叩き始め、数々のバンドに在籍したのちにドラムボーカルのスタイルとなり、2012年5月に配信曲「デイドリームライダー」でデビュー。9月に1stシングル「愛する覚悟」をリリースした。以後も長髪を振り乱しながら力強くドラムを叩いて歌うスタイルで注目を集め、コンスタントに作品を発表。2013年9月にはアルバム「カフカナイズ」をリリースした。一方でモデルやドラマ「ファーストクラス」の出演、「新堂本兄弟」へのドラマーとしてレギュラー参加など多彩な活動を展開。2014年9月にはエイベックスへの移籍を発表。4月には配信シングル「Don't be love feat. 斉藤和義」をリリースした。そして6月には「Trans fatty acid feat.KenKen(from RIZE)」など多様なコラボレーションナンバーを収録したセッション・ミニアルバム「K5(Kの累乗)」をリリースする。