レディー・ガガの初主演映画「アリー / スター誕生」が12月21日から全国の劇場で公開される。本作は「世界にひとつのプレイブック」「アメリカン・ハッスル」「アメリカン・スナイパー」でアカデミー賞に3年連続でノミネートされた俳優、ブラッドリー・クーパーが初めて監督を務めたエンタテインメント作品だ。
今回音楽ナタリーでは、本作を鑑賞したシシド・カフカにインタビューを実施。レディー・ガガと同世代で、彼女と同様にミュージシャンであり俳優でもあるシシドに、「アリー / スター誕生」の見どころをじっくり語ってもらった。
取材・文 / 宮崎敬太 撮影 / 星野耕作
胸が熱くもなり、痛くもなる、とても心が動かされる映画
──まずは映画をご覧になっての率直な感想を教えてください。
とても心が動かされる映画でした……胸が熱くもなり、痛くもなりという感じで。自分も音楽をやっている人間として、登場人物が発する言葉にたくさん共感しました。あと「これは言われたくないな」みたいなセリフも(笑)。例えば、とある人が音楽をあきらめてしまった人に向けて「お前の音楽は薄っぺらかった」と言うシーンがあって。音楽は自分を表現するものだから、例えその人がもう音楽をやめてしまっていたとしても、それは本当につらい言葉なんです。あれは観ていて痛かったなあ。
──逆に胸が熱くなったセリフは?
セリフと言うか「音楽とは限られた12個の音を組みわせて無限に発想するものだ」という、この作品の骨格になる部分に胸を打たれましたね。ミュージシャン同士でも「使い古されたこの技法を使ってどのように新しいことをするか」みたいなことはよく話題になるんです。でもそれを「こんな形で物語に組み込むんだ」ってことに驚きました。詳しくはネタバレになってしまうので言えませんが……。
──自分と同世代のミュージシャンで俳優でもあるレディー・ガガは、シシドさんの目にはどのように映りましたか?
私と同世代なんですね。それはいろいろ考えさせられますね(笑)。私自身、そこまで深く彼女を知ってるわけじゃないんですよ。ミュージックビデオやライブで見せる強い面と言うか、彼女が“レディー・ガガ”として見せたい面しか観たことがないんです。でもこの映画には、彼女がこれまで見せたことのない部分が出ていた気がしますね。レディー・ガガが演じた主人公のアリーはとても感受性が強くて繊細だけど、同時に強い女性。私はレディー・ガガの中にさまざまな感情があったからこそ、あの複雑な気持ちが入り混じった表情を見せるアリーを演じることができたんだと思います。
すべて生歌ということに驚いた
──好きなシーンを教えてください。
私は最初のほうで、ブラッドリー・クーパー演じるジャック(ジャクソン)が、大観衆が待つステージにアリーを呼んで、映画のメインテーマ「Shallow」を一緒に歌うシーンにかなりグッときちゃいましたね。
アリーは歌が大好きだったけど、自分を表現することが怖くてオリジナル曲を人前では歌わなかった。でも歌に対する情熱はあったから、ドラァグクイーンたちが集まる酒場でひっそりとエディット・ピアフの「La vie en rose」をカバーしてて。そんなアリーのためにジャックが大舞台を用意してあげた。しかもアリーが何気なく彼に聴かせた自作曲をバンド用にアレンジしてくれてて。あのシーンでは、アリーの秘められたいろんな気持ちが爆発してたように思いました。しかも「歌唱シーンは全部生歌」とあとで知って2度びっくりしました。
──レディー・ガガは出演オファーを受ける条件の1つとして「歌唱シーンはすべて生で録ること」を挙げたらしいです。
歌のシーンをアフレコする映画も多い中、すごい話ですよね。レディー・ガガというと「Born This Way」みたいなダンサブルな曲のイメージが強いですけど、実はものすごい歌唱力の持ち主なんですよ。少し前に大御所ジャズシンガーのトニー・ベネットとデュエットした曲もすごかったし。と言うか、この映画はブラッドリー・クーパーの歌も本当に素晴らしかった。普通にミュージシャンの経験があったのかなって思っちゃいました(笑)。
──アリーがジャックにフックアップされたような瞬間は、シシドさんのキャリアの中にもありましたか?
いやー、私はプレッシャーに弱いタイプなので、ああいう場面でことごとくチャンスをモノにできないんですよね。たぶん私なら、あの場では緊張して声が出ないと思う。アリーほどの度胸を持っていれば、私も今頃違う景色を見ていたかもしれないです……(笑)。
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スターになって終わる話だと思っていたら、怒涛の展開に
- 「アリー / スター誕生」
- 2018年12月21日(金)全国ロードショー
- ストーリー
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歌手になることを夢見ながら、なかなか芽が出ずあきらめかけていたアリーと、世界的なロックスターであるジャクソンの姿を描いた映画作品。ジャクソンに才能を見出されたアリーは、スターへの階段を駆け上がっていく。アリー役は映画初主演のレディー・ガガ。ジャクソン役を演じたのは「アメリカン・スナイパー」で主演・製作を務めたブラッドリー・クーパーで、彼が初監督を務めている。
- スタッフ / キャスト
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監督・脚本・製作:ブラッドリー・クーパー
出演:レディー・ガガ / ブラッドリー・クーパー / アンドリュー・ダイス・クレイ / デイブ・シャペル / サム・エリオットほか
©2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
- シシド・カフカ
- メキシコで生まれ、アルゼンチンに滞在していた中学生の頃にドラムを叩き始める。数々のバンドに在籍したのち、ドラム&ボーカルのスタイルで2012年にソロデビュー。2013年9月には1stフルアルバム「カフカナイズ」をリリースした。一方でモデルや女優としても活躍し、フジテレビ系「ファーストクラス」やNHK連続テレビ小説 「ひよっこ」などに出演。2015年6月には甲本ヒロト、斉藤和義、KenKen、常磐道ズ(渡辺俊美、Guest:TOSHI-LOW)、YO-KINGをゲストに迎えたアルバム「K⁵(Kの累乗)」を発売し、2016年4月にはさまざまなプロデューサーとのタッグで作り上げたアルバム「トリドリ」をリリースした。2018年7月には真島昌利、横山剣、東京スカパラダイスオーケストラ、金子ノブアキ、m-floらとのコラボ曲を収めたアルバム「DOUBLE TONE」を発表している。同年12月29日には千葉・幕張メッセで開催される音楽フェス「COUNTDOWN JAPAN 18/19」に出演する。