音楽ナタリー PowerPush - シシド・カフカ

チャレンジを繰り返すドラムボーカリストの今

ロックとのファーストコンタクト

──ロックを聴き始めたのはいつ頃ですか?

日本に来てからになるんですが、ドラムをきっかけにできた友人たちから「こういう音楽あるよ」って教えてもらったんです。当時はいわゆる青春パンクがすごく流行ってた時期で、私もそういう音楽を聴きながら「あ、こういうのっていいな」ってハマって。そこからはもうカバンをそこらへんに放り投げて制服のまま下北沢の小さなライブハウスへ遊びに行ったり(笑)、CD付きの専門誌を買って音源を聴いたりしてました。バンドだと宇頭巻(UZMK)、10-FEET、あとMONGOL800とかHi-STANDARDも好きでしたね。

──シシドさんの楽曲には8ビートのストレートなロックナンバーが多い印象ですが、そういったロックを知ったきっかけは?

シシド・カフカ

学生時代に知り合った人たちがロック畑の方ばかりで、意図せずでしたけどそういう音楽を身に染みこませる機会がすごく多かったんです。今はリスナーとしていろいろ聴いていますが、いざスティックを持って叩く自分の音はロックがしっくりきます。

──おのずと染み付いていった感じなんですね。

はい。中でも18歳のときに2回り上のお姉さんたちと一緒にロックバンドをやってたんですが、彼女たちが私に与えた影響がすごく大きかったかなと思います。Led ZeppelinやThe Whoが大好きな方々で、練習でもツェッペリンのCDをかけて「このフレーズ今からやるよ」ってその場でコピーするっていう。そうやって鍛錬されていくうちにロックの面白さに気付きました。

──ロックのどういった部分に魅力を感じたのでしょう?

最初は「音の重なり少ないな」みたいな物足りなさは感じてたんですけど(笑)、しばらくすると音が少ないからこそドラムに存在感があって「あ、面白いな」って。それにツェッペリンで言うと、ジョン・ボーナムのドラムを分析してみると自分が持ってないフレーズがたくさんあるって気が付いたので、彼の叩き方を真似し始めた感じですね。いつからかほかのジャンルのバンドで叩いてても「ロックのドラムなんだね」って言われるようになってましたね(笑)。

バンドのドラマーだった自分

──日本に来てからバンドを始めて、最大で8つかけ持ちしてた時期があったと伺いましたが。

シシド・カフカ

18、19歳の頃ですね。周りがドラマー不足で皆さんドラマーを探してたのでもう片っ端から「やりたいやりたい」って手を挙げて、受け入れてくれたバンドに入って。

──なぜそれほど多くのバンドに参加していったのでしょうか?

さまざまな人と音を合わせて経験を積むとか、いろんなフレーズを覚えることを目標にしていて、それを叶えるにはとにかく場数だと思ってたんです。……まあ今思えばちょっと無謀だったというか、8つもやらないで1つひとつ時間をかけて噛み砕けばよかったんですけど(笑)。

──その頃の経験が今どういった形で生きていると思いますか?

技術として如実に表れているのはもちろん、無謀にいろんな音楽にバーッと接した反動で、今は音楽に対する接し方が1つひとつ丁寧になったかなという感じはありますね。1曲のドラムを考えるのに費やす時間が全然違います。

メジャーデビューしても楽しくてしょうがなかった

──いろいろなバンドに参加していた時期のシシドさんは、現在のようなドラムボーカルではなく陰の立役者的なドラマーだった?

シシド・カフカ

はい。ボーカルの人が発する歌、ベースやギターの人が紡ぎだす音をバックアップするっていうイメージでやっていました。だから今よりパフォーマンスは全然派手ではないですし、スポットライトが当たらないのがちょうどよかったですね。バンドでもお客さんにどう聴かせるかっていうよりは、このバンドで自分がどうあるべきかとかばかりを考えていたような気がします。それにバンドをやっていたのには経験を積むという目的もあったので、外を向いてなかったかなと思いますね。

──そして年月を経てボーカリストとしてもステージに立つようになり、2012年にはドラムボーカルという肩書きでメジャーデビュー(参照:モデル、女優もこなす“歌うドラマー”シシド・カフカ登場)。スポットライトを浴びる存在へ転身します。

はい。割と自然な流れというか「今日からミュージシャンとしてデビュー!」「走り出すぞ!」みたいな浮かれた気持ちにもならずにデビューしました。ただデビュー以降、物事が1つ決まるたびに恐怖心は増していきましたけど。

──恐怖心? プレッシャーみたいなものでしょうか。

はい。例えばこうやってインタビューでお話する1つひとつの言葉にも責任が出てくるじゃないですか。自分の言葉が自分に色を付けますし、私のチーム全体が進む道を作ることにもなる。

──ああ。

ここまで自分のことでいろんな人が動きながら物事が転がっていくっていうことをちゃんと認識してなかったというか。徐々に「お、これはちょっと大変だぞ」って思い始めましたね(笑)。

──はははは(笑)。

シシド・カフカ

でも、自分を知ってもらえて自分を観るためにライブに来てくれる人が1人2人と増えていく感覚っていうのはすごく新鮮でうれしかったですし、それによって自分自身を開いていくようにもなっていきました。

──ファンの存在を知ってからシシド・カフカ像が変わっていった?

そうですね。最初はもっとカッコつけていこうと思ってたんですけど。あははは(笑)。

──えっ? 十分カッコいいじゃないですか。

デビュー前は「あんまり笑ったらいけないんじゃないか」とか、シシド・カフカっていうアーティストのイメージをしっかり固めようと考えてたんですよ。でもデビューライブからもう満面の笑みでライブをやってしまって。

──確かに、ライブですごく楽しそうに演奏されていますよね(笑)。

はい、楽しくてしょうがないんです(笑)。だから今はその場その場にある空気、シチュエーションっていうものに対して素直に反応するように心がけていますね。

ミニアルバム「K5(Kの累乗)」 / 2015年6月17日発売 / avex trax
CD+DVD 3024円 / AVCD-93151/B
CD 1944円 / AVCD-93152
CD収録内容
  • Don't be love feat.斉藤和義
  • Trans fatty acid feat.KenKen(from RIZE)

ほか

CD+DVD盤付属DVD収録内容
  • Don't be love feat.斉藤和義(Video Clip)
シシド・カフカ Session Mini Album
「K5(Kの累乗)」リリース記念ライブ「フミコム」
2015年6月17日(水)東京都 TSUTAYA O-WEST
シシド・カフカ

メキシコ生まれ。中学生時代にアルゼンチンでドラムを叩き始め、数々のバンドに在籍したのちにドラムボーカルのスタイルとなり、2012年5月に配信曲「デイドリームライダー」でデビュー。9月に1stシングル「愛する覚悟」をリリースした。以後も長髪を振り乱しながら力強くドラムを叩いて歌うスタイルで注目を集め、コンスタントに作品を発表。2013年9月にはアルバム「カフカナイズ」をリリースした。一方でモデルやドラマ「ファーストクラス」の出演、「新堂本兄弟」へのドラマーとしてレギュラー参加など多彩な活動を展開。2014年9月にはエイベックスへの移籍を発表。4月には配信シングル「Don't be love feat. 斉藤和義」をリリースした。そして6月には「Trans fatty acid feat.KenKen(from RIZE)」など多様なコラボレーションナンバーを収録したセッション・ミニアルバム「K5(Kの累乗)」をリリースする。