ちょっと学生時代っぽいレコーディング
──レコーディング作業はいかがでしたか? 作品に漂う雰囲気からすると、きっと楽しく進んでいったんだろうなと想像したのですが。
池田 そうですね。ただタイトなスケジュールの中でいろんなタイプの曲に歌を入れていかなくちゃいけなかったので、そこは自分にとって大きな課題ではありました。釣さんはもちろん、エンジニアさんもずっと同じ方にやっていただいていたので、固まった1つのチームとして録れていることがすごく楽しくて。ちょっと合宿してるみたいな感覚がありましたね(笑)。歌うこと自体がすごく楽しかったし、自分のクセを理解しながら狙った表現をしっかり声に乗せることもできたので、ちょっと成長した歌になってるんじゃないかなって思うんですけど。
原田 うん。歌録りの現場にはいたけど俺は見てただけだったしね(笑)。全然関与しなくてもいい歌になったなって思います。
──楽器チームはどうでしたか?
諸石 趣深いレコーディングだったなって思いますね。今回はドラムの音作りからすべてを自分だけでやったんですよ。テックの方にお願いするのではなく。「こんなふうに叩きたいんですけど」って釣さんに伝えて、相談しながら全体を固めていくっていう経験も初めてだったし。自分の中のドラミングに関して、いろんなものの答えが出た気がしますね。
森 さっき池田も言いましたけど、今回は制作の時間がほんとに短くって。
原田 実際、録ってた期間は1カ月もなかったからね。
池田 ギュってしたら2週間半くらいだったと思う。
森 そう。そんなシビれる状況だったんで、スタジオではなくしげの家で録ったところもあったんですよ。その場で初めてコード譜をもらって、「これで合ってる?」みたいなやり取りをしながら。それがちょっと学生時代っぽい感じがして面白かったなって(笑)。
──ある種、せっぱ詰まった状況でもあると思いますけど、それすらも楽しめたと。
森 ですね。しげの家でやると時間を気にせずとことん録れるのもよかったんですよね。自分なりにいろんな挑戦もできましたし。だから今回の曲たちを聴き返すと、いつも以上にいろんな思い出がよみがえります(笑)。
原田 まあそういう制作スタイルは今っぽいと思いますけどね。家であってもぶっちゃけ音的に問題なく録れますから。ギターは家で録ってるものが多いし、「you are my girl」の歌もそうですしね。お金と時間に余裕があれば商業スタジオを使えばいいですけど、そうじゃなければ家でやってもいい。それでいいものも作れるんだよっていう自信にもなる。文字通りアットホームな雰囲気が出たとも思うんで、面白かったですよ。家でやると時間に制約がないからいつまでも終わんないっていう怖さはありますけどね(笑)。
音楽を聴いてるときだけは楽しくいようぜ
──本作のオープニングを飾るのはリード曲「ピュアなソルジャー」ですね。Shiggyらしさが詰まったキラーチューンだと思います。
森 「サマータイムラブ」に近い雰囲気もあるので、ある種原点回帰をしつつ、今のShiggyだったらこうなるよっていうところが見せられたかなと。ベースに関しても、メジャーで3年やってきた中で培ったものを存分に発揮できたと思います。
諸石 個人的には変態的なスネアの音が気に入ってますね。試しに作って持っていったら採用してもらえて。そういうトライができたのはよかったなって思います。あと、今までもたくさんやってきた四つ打ちに関しても、今回は自分らしいノリをしっかり出せたと思っていて。今までで一番、人間っぽい四つ打ちになってると思いますね。
──歌はかなり難しそうな印象ですが。
池田 そうなんですよ! テンポも速いし、言葉も詰まってるからすごく難しかったです。ただ、ドラマの内容に寄り添いつつも、バンドとしてのメッセージをしっかり伝えられる歌詞が私としてはすごく好きなので、言葉をはっきり届けることを意識してがんばって歌いました。「ライブで歌うとどうなるかな?」っていうこともイメージして録ることができたと思います。
──この曲のメッセージは聴き手の気持ちも鼓舞してくれるものですよね。
原田 基本はShiggyの音楽の在り方を書いた感じなんですけどね。今まで自分たちがやってきたことに対してのメッセージというか。「音楽を聴いてるときだけは楽しくいようぜ」っていう。それによって聴いてくれた人たちも同じ気持ちになってくれたらいいなという気持ちはもちろんありましたけどね。
──ミュージックビデオでは楽しい振りも披露されています。ライブが楽しみになりますが。
池田 あの振り、ライブでやるのかな?(笑)
森 お客さんがやってくれたらうれしいけどね。難しいかもな。
池田 ライブでアレをやるかどうかはわからないですけど、MVとしてはすごくキャッチーなものになりましたね。私たち以外にもキャラの濃い方々がたくさん登場する内容になっているので、ぜひ楽しんでもらえればなって思います。
ド変態じゃん
──「シャンパンになりきれない私を」は女性目線のラブソングですが、これを男性の原田さんが書いている面白さがありますよね。
原田 確かにそうですね。たぶん女の人が書いたらこういう歌詞にはならないと思うんですよ。だからこそファンタジー感、物語感がより出るのかなと。
森 あー! なるほどね。そういうことか……。
──森さんが妙に納得してますけど(笑)。
森 俺、「シャンパンになりきれない私を」の歌詞が大好きなんですけど、それはラノベ感があるからなのかもしれない、って今の話を聞いて思った。男の思う女の子像だよね。
池田 そういうの好きだよねー。
森 うん(笑)。前作(「KICK UP!! E.P.」)の「ずっと君のもの」とかもそうだけど、ラノベ感のあるロマンチックなやつが好きなのかもしれない。
池田 確かに私が書こうと思っても書けない世界観だなとはすごく思う。こういう女性はいるだろうけど、私は全然違うよなって。ただ、だからと言って歌うときに抵抗があるかっていうとそうじゃないんですよね。主人公になりきって歌う面白さがあると言うか。ある意味、「ピュアなソルジャー」なんかとは全然違う向き合い方ではあるんですけど。
原田 俺としては池田のイメージにはない女性像を書いて、それをあえて歌わせたいみたいなところがあるんだよね。
森 ド変態じゃん。
池田 あははは(笑)。あえて私とギャップがある女性像を歌わせることで、ボーカリストとしての幅を広げたい、みたいな?
原田 まあそういうところもあるよね。
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何度も何度もループして聴いてもらえるとうれしい