ナタリー PowerPush - Rihwa

発信すべきは愛で包み込んだ音楽

デビューからの1年半で得たスキル

──そのほかの新曲だと、「こういうのもRihwaだよ」とがんがんアピールされているような「Don't be afraid!」「LOVE ME DO」「CREATURE」も印象的でした。ロック、カントリー、パンクと幅広いジャンルを、それぞれの楽曲に合った声色や歌い回しで表現していますね。

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バラードだけじゃなく、「CHANGE」で表現したような元気でポップでロックな自分もやっぱり私らしさなのかなと思っているので。「Don't be afraid!」は作った当時にAC/DCやKissをよく聴いてて、そこに影響されつつ、ああいうカッコいいリフを入れたロックな曲を作りたいと思ったんです。「LOVE ME DO」は自分のルーツを見せるアルバムにするってところで、やはりカントリーは外せないなと。しかもそこにロックンロールテイストを加えて、大好きなシェリル・クロウも意識しながら自分のフィルターを通すと……こんな曲ができました(笑)。もともとこういうサウンドが大好きだし、それを自分で表現できたこと自体もうれしかったです。

──「LOVE ME DO」の少しやさぐれた感のある歌い方、めちゃめちゃカッコいいですよね。

私もめっちゃ気に入ってます。こういうルーズな歌い方はたぶんデビューからの1年半がなければ歌えなかったものだし、レコーディング中はブースの中でシェイカーを持って踊りまくったんですよ。テンションが上がっちゃって(笑)。

──あはははは(笑)。曲全体にライブっぽい臨場感が出てたのはそのせいなのかも。ちなみに「デビューからの1年半がなければ歌えなかった」というのはなぜ?

レコーディングを重ねるうちに、フェイクやアドリブの部分でちょっとしたニュアンスの付け方がいろいろできるようになったんです。言葉では表現しにくいんですけど、自分なりのニュアンス……Rihwaニュアンスみたいな(笑)。2年前まではなんのスキルもなかった自分がそれをできるようになったのは、確実に今まで得てきたものが生かされてるんだろうなって。

──先ほど「こういうサウンドが大好き」とのお話も出ましたが、今回それを自身のフィルターを通して表現できたことも大きな達成感があったのでは?

そうですね。達成感はすごかったです。あと今後もどんどんこういう曲を増やしていきたいなって思いました。

人間は無駄の多い生き物、愛は唯一の取り柄

──「CREATURE」も歌い方としては新たなチャレンジだったんじゃないでしょうか? ぐいぐい前へ出てくる力強さがありつつ、Rihwaさんの小柄な体からは想像がつかないドスの効いた歌声も圧巻でした。

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今までこれほど全身の力を振り絞って歌った曲はなかったですね。翌日、力の入れすぎで首が動かなくなっちゃったんです(笑)。あと面白かったのは、普段ギターを弾きながら歌っているので、レコーディング中に自然と体がエアギターを始めちゃって。ただ、その超カッコいいバンドの音に乗って歌っていたら、リズムやテンポ感まですごくよくなったんです! 結果、レコーディングは3テイクくらいであっという間に終わりましたね。

──「CREATURE」は歌詞についても伺いたいのですが、すごく意味深というか、何かを風刺しているようにも感じました。

これはもう、自分にはトゲがあると思われてもいいくらいストレートに思ってることを書いた曲で。私の中で人間っていうのは、ほかの動物と比べてもカッコ悪いし、情けないし、弱いし、がっかりさせられたりする生き物なんですね。ほかの虫や動物はすごく理にかなった行為や行動をしてるのに、人間はなんて無駄の多い生き物なんだろうって。でも唯一の取り柄というか、最大の武器は愛を持ってることだと思っていて。だからこの曲では、そういうダサイところがあったりくだらないことで争ったりする人間だけど、だからこそ愛を大事にしてやっていこうよって。ちょっとした訴えというか、叫びを書いてみました。ほかの曲では喜びや幸せ、楽しさで愛を表現してるけど、この曲では怒りや悲しみ、憎しみさえも愛に包んでぶつけてみようと思って。かなりパンクな曲になったなと思います。

愛で包み込んで発信しなきゃ

──「CREATURE」の話にも出てきましたが、全体的にこのアルバムのベースには“愛”というキーワードも流れているんでしょうか?

