ナタリー PowerPush - Rihwa

新作は孤独を歌ったロック& ミシェル・ブランチと夢のコラボ

小さな体に大きなギターを抱え、キャッチーな楽曲を届けてきたRihwa。彼女が初の両A面シングル「モンスターのかくれんぼ / GOOD LOVE with Michelle Branch」をリリースした。

ニューシングルの表題曲のひとつ「モンスターのかくれんぼ」は、今までのイメージをいい意味で裏切る、心の内面を歌ったエモーショナルなロックチューン。一方「GOOD LOVE with Michelle Branch」は世界的な歌姫ミシェル・ブランチとのコラボ曲で、彼女と意見を交換し合いながら作ったもの。こちらは力強く、熱いラブソングに仕上がっている。

今回はRihwaにそれぞれ異なる魅力を持つタイトル曲と、かわいらしい仕上がりのカップリング曲「It's you!」について話を聞いた。 

取材・文 / 吉田可奈

自分のドロドロした部分を歌にした

──新曲「モンスターのかくれんぼ」はメッセージ性の強いロックですね。歌詞はモンスターが主人公になっていて。

Rihwa

ありがとうございます。この曲に登場するモンスターは私の中の、ドロドロした部分を具体化したものなんです。

──ドロドロした部分?

はい。この曲を書いた時期は、札幌と東京を行き来しながら楽曲を作っていた頃で。当時は音楽をやるために自分が一番いい環境に行こうと思って上京したんですが、やっぱりすぐにはうまくいかなくて。うまくいかないことが続くと、小さなことで悩んだり、孤独になったり、不安になるんですよね。でも外にいるときはいつもの元気なRihwaでいたいからこそ、無理やり元気に振る舞ってたんです。そんなときにふと私は明るい歌も歌うけど、こういう暗い気持ちも私の一部だし、歌にしておきたいなと思って書き始めたんです。

──モンスターは心の中の葛藤を表現していたんですね。

そうですね。でもドロドロした部分って、すごくピュアな気持ちが発端だと思うんですよ。不安や孤独は誰もが感じるものだし、誰かと接していたいと思うからこそ生まれるものだと思うんです。でもこの感情はいくらピュアな気持ちが発端だとしても、一歩間違えたら人を傷付けるようなことを引き起こしてしまうかもしれない……。そんな感情を表すためのシンボルが欲しいなと思ったときに、心はピュアなのに、ビジュアルや偏見で勘違いされてしまうモンスターがピッタリだと思ったんです。

──なるほど。人と付き合う中で「これ以上やると傷付ける」っていう加減ってありますよね。

そうなんですよね。私は三姉妹の中で育って、いっぱいケンカもして、ここまでされたら痛いなとか、これを言ったら相手を傷付けるなっていうのを身をもって学んで。あとこんなことを言われたらうれしいんだなっていうようなことも、経験で覚えたんですよね。これがもし誰とも接していなかったら、いったいどんなことが起きるんだろうと想像しながら曲を書き始めました。

──曲の最後のほうでは、モンスターの切なさや寂しさも表現されていて胸をつかまれました。

その言葉はうれしいですね。不安や孤独ってすごくマイナスなイメージが多いけど、必ずしも悪いことだとは思わないんですよね。でも、世の中にはその孤独が発端の悪いニュースも多くて……。もし誰かの助けがあったら、こんなことにはならなかったんじゃないかなって思うニュースもあって。自分が今の世の中を見て思うことなんかも、この曲には込めてるんです。

歌詞は自分の吐け口

Rihwa

──Rihwaさんは悩みを人に言えるタイプですか?

あまり言わないですね。でも、悩みのもとになっているものを解消していこうとする意識はすごく高いですね。だからこそ、仕事でもプライベートでも人としっかり関わっていこう、人に自分の気持ちを伝えていこうと意識してます。

──そんな中で感情的になってしまうときはありますか?

