音楽ナタリー PowerPush -柴山一幸

超ネガティブなポップメーカーの叫び

柴山一幸がニューアルバム「YELLING」をリリースした。

キーボードやホーンのサウンドで飾られたカラフルなアルバム「君とオンガク」の発売から1年。柴山が提示したのはシンプルなバンドサウンドによるロックアルバムだった。今作におけるドラスティックな転換のきっかけはなんなのか、そしてその変化をもってしても尽きることのないキャッチーなポップセンスはどこから生まれたのか。柴山にアルバムの制作背景を聞いた。

また最終ページには、沖井礼二(TWEEDEES)、佐藤優介(カメラ=万年筆)、澤部渡(スカート)、鈴木博文、堂島孝平の5人によるアルバム「YELLING」の感想コメントを掲載している。

取材・文 / 鵜飼亮次 撮影 / 佐藤類

 
mixiチェック

“本当の自分”が求めるサウンドへ

柴山一幸

──まずは柴山さんが今作「YELLING」でガレージサウンドへ大きく転向した理由を聞かせてください。

これまで一緒に音楽を作ってきたバンドメンバーが別の人に変わったからというのが主な理由なんですが、そこには前作「君とオンガク」とは異なる、“本当の自分”が求める音楽を作りたいという気持ちがあって。

──今作のレコーディングにあたってブログに「ギターサウンドをようやく手に入れた」と書いてらっしゃいました。柴山さんが求めたものはまさにこの音だったと。

はい。やっぱり僕の原点はギターロックだし、資質はロックンローラーなんですよね。前作のようなキーボードやホーンセクションが入ったような音はもちろん好きではあるんですけど、ロックといえばやはりギター。それに……今考えると僕は前作のようなカラフルなサウンドで自分自身との真っ向勝負を避けていたのかなって思うんです。

──真っ向勝負?

はい。2001年にデビューしたときに満足のいく作品が作れなかったり、ライブパフォーマンスがうまくいかなかったりして音楽活動から離れたことなどがきっかけとしてあるんですが、僕はこのアルバムまでシンプルでストレートなギターサウンドからずっと逃げてたんです。だけどミュージシャンとしての活動を本格的に復活させてから3年が経ち、少し自信もついてきて。それで改めて今回の方向に進んでみたんです。

「ジョンの魂」が導いたもの

──柴山さんの原点であるロックとのファーストコンタクトについてお聞きしたいと思います。どんなきっかけで出会ったのでしょうか?

柴山一幸

小6か中1の頃、好きだったオフコースのメンバーの口からよく「The Beatles」っていう言葉が出てきて、僕の周りの人たちもみんな知ってるし聴いてみようと思ってThe Beatlesのアルバムや各メンバーのソロアルバムを同時に買ってみたんです。そしたら僕には「ジョンの魂」が一番響いて。

──ジョンですか。柴山さんのキャッチーな音のことを考えるとポール・マッカートニーかと思っていました。

そう。「君とオンガク」のレビューでも「ポールが好きなのは十分わかる」って書かれてた。もちろん彼も大好きですけど、僕は最初からジョン・レノン派なんです(笑)。

──「ジョンの魂」のどこに惹かれたんでしょうか?

彼の“叫び”ですね。当時の僕は全国で一番厳しかったという愛知県の管理教育下にいて。さらに長男として実家の会社を継ぐことも自然な流れとして決まっていた。でも僕は家業に夢とか幸せ、正しいと思えるものを1つも見いだせなかったんですよね。

──そこに音楽による反抗や叫びがリンクしたと。

ですね。ロックが僕の置かれている状況や環境とはまったく違うベクトルにあって。モヤモヤしていたものの答えが「ジョンの魂」の中にあるような気がしました。それ以来僕はもはや“「ジョンの魂」教”の教徒ですよ(笑)。

──だから原点に立ち返った今作のアルバムタイトルが「YELLING」、“叫び”なんですね。

はい。

ニューアルバム「YELLING」/ 2015年5月27日発売 / 2700円 / GO→ST / INPH-011
ニューアルバム「YELLING」
収録曲
  1. Headway
  2. 一つの幸せ
  3. song of superman
  4. Why Why Why
  5. りんご病のあの娘
  6. SAYONARA
  7. コタツでアイス
  8. 機関銃とセーラー服
  9. カプセルラブ
  10. 愛こそは不得手
柴山一幸 & the BD's New Album「YELLING」発売記念ワンマンライブ
  • 2015年6月12日(金)愛知県 Valentine Drive
    ゲスト:高橋てつや / The Swastika
    料金:前売 2500円 / 当日 3000円(ドリンク代別)※学割あり
  • 2015年6月21日(日)東京都 HEAVEN青山
    ゲスト:伊藤俊吾と佐々木良
    料金:前売 3000円 / 当日 3500円(ドリンク代別)※学割あり
  • the BD's:杉浦琢雄(Key)/ 加藤ケンタ(G)/ 若山隆行(B)/ 矢部浩志(Dr)/ 森芳樹(Perc ※東京公演のみ)
柴山一幸「YELLING」ディスクユニオン購入特典イベント
  • 2015年6月25日(木)東京都 dues新宿
    バンドメンバー:杉浦琢雄(Key)/ 加藤ケンタ(G)/ 若山隆行(B)/ 矢部浩志(Dr)/ 森芳樹(Perc)
柴山一幸(シバヤマイッコウ)
柴山一幸

2001年に鈴木博文(ムーンライダーズ)主宰のレーベル・メトロトロンレコードよりアルバム「Everything」でデビューを果たした。2008年5月には田辺マモル、徳永憲らをゲストに迎えて制作した2ndアルバム「涙色スケルトン」を発表。田辺マモルのサウンドプロデュースや田村ゆかりへの楽曲提供などでも幅広く活躍する。2013年3月の3rdアルバム「I'll be there」発売以降はライブも精力的に行い、2014年6月にはGO→STレーベルより4thアルバム「君とオンガク」をリリース。2015年5月に5thアルバム「YELLING」を発表した。