関取花|夜型のめんどくさがり屋が、さわやかに朝を歌う

2018年は“横綱花”に

──前回のインタビューで、“ひがみソングの女王”としてテレビに出ることも、とにかく音楽を聴いてもらうきっかけになればいい、と割り切っていて、大人だなあと思ったんですが、それでも曲を書けない時期があったんですね。

関取花

割り切ってるつもりなんですけど、ふと1人になったときにいっぱいっぱいになっちゃうことがあって。今まで使ってない頭の使い方をすることが増えたのか、知恵熱を出したりもしました。ぼーっと踏切で3本くらい電車を見送ったりして。ダメなときには「もう、最後は1人だ」って思っちゃうんですよ。11月頃にも音楽と関係ないことで気持ちが落ちたことがあったんです。目に見えて覇気がなくなって、体重も落ちたんですけど、12月頭ぐらいに横浜にぎわい座のワンマン(参照:「2018年もおいしいビールが飲めるように」関取花、朗らかなにぎわい座ワンマン)の前のリハでバンドのみんなに会ったら元気が出たんですよ。「なんだ、頼れる人いっぱいいるじゃん」って思えて。今までは私が針金で芯になる部分を作って、周りの人が粘土で肉付したり色を付けてくれたりして、自分が思ってた以上の姿になるのが楽しかったんです。それは今も変わらないんですけど、ここ1年ぐらいで、芯がぼんやりしか見えてなくても、ガワから作っていって何かが見えてきたら、それはそれで私なんだなって思えるようになりました。

──メディアで過去にない取り上げられ方をしたことも影響がありそうですね。

こんなキャッチフレーズを付けてもらえるんだとか、こんなテーマだと呼んでもらえるんだなとか、自分ではわかってなかったことがいろいろ見えてきました。「こんな話題ならこういう曲があったらいいな」とか、仕事相手から教えてもらうことが増えて面白いなと思ってます。それでも最後は1人と言うか、発した言葉は私の責任だし、私に返ってくるから、責任は自分で取るつもりですけど、それを重荷に感じすぎないように。

──今は次のアルバムの制作中ですか?

ちょこちょこ進めてます。録りだけ終わってる曲があったりとか、アレンジのアイデアを集めてる曲もあったり。今までは1人で曲をバーッと作ってましたけど、信頼できる人が増えたから、ちゃんといい意味で頼ろうと思って。さらに開けたものになるんじゃないかなと思ってます。

──ライブもワンマンが増えたり、規模が大きくなったりして、心構えが変わったりしましたか?

ワンマンだとすごくしゃべるんですけど、それは、フロントマンは曲がいいだけじゃなく、人柄に興味を持ってもらえないと長続きしないと思ってるからで。人柄をわかってもらえれば、「朝」の次に「めんどくさいのうた」を歌っても受け入れてもらえると思うんですよね。規模感が大きくなっても、距離感は変わらないように……と意識はしています。

──そう考えるきっかけになったアーティストっていますか?

中島みゆきさんってそういう感じじゃないですか? 私は小さい頃ドイツに住んでたので日本の音楽が周りになかったんですけど、母親がスピッツさんと中島みゆきさんのCDだけは新譜が出たら取り寄せたり、一時帰国したときに買って帰ったりしてて、車の中でずっと聴いていたんです。ある日、車に乗ってたら、どこから取り寄せたのか中島みゆきさんのラジオが聞こえてきたんですよ。「これがあの歌を歌ってる人なのか」って、けっこう衝撃を受けたんですけど、だから面白いんだなってわかったんです。いくら演奏がよくても人が面白くなければ、ただフェスで満足するだけの音楽になっちゃうなって。楽しく気持ちよく聴けるだけなら、ワンマンに行く必要がないじゃないですか。今はどんどんフェスが増えてるから、フェスで気持ちいいバンドに人気があるのはわかるし、私もフェスは好きなんですけど、同じところで勝負しても勝てないし。

──前回のインタビューで「パーンと歌える人はカッコいいし憧れるけど、私はそうじゃない人のために歌いたい」と言っていたことを思い出しました。

ZIMAを飲みながら「イェーイ!」って手放しで盛り上がれる人じゃなくて、フェスに行っても隅のほうで見てる人とか、「この場所に酔ってる私ヤバくない?」っていろいろ考えちゃう人が私のライブに来る気がします(笑)。

──2017年はいろいろありましたが、総括してみるといい年でしたか?

いい年だったと思います。一昨日ぐらいに次のアルバムに入る予定の曲を聴いてたんですけど、そのとき急に「2018年はめっちゃくちゃいい年になる!」と思ったんですよ。普段は見ないんですけど、雑誌の占い特集を見たら、私射手座なんですけど「これまで見守る星だった射手座は2018年にいよいよ爆発します」と書いてあって。完全に鵜呑みにしてます。

──おお! 関取花が主役に躍り出る年にしましょう。

“横綱花”になれるようにがんばります(笑)。

関取花

※記事初出時、プロフィール内の作品名に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

関取花「朝」
2018年1月24日発売 / dosukoi records
関取花「朝」

[CD]
1200円 / DSKI-1002

Amazon.co.jp

収録曲
  1. めんどくさいのうた
  2. なんとかなるんで
関取花「朝稽古ツアー」
  • 2018年2月27日(火)
    大阪府 梅田CLUB QUATTRO
  • 2018年2月28日(水)
    愛知県 CLUB UPSET
  • 2018年3月8日(木)
    東京都 渋谷duo MUSIC EXCHANGE
関取花(セキトリハナ)
関取花
1990年12月18日生まれの女性シンガーソングライター。幼少期をドイツで過ごし、日本に帰国した後の高校時代より軽音楽部で音楽活動を始める。2009年には「閃光ライオット2009」で審査員特別賞を受賞し、2010年に初の音源となるミニアルバム「THE」をリリース。2012年には神戸女子大学のテレビCMソングに採用された「むすめ」が話題を呼び、同11月には「むすめ」を含む全6曲収録のミニアルバム「中くらいの話」を発表した。2014年2月には3rdミニアルバム「いざ行かん」を発売し、同年7月にFm yokohamaでレギュラー番組「どすこいラジオ」がスタート。2015年9月2日に初のフルアルバム「黄金の海であの子に逢えたなら」をリリースした。2016年10月にシングル「君の住む街」を、2017年2月にアルバム「君によく似た人がいる」をリリース。DJみそしるとMCごはん、カサリンチュへの楽曲提供なども行い、2018年1月にシングル「朝」を発表した。

2018年6月18日更新