うーん。一緒に仕事をしてるスタッフさんに対しては、お互いいいものを作りたいという思いで関わっているので、ヒートアップして感情的になりそうなときは一度グッと抑えて家に気持ちを持ち帰るんです(笑)。そのあとでどうして感情的になりそうだったのか考えて、整理するようになりました。

──大人ですね!

いやー、最近ですけどね(笑)。こう見えて、昔から人に対してズバッと言うのが苦手なんですよ。やっぱり相手には好かれたいし、嫌われるのは怖いんですよね。……こういう自分の感情も、モンスターの中に入っているのかもしれないですね。

──歌っている姿や、こうやって話している姿をみると、すごくサバサバしてそうですが。

そうですか!? でも、やっぱり嫌われるのは怖いですよ。自分を否定されるのは怖いし。

──でも思っていることはズバッと歌詞にしていますよね。そこに怖さはないんですか?

それがないんですよね。きっと歌詞が自分の吐け口になってるからだと思うんです。自分を表現することで自分のことを肯定したいし、弱さをさらけ出すことで、誰かの共感を得たり、救えたりするのなら、私が生きている意味にもなるし……。歌に関しては、自分の気持ちをさらけ出したいという気持ちのほうが、怖さや臆病な気持ちより勝っているんです。

「こういうRihwaも見れてうれしい」

──「モンスターのかくれんぼ」はサウンドも、その“吐き出す感じ”が表現されたエモーショナルな曲に仕上がっていますね。

はい! この曲のデモはもうちょっとゆっくりだったんですが、思いっきり感情を乗せられるようにテンポを速めてロックな曲に仕上げました。最初に歌ったのが、初めてのワンマンライブだったんですよね。ライブって“リスナーにどうやって伝えよう”って一番考える場所なんです。伝えるためには、どこに言葉のアクセントを置いたらいいか、どこに間を置いたらいいかというのをすごく考えて。そのあとでのレコーディングだったので、今までにないベストなテイクを録れたと思います。ライブ後のアンケートでも一番反応があったんですよ。それのおかげで、今回のリリースにあたってスタッフの団結力も強まった気がします。

──どんな反応が多かったんですか?

一番多かったのが、「こういうRihwaも見れてうれしい」というものですね。「CHANGE」のようなキャッチーでポップなイメージが強いみたいで、こういうエモーショナルでロックな曲はすごく新鮮だったみたいです。

──ライブで盛り上がりそうな曲ですよね。

左からミシェル・ブランチ、Rihwa。

そうなんです。この曲が入るだけで雰囲気もガラッと変わるし、アクセントになってすごくいい役割を果たしてくれるんです。

──ジャケットもすごく印象的です。

タイトルをこのモンスターが爪で引っかいたような筆跡にしたんです。爪って自然にあるものなのに、使い方を間違えると人を傷付けてしまう。この曲の象徴のようなものだと思って、ジャケットにもそのイメージを反映させたんです。ちなみにランプの下からちょろっとのぞいているのがモンスターです(笑)。

──かわいい!

このモンスターは自分で描いたんですよ。ビデオクリップの中ではこのモンスターが街をさまよっているので、ぜひそちらにも注目してほしいですね。

Rihwa(りふぁ)

札幌出身の女性シンガーソングライター。中学卒業後にカナダに留学し、滞在中に音楽に目覚める。帰国後より地元のライブハウスなどで活動を始め、インディーズでシングル3枚とアルバム1枚をリリースする。2012年は「JOIN ALIVE 2012」「SUMMER SONIC 2012」「a-nation 2012 stadium fes.」などの大型ライブイベントに出演、パワフルな歌声とチャーミングなキャラクターでファンを獲得する。同年7月にシングル「CHANGE」でTOY'S FACTORYからメジャーデビューし、10月に映画「劇場版 TIGER & BUNNY -The Beginning-」の挿入歌として書き下ろした「約束」を2ndシングルとしてリリース。2013年2月に3rdシングルとなる「モンスターのかくれんぼ / GOOD LOVE with Michelle Branch」を発表した。