森野の“自分が作りたいものをうまく表現できない感じ”を曲に
──「凡庸リアライズ」では今作で唯一森野さんが作曲を担当しています。歌詞を書いたのは藤森さんですが、森野さんの気持ちを反映したそうですね。
森野 まあ……そうなってますね。
藤森 わりと反映されてるでしょ?
──「完成形目指していた 想像とは違う生活も現在未だ途中なんだ 今は失敗なんかじゃない」という歌詞が印象的です。これは具体的に森野さんのどのような気持ちなのでしょうか?
森野 俺、普段から曲をちょこちょこ書いていて。でもそのたびに「藤森元生の曲はやっぱりすごい」って思わされるんですよ。全然いい曲書けないなって。曲を書いてるときに元生から新曲のデモが送られてきたりすると、「もう全然負けてんじゃん」っていつも思うし。まあでも、俺、全然ダメだとは思うんだけど……まず表現することが大事だなって。
木村 ダメじゃないよ!(笑)
藤森 森野さんはいつもこっそり曲を作っていて、たまーに聴かせてくれるんです。森野さんの曲がSAKANAMONの作品に採用されたのは今回で3回目なんですけど、この曲では森野さんが歌詞をちょっと書いてきてくれたんですよ。
森野 元生に曲を渡したときに「歌詞のヒントない?」って言われたから、なんとなくメロディに言葉を当てはめたものを1回渡して。
藤森 そこで森野さんの、自分が作りたいものがあるのにそれをうまく表現できない感じと、その葛藤感が、すげえ伝わったの。それで「森野さんってこういうことだよね! こういうことを書きたいけど、うまくいかないってことだよね?」って、森野さんの心の中を考えて歌詞を書いてきた。
木村 なんか悲しいな。
森野 そんな悲しい!? でもこの曲前向きだよ!
藤森 まあ、最後「何時かはきっと」って歌ってるからね(笑)。
TENGAの立ち位置がSAKANAMONの目指す場所
──ラストナンバー「DAPPI」はTENGAとのコラボ曲です。藤森さんは昨年6月にTENGA公式サイト内の連載「TENGA VOICE」に登場しましたが、その際のビジュアルがSNSで注目されていましたね(参照:SAKANAMON藤森元生、性への目覚め&最新ミニアルバム語るインタビュー)。
藤森 なんかTENGAが絡むといい絵が撮れるんですよね。
──「DAPPI」はスタイリッシュなダンスナンバーですが、どのようなイメージで曲作りをしたのでしょうか?
藤森 すごいコンテンツじゃないですか、TENGAって。そのブランドイメージがあるから、互いにいい印象を与えないといけないと思いました。だからただエロくて面白いだけじゃなくて、カッコよくしたかったんですよ。「わー! 何言ってんだよ、SAKANAMON! 面白い!」じゃなくて、「あれ、普通にカッコいいな」って思ってほしくて。
木村 確かに、TENGAってよく見たらおしゃれですもんね。
森野 ある意味、TENGAの立ち位置ってSAKANAMONが目指しているところだと思うんだよね。唯一無二で、ユーモアがあって、でもカッコいいし、市民権を得ている。なんか仲間意識がありますね。
藤森 うん、仲間だね。先輩かな。
木村 TENGA先輩っすよ。
10年間で経験値を積んできた僕らの最新版ができた
──皆さんにとって、「・・・」はどんな作品になったと思いますか?
森野 10周年のアルバムって言ってますけど、10年間の1から10まですべてをひっくるめたアルバムではないんですよね。10年間で経験値を積んできた僕らの最新版を詰め込んだっていう感じです。だから昔を懐かしむとかそういうテンションではなく、最新モードのSAKANAMONが出せた。
藤森 常に最新版を出すっていうのを、ずっとコンスタントに続けてきたのがSAKANAMONだよね。
森野 毎回それをやってきたっていうところが強いバンドだと思う。もっと評価されてもいいのに。
藤森 あははは(笑)。
木村 まあ、もっと強くなろ(笑)。俺も、10年間やってきたから出せたアルバムだと思う。3、4年目には無理っすね、これは。その頃だったら制作中に絶対どっかで「これ、SAKANAMONじゃないよー!」って引っかかってると思う。
──「これはSAKANAMONじゃない」というボーダーラインは?
