Saucy Dog「サニーボトル」特集|自信を得て大人になった3人が作り上げた“太陽” (2/3)

バンドサウンドにこだわった「サニーボトル」

──「サニーボトル」を通して聴かせていただいて、自信に満ちあふれているというか、迷いがなくなったような印象を受けました。皆さんにとって「サニーボトル」はどのような作品になりましたか?

石原 最近のバズる曲は、打ち込みやボーカロイドっぽい曲が多いですよね。でも「サニーボトル」はそれとは逆にバンドサウンドにこだわっていて、かなりバンド色が強い作品だと思います。自分たちの前向きな気持ちを落とし込んだ曲が多いので、聴いてくれた人の心を少しでも晴れやかな気持ちにできる1枚になっていたらいいなと思ってます。

せと 自ずと歌詞や曲調が明るい曲が増えて、タイトル通り太陽が詰まったようなミニアルバムになりました。どの作品もしっかり聴いてほしいと思ってますが、今回はより歌詞の意味までしっかり考えて聴いてもらえたらうれしいです。

秋澤 1年前より大人っぽくなったし、みんなの経験値が上がっていることが感じられる1枚ですね。僕たちも聴いていて前向きになれるし飽きないし、1曲1曲のカラーが濃いなと思います。自信がついた分、そういうサウンドや歌詞になっているんじゃないかなと。

──確かにひと皮むけたというか、大人になったSaucy Dogを感じられますね。あとは今回シンガロングパートや、シンガロングしたくなるような曲が多くて。コロナ禍が明けたときのことを見据えて作ったんでしょうか?

石原 見据えてというか、「早くなくなれー!」と思いながら作ってましたね。早くみんなで歌えたら楽しいだろうなという気持ちで。

──では収録曲について聞かせてください。1曲目の「404. NOT FOR ME」はイントロの軽快なドラムが、「サニーボトル」という作品のオープニングにぴったりですね。

せと 制作の最後あたりにできた曲で、ほかの収録曲との差をどうやってつけるか考えている中で、冒頭のドラムフレーズを思い付きました。

石原 イントロのドラムフレーズ、すごくいいなとは思ったんですけど、一方でどんなギターフレーズが合うかわからなくてモヤモヤはしてましたね(笑)。

せと 「これどうやって弾いたらいいの?」って半ギレで言ってたな(笑)。

石原 今のドラムフレーズになるまでは、イントロはゆっくりめのテンポでシンプルなギターストロークで始まるほうがカッコいいと主張してたんですけど。

せと そうしたら、同じくこのミニアルバムのために作っていた「君ト餃子」に雰囲気が近くなっちゃって。

石原 それでアップテンポのほうがいいかという結論に至りました。VANSのタイアップ曲だし、前に踏み出したくなる感じのほうがいいかなと。あとこの曲は歌詞がよくできたかな。今までの恋愛の曲は歌詞が長いんですけど、この曲はだいぶ短くできて。今後も歌詞をこれくらいにまとめて、より聴いてくれる人の心に刺さるような曲を作れるようにがんばります。

秋澤 この曲は頭のフレーズや間奏のベースソロが、弾いていて難しかったですね。ベースソロの部分はレコーディング当日に入れることが決まって、レコーディングしながら手探りで作っていきました。普段は隙間が多い曲をやることが多いので、とにかくライブでプレイするのは難しいだろうなって。メロディに関しては“朝から夜まで”というテーマがあって、それに合った感じに仕上がったと思います。

せと イントロのドラムフレーズができたときは明るいパレード感があるなと思いましたね。でもずっと明るい感じというよりは、最初は朝が爽快に始まる感じで、最後は夜景が想像できるような流れになるように作っていきました。

秋澤和貴(B)

秋澤和貴(B)

秋澤和貴(B)

秋澤和貴(B)

みんなもう少しずつ優しくなってくれたら

──「あぁ、もう。」はCDリリースに先駆けて先行配信された曲で、すでに再生回数が多く回っています。この曲ができたときに手応えは感じました?

石原 いやあ、難しい曲ができたなって。でも、「ええ感じの曲ができたかも」とは思ったかな。ポップな感じであまり今までのSaucy Dogにない曲になったなと。あと冬っぽいコード進行を入れているところもポイントです。けっこう凝ったよね。

秋澤 うん。アレンジね。

──2番のAメロのめまぐるしい展開が新鮮で、「もうダメになりそう」の後ろで鳴るギターのメロディが歌詞に合っていて印象的でした。

石原 「うだうだしてたらもうちょっと」から、ギターは難しいコードを弾いていて。「もうダメになりそう」のところのフレーズはその流れでパッと思い浮かびましたね。

──歌詞は「[玉砕覚悟+捨て身の攻撃]」というフレーズがゲームのコマンドのようで面白いですね。

石原 これは歌詞を見ないとわからないですよね。昔から「ドラクエ」などのゲームが好きで、この「[玉砕覚悟+捨て身の攻撃]」というフレーズを思いついたときに「ゲームっぽい」と思って、そのまま歌詞をゲームコマンドのようにしました。

石原慎也(Vo, G)

石原慎也(Vo, G)

──ゲームやアニメ好きの石原さんらしいひねりだなと思いました。そして「君ト餃子」はサントリーのWebドラマ「上京エール」の主題歌です。ドラマの台本から着想を得たんでしょうか?

石原 別々の場所に住んでいる2人の物語というドラマの設定を聞いて、別々の場所に住んでいて気にしてしまうことってなんだろうと考えました。それで天気予報が思い浮かんだのと、あとはビールに合うといえば餃子じゃないかと思って、「嫌なことは包んで食べちゃえばいいじゃん」という発想につながりました。

──ドラマやタイアップの内容に沿いつつ、サウシーの魅力の1つである穏やかで温かい部分が現れた曲に仕上がっていますね。4曲目の「優しさに溢れた世界で」は歌詞にメッセージ性のある楽曲ですが、どんな思いで書いたんでしょうか?

石原 間違えたことをすぐに指摘する人を見て、世の中厳しいなと感じて。指摘してもいいんですけど、みんなもう少し優しくなったらいいのになと思ってDメロを書きました。それ以外のところは「もし自分がサラリーマンだったら」という架空のドラマを頭の中で作って。そうしたら多少しんどいことがあっても大切な人のためだったらがんばれるなという思いを歌詞に込めました。

──この曲はパジャマ姿の皆さんが登場するミュージックビデオが公開されています。

石原 撮影は朝が早くてめっちゃ眠かったですね。

秋澤 始発がなかったので集合場所までタクシーで行って。

せと 3時半起きだったかな。10分とか少しの休憩があるたびに寝てました(笑)。

石原 俺も公衆電話2個分くらいの広さの着替えるスペースで、足を折り曲げながら寝てた(笑)。