そうですね。もともとそういうアルバムにしたかったわけじゃないんですが、通して聴いてみると「やっぱり私、愛というものをすごく大事にしてるんだ」って思いました。

──それは制作が終わってから気付いたこと?

はい。完成後はいつも客観的に聴き直すんですが、最終的にはどれも「愛を持って接していこうよ」ということを歌ってるのかなって。それって普段から私が考えてることだし、自分もそうやって生きていきたいと思ってるんですよね。憎しみの連鎖と同じように愛の連鎖も確実に存在していて、私はどっちに乗るか?と聞かれたらもちろん愛の連鎖に乗っていきたいし、憎しみの連鎖に入りそうになってもグッて自分で止めて愛の連鎖に変えていく……みたいな。そういう人になれたらいいなと思いながら日々生きているんです。それがずっと心の根っこの部分にあるというか。だから曲を書いてても自然とそこにたどり着いちゃうのかなって。

──なるほど。

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あと私は家族にたくさんの愛で育ててもらったので、それをもったいぶらずに周りにもいっぱい発信していきたいなって。せっかく音楽というツールが自分にあるんだから、そこで何を発信する?ってなったら、やっぱり愛なんですよね。怒りとかいろんな感情ももちろんあるけど、それらはただぶつけるんじゃなく、最終的には愛で包み込んで発信しなきゃって。

──でも“愛”って目に見えないものだからこそ表現がすごく難しいと思うんです。価値観も人それぞれだし。

そうですよね。でも大なり小なり、みんないろんな壁にぶち当たることってあるじゃないですか? そんなときに私は「愛をもって対応すること」が正解だと思っていて。私の愛の形と他人の愛の形が違うのは当然だし、それが例えば厳しくすることなのか撫でてあげることなのかはわからないけど、そこに愛があるならどちらも正解なんじゃないかなって。周りを見てても、愛をちゃんと感じてる人の話って愛を知ってる感がすごいあるんですよ。“愛”を言い換えるなら相手を思いやることで、それはすごく難しいけど誰もが知ってるはずだし、きっとできるはずって私は信じてます。

Rihwa 1stアルバム「BORDERLESS」 / 2014年4月2日発売 / TOY'S FACTORY
初回限定盤 [CD+DVD] / 3700円 / TFCC-86464
通常盤 [CD] / 2800円 / TFCC-86465
CD収録曲
  1. CHANGE
  2. Little Tokyo
  3. モンスターのかくれんぼ
  4. 春風
  5. Don't be afraid!
  6. LOVE ME DO
  7. GOOD LOVE with Michelle Branch
  8. 約束
  9. 変わらないコト
  10. カラフル
  11. CREATURE
  12. Last Love
  13. bird
初回限定盤 DVD収録内容
Music Clips
  1. CHANGE
  2. 約束
  3. モンスターのかくれんぼ
  4. Last Love
  5. 春風
Rihwa "Grrrr!!!" Live Tour 2013 from SHIBUYA CLUB QUATTRO
  1. CHANGE
  2. Right Now
  3. Don't be afraid!
  4. モンスターのかくれんぼ
  5. 約束
  6. 可愛いおねがい
  7. Last Love
  8. bird
Rihwa(りふぁ)
Rihwa

札幌出身の女性シンガーソングライター。中学卒業後にカナダに留学し、滞在中に音楽に目覚める。帰国後より地元のライブハウスなどで活動を始め、インディーズでシングル3枚とアルバム1枚をリリースする。2012年は「JOIN ALIVE 2012」「SUMMER SONIC 2012」「a-nation 2012 stadium fes.」などの大型ライブイベントに出演、パワフルな歌声とチャーミングなキャラクターで多くのファンを獲得する。同年7月にシングル「CHANGE」でTOY'S FACTORYからメジャーデビューし、10月に映画「劇場版 TIGER & BUNNY -The Beginning-」の挿入歌「約束」を2ndシングルとして発売。同年6月にドラマ「ラスト・シンデレラ」の挿入歌として書き下ろした「Last Love」をリリースし、2014年2月には三浦春馬主演ドラマ「僕のいた時間」の主題歌「春風」を発表してお茶の間にも広く名を知らしめた。同年4月、待望の1stアルバム「BORDERLESS」をリリースする。