08. ワンピース
2021年8月18日発売 1stフルアルバム「パッチワーク」収録曲
「天才なんかじゃないし 才能もないし」──プロデューサーのハヤシケイ(LIVE LAB.)から「一番言いたいことをサビに持っていくのがいい」と聞き、彼女が初めて作詞を手がけた楽曲「ワンピース」のサビの1行目につづったのがこの言葉だった。大きな舞台でキラキラと輝いている彼女だが、そこに至るまでには学生時代から才能輝く人々に囲まれながらオーディションを受け続け、汗と涙を流してスキルを磨いてきた軌跡がある。天才なんかじゃなくてもひたむきに走り続けて、いくつもの夢を叶えてきた。そして目の前に応援してくれる“君”がいて、鳴らしたい音があるから今日もマイクに向かう。初の作詞曲にはそんな彼女のこれまでの道のりと確かな決意が刻まれている。
09. はじまりのサイン
2022年5月25日配信 シングル「はじまりのサイン」表題曲
2021年6月、初ワンマン以来およそ1年半ぶりとなるライブを東京・東京ガーデンシアターで行った斉藤。夏にはZeppツアーを開催し、直接ファンと顔を合わせて歌を届けられる喜びを噛み締めていた。しかし、新型コロナウイルスの余波で年末のホールツアーの大阪公演は中止に。ライブに対する思いがますます募る中、2022年春のライブハウスツアーに向けて作られたのが「はじまりのサイン」だ。霧を晴らすようなさわやかなメロディに乗せて歌われるのは、たくさんの笑顔にあふれたライブの光景。長い暗闇を超えて、この先にはきっと光り輝く未来が広がっている。そんな希望を宿したこの曲で、斉藤はきっとこれからも大切な“君”と心をつなぎ合っていく。
10. イッパイアッテナ
2022年8月17日発売 3rdシングル「イッパイアッテナ」表題曲
「これまでの歌詞のプロットで一番荒れてたんじゃないかな?」と語るほど、この曲をリリースした当時の斉藤はいらだっていた。人とやりとりをする中で、自分が伝えたいことがどうしてもうまく伝わらず、違う受け取られ方をしてしまう。そんな出来事が重なり、彼女は人とのコミュニケーションに大きなフラストレーションを感じていた。ソロデビューミニアルバムの1曲目「ことばの魔法」でまず“言葉”の大切さを歌うほど、斉藤は言葉というものを何よりも大切にして日々を過ごしてきた。だからこそ、正しく相手に思いが伝わらないことにもどかしさを感じ、傷付いてしまっていたのだ。アップテンポの爽快なビートに乗せて、斉藤はフラストレーションをぶちまけるように勢いよく言葉をまくし立てていく。しかし、サビで歌われているのは「いざ試行錯誤のコミュニケーション 面倒くさくとも降伏しねえぞ」という屈強な意思。どれだけコミュニケーションに難しさを感じても、「まあ、そういうこともあるよね」と流すことはせず、決してあきらめずに人に向かって手を伸ばし続ける。そんな斉藤らしい姿勢が反映された楽曲だ。
11. 僕らはジーニアス
2023年2月22日発売 4thシングル「僕らはジーニアス」表題曲
テレビアニメ「齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定」のオープニングテーマ。“思い込み”によって魔力を覚醒させた主人公・レーコから着想して、この曲では「誰もが自分では気付いていないパワーを持っている」ことが提唱されている。2021年から斉藤はまるで全国を駆け巡るバンドマンのごとく続けてツアーを行っていたが、特にこの頃のライブから、オーディエンスの手を引いて前へとグイグイと行進していくような彼女の堂々たる意思を感じるようになった。実際、ライブのMCや取材で「もっと強くなって、私がみんなを守りたい」という発言が多くなってきたのもこの頃だった。「僕らはジーニアス」はそんな彼女がまさに自ら先頭に立ち、大きな旗を掲げて「誰もが天才なんだから、みんなやりたいようにやろうぜ」と笑顔で呼びかけるような1曲。アニメが中国で先に配信されていたことから、出だしにはインパクトのある銅鑼の音が使用されている。ライブでは客席から選ばれた観客が銅鑼を鳴らすユニークな企画「ドラチャレ」も見どころだ。
12. 愛してしまえば
2023年8月9日発売 3rdミニアルバム「愛してしまえば」表題曲
3枚目のミニアルバムで斉藤が向き合ったのは、“愛”という大きなテーマだった。それまでにも彼女は数々の恋愛ソングを届けてきたが、この作品を象徴するリードトラック「愛してしまえば」で高らかに歌うのは、「All you need is love!!」(=愛こそすべて)というスケール感のあるメッセージ。コロナ禍を経てライブを重ねていく中で、ファンとたくさんの愛情を共有し合ってきた斉藤から、このタイミングで愛というテーマが出てきたのは必然的なことだったと思う。いよいよライブでの声出しが解禁となるタイミングで生まれた楽曲だったため、サビにはオーディエンスのためのシンガロングを想定したパートがふんだんに取り入れられている。「愛してしまえば 世界は変わるのさ」──ライブハウスに鳴り響いた彼女とオーディエンスの歌声には、愛こそが世界を豊かにするという希望が満ちあふれていた。
