音楽ナタリー PowerPush -柴山一幸
超ネガティブなポップメーカーの叫び
バンドで作曲する醍醐味
──アルバムの楽曲についてお伺いします。収録曲はいつ頃作ったものでしょうか?
すべて「君とオンガク」リリース以降に新しく作ったもので、昨年10月と今年2月に5曲ずつレコーディングしています。このうち10月にレコーディングした曲は「song of superman」「Why Why Why」「コタツでアイス」「機関銃とセーラー服」「愛こそは不得手」で、これらは「絶対にキーボードを入れない」と決めて作りました。それぐらいの決意がないと中途半端になっちゃうと思ったので。
──シンプルなサウンドといえど、この5曲はバリエーションのある楽曲群ですよね。中でも「Why Why Why」は今作の中でズバ抜けて軽快なテンポで楽しませてくれる1曲になっていて。
ああ、これは人気曲ですよ(笑)。これはVampire Weekend「Diane Young」を意識したもので。
──そしてほかのナンバーも多彩なリズムで楽しませてくれる内容になっています。このバリエーションはどのようにして生まれたのでしょう。
バンドメンバーのところへデモを持っていき、僕からは特に注文を付けないでメンバーとのリハーサルの中で作っていきました。その結果もともと8ビートで作った曲が最終的に3拍子のナンバーになったこともあって。
──そうなんですね。
ソングライターって、まず自分のリズムに乗せて曲を作るんです。作った曲のリズムには思い入れがあるし、何より歌いやすいからバンドメンバーにもそのリズムで演奏してもらおうとする。でもそれは強いるほうも強いられるほうもつらい作業になって。僕が20代のときにやっていたバンドを辞めたきっかけもそれなんですけど。あとソロになってからも自分でドラムをはじめすべての楽器のレコーディングをしたんですけど、やっぱりあまり満足できなかったんですよね。自分のリズム感だけでやると自分が思ったものをなぞるようにしかならなくて。
リハーサルの時間は前作の4倍に
──ほかのメンバーを交えて楽曲を作るようになったきっかけは?
2008年に出した2ndアルバム「涙色スケルトン」のときですね。デビュー後僕はすぐにアーティスト活動を辞めていたんですが、自分の音楽を形にしたくて、いろんな人に手伝ってもらいながらこのアルバムを作ったんです。その中で「うまい人たちとやると歌が楽しく歌えるんだ」ということに気付いたんです。リスナー目線に近くなって。例えばキャロル・キングの音楽を聴きながら「このベースいいなあ」って思うような感覚を自分の作品で味わえるみたいな。このほうが楽しかったし音楽に対してドキドキできたんですよね。
──3rdアルバム「I’ll be there」や4thアルバム「君とオンガク」のときは今回とまた違った方法で制作された?
はい。その2作ではキーボードを担当していた炭竃(智弘)くんがプリプロでしっかりしたものを作ってきて。メンバーとレコーディング前にリハーサルしたのは1回だけでした。だけど今回はバンドで曲を作っていかないと自分の好きな音に近付けられないって思ったので、メンバーには前作と比べて4倍くらいのリハの時間をもらいました。僕が用意したプリプロも弾き語り、もしくは簡単な打ち込みの音で、フレーズとかを決めない状態のもの。それを「70年代のソウルフィーリング」「80年代のニューウェイブな感じ」って曲のイメージを伝えながら、メンバーおのおのの解釈にゆだねて演奏してもらいました。
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収録曲
- Headway
- 一つの幸せ
- song of superman
- Why Why Why
- りんご病のあの娘
- SAYONARA
- コタツでアイス
- 機関銃とセーラー服
- カプセルラブ
- 愛こそは不得手
柴山一幸 & the BD's New Album「YELLING」発売記念ワンマンライブ
- 2015年6月12日(金)愛知県 Valentine Drive
ゲスト:高橋てつや / The Swastika
料金:前売 2500円 / 当日 3000円(ドリンク代別)※学割あり - 2015年6月21日(日)東京都 HEAVEN青山
ゲスト:伊藤俊吾と佐々木良
料金:前売 3000円 / 当日 3500円(ドリンク代別)※学割あり - the BD's:杉浦琢雄(Key)/ 加藤ケンタ(G)/ 若山隆行(B)/ 矢部浩志(Dr)/ 森芳樹(Perc ※東京公演のみ)
柴山一幸「YELLING」ディスクユニオン購入特典イベント
- 2015年6月25日(木)東京都 dues新宿
バンドメンバー:杉浦琢雄(Key)/ 加藤ケンタ(G)/ 若山隆行(B)/ 矢部浩志(Dr)/ 森芳樹(Perc)
柴山一幸(シバヤマイッコウ)
2001年に鈴木博文(ムーンライダーズ)主宰のレーベル・メトロトロンレコードよりアルバム「Everything」でデビューを果たした。2008年5月には田辺マモル、徳永憲らをゲストに迎えて制作した2ndアルバム「涙色スケルトン」を発表。田辺マモルのサウンドプロデュースや田村ゆかりへの楽曲提供などでも幅広く活躍する。2013年3月の3rdアルバム「I'll be there」発売以降はライブも精力的に行い、2014年6月にはGO→STレーベルより4thアルバム「君とオンガク」をリリース。2015年5月に5thアルバム「YELLING」を発表した。