関取花が「君の住む街」以来1年3カ月ぶりのシングル「朝」をリリースした。
表題曲はアメリカ在住の日本人のためのフジテレビ系ニュース情報番組「FCI News Catch!」のテーマ曲として、北アメリカでオンエアされているナンバー。さわやかな曲調とポジティブな歌詞が冬の晴れた朝にぴったりな楽曲だ。カップリングにはファンに愛されてきた名曲「めんどくさいのうた」と書き下ろしの「なんとかなるんで」が収録されている。
日本テレビ系「行列のできる法律相談所」「今夜くらべてみました」やテレビ朝日系「タモリ倶楽部」などテレビ出演で知名度を上げ、フェス出演、ワンマンツアーや対バンツアーの実施、寄席でのライブなど、実りの多かった2017年を総括し、2018年に走り出す心構えを本人に話してもらった。
取材・文 / 高岡洋詞 撮影 / ヤオタケシ
人前に出る仕事だという自覚がようやく芽生えてきた
──2017年はメディア出演が増えて、さらに知名度が上がったんじゃないですか?
ラジオやテレビは継続してありましたけど、それもこれも音楽を聴いてもらうためのきっかけになればと思ってやってることなので、ライブに来てもらえないとうれしくないんですよ。その意味では、最近は今まで見なかったタイプのお客さんが来てくれるようになって、ちゃんとつながってるなあって思います。あと、歌う番組じゃなくてしゃべる番組が多かったおかげか、逆に歌詞をちゃんと読んでもらえるようになった気がしますね。と言っても私自身は何も変わってないんですけど。住んでる部屋も同じだし、服もユニクロとかしか着ないし。1つ変わったのは、ここ1、2年でちゃんと美容院に行くようになったんです。それまで1000円カットとか2000円カットに行ってたんですけど、人前に出る仕事だっていう自覚がようやく芽生えてきました(笑)。
──実際きれいになられたと思いますよ。1年前にお会いしたときと比べても。
昨日、前回(2017年1月)インタビューしていただいた記事を読んでたんですよ(参照:関取花「君によく似た人がいる」インタビュー)。言ってることとか中身は変わってないんですけど、なんとなく、この1年で顔から邪気が抜けたと思いました(笑)。去年はキツい顔をしてたなって。これまでは「1人でやらなきゃ」「1人でやったときにカッコよくないと」「どうせ最後は1人なんだから……」と思ってたんですけど、お客さんが増えたり、ずっと弾き語りでやっていたツアーがバンドセットになったりして、自分が思ってる以上に周りの人が私のことを面白がってくれてるんだなって気付いて、気が楽になったのかもしれないです。
──「朝」のミュージックビデオもきれいでした。
あれ、めっちゃ光で盛れてますよね(笑)。撮影の時期にちょっと痩せたんで、いい感じにげっそりしてて。自然光ではかなげにしてもらいました。
──監督は吉田ハレラマさん。前回も彼でしたよね。
前々作のアルバムぐらいからずっと映像を撮ってもらってます。アーティスト写真も高田梓さんにずっと撮ってもらっていて。信頼できる人が周りにいてくれるのはありがたいですね。
朝の景色のまあ美しいこと
──「朝」はこれまでになくポジティブに振り切った、抜けのよさを感じさせる曲だと思いました。どうしてそうなったんでしょうか?
「朝のニュース番組のテーマソングを」というお話をいただいて書いた曲なんです。本来私は完全に夜行性の人間で、朝日を浴びない生活をしてるんですけど、曲作りのために1週間だけがんばって早起きしてみたんですよ(笑)。そしたら普段見慣れてるはずの景色のまあ美しいこと! 小学生の頃、新しいランドセルを背負って新しい服を着て学校に行ったときのことを思い出しました。朝にはそういうパワーがあるんだなって。でも実際、迷ったんですよ。「昨日はこうだった、一昨日はこうだった、ダメダメだった、でも朝は来るからやるしかない……」という内容のほうが本来の私の曲調と言うか、もともとのタイプなので、そういう曲を書いたほうがいいのかなと。でもそういう曲なら今後も書けるし、せっかくの機会だから、まっすぐにさわやかな曲が1曲ぐらいあってもいいのかなと思って。それで曲がったことはなしでいきました。あくまでも「飛べそう」で終わっているところが私らしいのかなって思ってます。
──仕事をもらうことによってアウトプットに変化が出てきた?