13. だらけ。
2024年7月10日発売 4thミニアルバム「555」収録曲
ソロアーティストデビュー5周年を迎えた2024年夏、斉藤から届いたのは新しい自分を見せることに振り切った、挑戦的なミニアルバムだった。アニバーサリータイミングということで、これまでのサウンド的にも歌詞の内容的にも、これまでのスタイルを踏襲した集大成的な作品にすることも考えられただろう。しかし、彼女は変化や人生の転機を意味する数字「555」というタイトルをミニアルバムに冠し、憂いを帯びたアコースティックな楽曲やチルな雰囲気が漂うシティポップナンバーなど、多彩なジャンルの楽曲で新たな歌唱アプローチを取った。リードトラック「だらけ。」に関して言えば、ホーンを取り入れた爽快なバンドサウンドに斉藤らしさがありつつ、これまでにないほど歌詞が赤裸々だった。「人生波乱万丈 噂だらけの街 あぁもう疲れちったよお」という彼女の本音そのままのフレーズで楽曲はスタート。これまではモヤモヤした気持ちを最終的にポジティブな感情に昇華するような曲が多かったが、「だらけ。」の最後につづられたのは「バラバラに壊れたあたしのハートは残念ですが 修復不可能、未解決だー!」という、どうにもならないありのままの状況だった。すべての悩みがすっきり解決するなんてことはなく、人生にはどうすることもできない問題もある。リスナーとの絆を深め、信頼を築き上げてきた5年間があるからこそ、彼女は自分を取り繕うことはせず、そのときのリアルな思いをさらけ出すように歌い上げた。
14. あしあと
2025年8月6日発売 ベストアルバム「Rabbit Girl」収録曲
ソロアーティスト・斉藤朱夏の道のりを刻んだベストアルバム「Rabbit Girl」の最後を飾るのは、彼女にとって約1年ぶりとなる新曲「あしあと」。サイダーガールの知(G)が斉藤の音楽活動の軌跡を汲み取って書き下ろしたギターポップナンバーだ。爛々と鳴り響くのは、みずみずしいギターサウンドときらめくような鍵盤の音色。そこには胸をくすぐるような、どこか切ない夏の風が吹いている。夢見た場所を目指して、彼女は小さな体で懸命に走り続けてきた。その道のりを振り返ったときに見えるのは、きっとキラキラとした喜びや希望だけではない。思わず立ち止まりそうになったことも、くじけそうになったこともあっただろう。しかし彼女は「止まりたくなんかない 二度と」と力強く前を見据え、「踵で青い夢を鳴らそう」と高らかに歌うのだ。そこにはこれまでの思い出も胸に残る痛みもまるっと引き連れ、“君”と一緒に前へと進んでいく斉藤の等身大の思いが込められている。自らの歩みを振り返った今、斉藤は靴紐をギュッと結び直し、まだ見ぬ景色に向かって駆け出していく。この道の先に彼女はどのような新しい足跡を残していくのだろうか。その足跡の先にはきっと、夢見たステージとたくさんの笑顔が広がっている。
公演情報
朱演2025 LIVE HOUSE TOUR「Rabbit Girl」
- 2025年8月9日(土)大阪府 BIGCAT
OPEN 17:15 / START 18:00 - 2025年8月11日(月・祝)愛知県 THE BOTTOM LINE
OPEN 17:15 / START 18:00 - 2025年8月16日(土)神奈川県 CLUB CITTA'
[1回目] OPEN 15:00 / START 15:45
[2回目] OPEN 18:15 / START 19:00
プロフィール
斉藤朱夏(サイトウシュカ)
2015年に「ラブライブ!サンシャイン!!」の渡辺曜役で声優デビューし、作中のスクールアイドルグループAqoursのメンバーとしての活動をスタートさせる。2019年8月にミニアルバム「くつひも」でソロアーティストデビューした。2021年8月に1stフルアルバム「パッチワーク」を発表。本作の収録曲「ワンピース」「よく笑う理由」で初めて作詞に挑戦した。2024年4月から7月にかけてキャリア最大規模のツアー「5th ANNIVERSARY 朱演 2024 LIVE HOUSE TOUR」を行っている。7月にソロデビュー5周年記念ミニアルバム「555」を発表。8月に地元である埼玉の東武動物公園で初の野外ワンマンライブ「5th ANNIVERSARY 朱演2024『天使と悪魔のささやき』」を開催した。2025年8月にベストアルバム「Rabbit Girl」をリリース。本作を携えて、8月にライブハウスツアー「朱演2025 LIVE HOUSE TOUR『Rabbit Girl』」を行う。