木村 「テヲフル」とか、SAKANAMONらしくないのかもね。
──「テヲフル」は前作「cue」にも収録されている楽曲ですね。藤森さんが今まで出会ったすべての人に感謝を込めて作ったバラードだそうで。
木村 これまで経験してきたことがど直球に歌詞に表れてる曲ですね。
藤森 こんなストレートにバラードを書いたことがなかったし、やろうともして来なかった。たぶん何年か前だったら「嫌だ!」って言ってると思います。だから移籍して9年目だからこそ書けた曲。それを言ったら「ロックバンド」もらしくない曲か。
木村 そうだね。「DAVID」とかは3、4年目でもやっちゃいそうだけど(笑)。
──「ロックバンド」や「テヲフル」のような歌モノのギターロックがらしくないのが、SAKANAMONらしさなんでしょうね。
木村 みんな恥ずかしがり屋ですから、SAKANAMONは。
藤森 恥ずかしいけど、とうとう王道みたいなところにも手を出せるようになりました。
森野 自分たちの中の王道があるからこそ、普通のバンドが言う王道をはずしとして使えるって言う。そういうことができるのがSAKANAMONらしさですよね。
──アルバムタイトル「・・・」(テンテンテン)には、それぞれの10年を表してるんですか?
森野 そうです。3人それぞれの10年っていう意味もありつつ、今後も続いてくっていう意味での「・・・」でもあります。
藤森 うん。テンテンテン。テンテンTENGA。
木村 「前前前世」みたいに言わないでよ。
──(笑)。4月にはワンマンツアーが始まります。ツアーファイナルは東京・Zepp Tokyo公演ですね。
藤森 そうなんですよ! 2015年にバンド史上最大規模の公演としてZepp DiverCity TOKYOをやって、そこから2年半経って。またZeppでやります(参照:SAKANAMON、ツアー最終公演で「みんなの『キャプテン・アメリカ』に」)。
木村 挑戦ですね。まあでも絶対あの頃より強くなってるから大丈夫、俺たち。ストロングスタイル見せるか!
森野 絶対いいライブができると思う。ワンマンじゃないとできないこともあるし、大きい会場じゃないとできないこともあるし、いろいろ企んで面白いことをやろうと思ってるんで、みんなに来てほしいです!
──10周年を迎えて、今後の展望はありますか?
木村 僕は、また10年続けたいですね。
藤森 いいねえ。
木村 それで20年経ったら、今度は30周年までやりたい。
森野 俺は、SAKANAMONが好きな人に「SAKANAMONを好きでよかった」って思ってほしいですね。ファンの人が「ほーら、SAKANAMONいいでしょ?」って周りの人に言えるようなバンドになりたいです。
-
- 藤森元生(Vo, G)
-
10年浪人しても這い上がる力と、10周年のSAKANAMONをかけました。僕は夢をあきらめません!
-
- 森野光晴(B)
-
その名の通り、10年分の旨みを出していく年にしたいと思います!
-
- 木村浩大(Dr)
-
もっと、心の底から皆さんを元気にしていきたい。アゲていきます!!
- SAKANAMON「・・・」
- 2018年1月17日発売 / TALTO
-
[CD]
2800円 / TLTO-008
- 収録曲
-
- ロックバンド
- STOPPER STEPPER
- 乙女のKANJOU
- DAVID
- SYULOVER
- 凡庸リアライズ
- テヲフル(・・・MIX)
- 反照
- ケーキ売りの女の子
- DAPPI
ライブ情報
- SAKANAMON結成10周年
「・・・」リリース記念ワンマンツアー “延々々” -
- 2018年4月5日(木)香川県 高松TOONICE
- 2018年4月6日(金)広島県 CAVE-BE
- 2018年4月7日(土)福岡県 INSA
- 2018年4月13日(金)宮城県 enn 2nd
- 2018年4月15日(日)北海道 DUCE
- 2018年4月20日(金)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
- 2018年4月21日(土)大阪府 BananaHall
- 2018年4月26日(木)新潟県 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
- 2018年4月27日(金)石川県 vanvanV4
- 2018年5月19日(土)東京都 Zepp Tokyo
- SAKANAMON(サカナモン)
- 専門学校の同級生だった藤森元生(Vo, G)と森野光晴(B)によって2007年12月に結成された。バンド名には「聴く人の生活の肴になるような音楽を作りたい」という思いが込められている。2009年に木村浩大(Dr)が加入し現在の編成に。2010年9月に1stミニアルバム「浮遊ギミック」を発表し、同年12月にビクターエンタテインメントより1stアルバム「na」でメジャーデビューした。2015年4月に3rdアルバム「あくたもくた」を発売。同作のリリースツアーの最終公演を、過去最大規模の会場である東京・Zepp DiverCity TOKYOで行い大成功に収める。2017年5月には東京・Shibuya eggmanのレーベルであるmurffin discs内のロックレーベルTALTOに移籍し、ミニアルバム「cue」を発表。同年11月に結成10周年を迎え、2018年1月にニューアルバム「・・・」(テンテンテン)をリリースした。