それも2017年の変化ですね。CM(一般社団法人全国信用金庫協会のWEBCM)に曲を書き下ろしたり、DJみそしるとMCごはんちゃんの曲に参加したり(DJみそしるとMCごはんのアルバム「コメニケーション」収録「おにぎりはお守り r.t.m. 関取花」)、カサリンチュさんに歌詞提供したり(カサリンチュのアルバム「待つ、うらら」収録「伝えに行くの」)。今までは、自分の言葉を自分で歌っていかに自分らしさを出すかということばかり考えてましたけど、いろんな人と交わっていく中で「どうしたらもっと人の心にダイレクトに伝わるんだろう」という考え方ができるようになった気がします。以前なら「夜型だから朝の歌なんか書けない」って断ってたかもしれないし。
──発声もさらにひと皮むけたような気がします。
2月に出したアルバム(「君によく似た人がいる」)を聴き直してて、自分でもそう思いました。表情もそうだけど、パッと開けた感じがあるなって。前回のシングル「君の住む街」で初めて野村陽一郎さんにプロデューサーに付いてもらったんです。ボーカルディレクションをしてもらうのも初めてだったんですけど、「マイクの向こう側にお客さんがいっぱいいると思って歌えばいいんだよ」って言われたのがすごく新鮮で。1年ぶりに野村さんにお願いしたら、今回は歌録りがすぐに終わったんです。前回に指摘されたところを特別意識して歌ったわけじゃないんですけど、この1年で体に染みついた感じはしました。
──「君の住む街」の存在は大きいですね。
それより前は、言葉が強くてメッセージ性もあって、地声で張るのが私の真骨頂だと思ってたんです。だから「君の住む街」は自分なりにポップな王道ソングを書いたつもりで、毛色も違うし、プロデューサーさんも入ってたし、正直、自分で歌わなくてもいいんじゃないかと思ったこともありましたけど、十代の頃から私を知ってる人や、尊敬するミュージシャンの方に「あの曲いいよね」と褒められることが多くて。「爆笑問題の日曜サンデー」(TBSラジオ)に呼んでいただいたときも、田中(裕二)さんが「君の住む街」をきっかけにアルバムを聴いたっておっしゃって、すごく褒めてくださって。いろんなものを見聴きしてきた方に意外と響いてるみたいで、もう1つ新しい自分の強みを見つけたような気がしたんです。陰と陽で言ったら陽みたいな。
──爆笑問題のことは先日もツイッターに書いていましたよね(参照:関取 花 (@dosukoi87) | Twitter)。
そうなんです! 「JUNK爆笑問題カーボーイ」(TBSラジオ)で、田中さんが“2017年の1曲”に「もしも僕に」を挙げてくださったんですよ。基本的に音楽の話をする番組じゃないし、たまに知り合いの曲がかかったりするとすごく悔しくて、いつか名前だけでも呼ばれたいと思ってたので、信じられない気分でした。
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他人に言えない愚痴を歌にした「めんどくさいのうた」
- 関取花「朝」
- 2018年1月24日発売 / dosukoi records
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[CD]
1200円 / DSKI-1002
- 収録曲
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- 朝
- めんどくさいのうた
- なんとかなるんで
- 関取花「朝稽古ツアー」
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- 2018年2月27日(火)
大阪府 梅田CLUB QUATTRO - 2018年2月28日(水)
愛知県 CLUB UPSET - 2018年3月8日(木)
東京都 渋谷duo MUSIC EXCHANGE
- 2018年2月27日(火)
- 関取花(セキトリハナ)
- 1990年12月18日生まれの女性シンガーソングライター。幼少期をドイツで過ごし、日本に帰国した後の高校時代より軽音楽部で音楽活動を始める。2009年には「閃光ライオット2009」で審査員特別賞を受賞し、2010年に初の音源となるミニアルバム「THE」をリリース。2012年には神戸女子大学のテレビCMソングに採用された「むすめ」が話題を呼び、同11月には「むすめ」を含む全6曲収録のミニアルバム「中くらいの話」を発表した。2014年2月には3rdミニアルバム「いざ行かん」を発売し、同年7月にFm yokohamaでレギュラー番組「どすこいラジオ」がスタート。2015年9月2日に初のフルアルバム「黄金の海であの子に逢えたなら」をリリースした。2016年10月にシングル「君の住む街」を、2017年2月にアルバム「君によく似た人がいる」をリリース。DJみそしるとMCごはん、カサリンチュへの楽曲提供なども行い、2018年1月にシングル「朝」を発表した。
2018年6月18日更新