Saucy Dog|アットホームさとバランスを武器に前進

Saucy Dogの5thミニアルバム「レイジーサンデー」とライブBlu-ray / DVD「『send for you』2021.2.5日本武道館」が8月25日に同時リリースされた。

「レイジーサンデー」はCDと配信でリリースされ、カゴメ「野菜生活100」をテーマに制作された「週末グルーミー」や全編女性目線の歌詞の「シンデレラボーイ」などの8曲に加え、CDのみボーナストラックを収録。ライブBlu-ray / DVDには、2月に行われたSaucy Dog初の東京・日本武道館でのワンマンライブ「Saucy Dog one man live『send for you』」の模様が収録されるほか、2月に東京と大阪で開催されたSaucy Dog主催の対バンイベント「リベンジエピソード」の模様の一部も収められる。

音楽ナタリーではこの2作の発売を記念してSaucy Dogにインタビュー。日本武道館公演についてやミニアルバムの制作エピソードのほか、バンドの武器や持ち味についても語ってもらった。

取材・文 / 酒匂里奈撮影 / 梁瀬玉実

曲に合った音作りを突き詰めていきたい

──少し前ですが、2月にSaucy Dog初の日本武道館でのワンマンライブ「Saucy Dog one man live『send for you』」が行われました。緊急事態宣言下で無事に公演を終えた感想を教えてください。

石原慎也(Vo, G) 終わってすぐはホッとしたという気持ちが一番大きかったですね。タイトルが「send for you」で、たくさんの人に幸せを届けることがテーマだったんです。やる前には情勢のこともあっていろいろな葛藤や不安がありましたけど、武道館でみんなが喜んでいる顔を見たらやってよかったと思いました。こっちが幸せをあげる立場だったはずなのに、またみんなに幸せをもらってしまったなと。

Saucy Dog

せとゆいか(Dr, Cho) 私はラストの「猫の背」で客席の照明が明るくなってみんなの顔が見えたときに、マスク越しでも楽しんでくれているのを感じて。その瞬間に緊張が解けた感じがします。私たちの思いが伝わったことが感じられてホッとしました。自分たちにとってすごくいいライブができたと思います。

秋澤和貴(B) ライブの大切さを改めて感じましたね。そしてこれだけの人がSaucy Dogというバンドを応援してくれているということを実感しました。終わったあとは喪失感を感じるかと思っていましたけど、そうではなくてより前向きになれて、もっと多くの人に自分たちのライブを観てもらいたくなりました。

──ライブBlu-ray / DVD「『send for you』2021.2.5日本武道館」にはライブ本編の映像に加えてドキュメンタリー映像も収録されます。スタジオで音作りをしている様子なども収められていました。

せとゆいか(Dr, Cho)

石原 武道館では音の圧を極限まで出したかったというか、音の塊が飛んでくるみたいな感じにしたくて、試行錯誤していました。俺はアンプを2台にして同時鳴らしにしていましたね。

秋澤 それぞれの曲に合う音になるように竿チェンジはけっこうしましたね。曲に合った音作りは今後も突き詰めていきたいと思ってます。武道館がきっかけでよりそう思うようになったかもしれないです。新しく機材を買ったり、楽器のスタッフさんと相談をして新しいことを試してみたりもしたし。

せと ドラムに限らずの話ですけど、武道館公演が決まってからはチーム全員が頭の中のどこかで武道館を意識してライブをやっていました。その前のツアーでは、武道館で使うことを念頭にメンバー全員がイヤモニを付け始めたんです。武道館のためだけにというわけではないですけど、ステップアップするために。そういう大きい会場でやることを見据えて調整したことはけっこうありますね。

──ライブBlu-ray / DVDには2月に日本武道館と大阪・なんばHatchで開催されたSaucy Dog主催の対バンイベント「リベンジエピソード」の模様も一部収められます(参照:Saucy Dogが大好きなアジカン、ハルカミライ、THE BAWDIESと競演した日本武道館ライブ / Saucy Dogがユニゾンら個性が強すぎる5組とリベンジ大成功)。さまざまなアーティストと主催イベントで競演して、どんな刺激を受けましたか?

秋澤和貴(B)

石原 武道館ワンマンより緊張しましたね。主催イベントをあのキャパでやるのが初めてで、お客さんはもちろん出演者の方にも楽しんでほしいと思っていたので、そういうプレッシャーもありました。全出演者のライブを観させてもらって、刺激を受けた部分はたくさんあるんですけど、今話すと月並みな言葉になってしまいそうで。例えばハルカミライだったら音楽を全身で表現している感じに刺激を受けましたけど、こういう感じで簡素な言葉になってしまう気がしてもったいないなと。

秋澤 2公演とも「自分たちはこういうバンドだ」というスタイルを確立しているアーティストしかいなかったんです。武道館ワンマンをやった直後なのもあるかもしれないですけど、自分たちの今後のことを考えながら冷静に出演者のライブを観てました。

せと 武道館のワンマンをやったらそこで一度満足してしまうという話をよく聞いていて。自分たちはそう思うバンドではない気がしていたんですけど、ワンマンの次の日に同じ場所で対バンイベントがあったから、余計にそういうことを思わず先のことを考えられました。秋澤も言っていましたが、それぞれのバンドにそれぞれの持ち味を突き付けられて、武道館ワンマンをやったとはいえ、まだまだもっとできることがあるなと思ったし、そういう意味ですごく刺激を受けました。

レイジーと0時

──新作ミニアルバムについても聞かせてください。タイトルはおなじみのカタカナタイトルで「レイジーサンデー」。直訳すると「けだるい日曜日」という意味ですが、どういう意図で付けられたんでしょうか?

石原 けだるい週末に聴きたくなるような音楽、ですね。レイジーには「けだるい」以外にも「穏やかな」という意味もあるので、穏やかな気持ちで聴いてもらいたいという思いを込めています。収録曲の中に「シンデレラボーイ」という曲があって、これが今回自分たちが推している曲なんです。この曲のサビに「シンデレラボーイ0時を回って」という歌詞があるんですけど、これは“0時”と“レイジー”をかけているんです。あと僕の元カノがMaison Margielaのレイジーサンデーモーニングという香水を使っていて、僕も同じ香水を前から持っていたんですよね。今思うと匂いの好みとか、そういうところも似ていたのかな。

──さまざまな意味が込められているんですね。「レイジーサンデー」には素敵な曲がたくさん収められていますが、特に恋愛や失恋について歌った曲が多いですよね。これは石原さんの今のモードが反映されてのことですか?

石原慎也(Vo, G)

石原 そうですね。日によってどんな歌詞を書くか変わるので、そのときどきの自分の感情がリアルに、タイムリーに出ています。

──制作はいつ頃ですか?

石原 去年の終わりくらいから作り始めたのかな?

秋澤 そうね。

石原 レコーディングが終わったのが今年の5月ぐらいですね。去年のうちに作った曲はメロ先行で、それ以外の曲は歌詞から書いたんです。ここ3年くらい、歌詞制作のスランプで。それで今回はチャレンジの気持ちで歌詞から制作する曲を多めにしました。

──スランプは脱しました?

石原 そうですね。ようやく。でもまたちょっときてます。「レイジーサンデー」で歌詞を絞り出してしまったので(笑)。