粗探しは野暮。行間はポジティブに解釈すべし
──確かにこの映画ってネガティブな要素がないですよね。
そうそう。ストーリーでも「なんでそこにヘリコプターがあるの知ってるの?」「なんでドウェイン・ジョンソンは死なないの?」とかいろいろツッコミどころがあると思うんですよ。でもそれは指摘するほうが野暮なんです。ダサい行為。ヘリのありかは途中で把握してたんだろうし、主人公が死なないのも、きっと特殊部隊に在籍していたときに特殊訓練を受けてるからなんですよ。それが画面に映ってないってだけ(笑)。そういう意味では、この映画ってプロレス的ですよ。行間を全部ポジティブに解釈して楽しむっていう。リアリティとか気にして、ストーリーの粗探しをした自分に対して「野暮だった」とツッコミを入れるのが、この映画のだいご味だと思いますね。
──お気に入りのシーンはありましたか?
ドウェイン・ジョンソンと巨大動物以外だったら、悪役の姉弟たちのやりとりかな。めちゃくちゃ悪いやつらなんだけど、なぜか憎めないんですよ。2人のやりとりはコメディみたいですごく楽しかった。後半になればなるほど、あいつらは面白くなりますね。
フリースタイルダンジョンで戦っていたときの心境と友情
──ちなみに上野さんも「フリースタイルダンジョン」では、劇中のドウェイン・ジョンソンのように猛獣のごときチャレンジャーたちと戦っていました。当時はどんな心境だったんですか?
やるしかねえなって気分でした。だけど、ドウェイン・ジョンソンみたいに無敵ではなかったですね(笑)。本当に追い詰められてましたよ。自分が負けた回が放送されたあとは、街中のみんなに悪口を言われてるような気分になってましたし。正直、収録現場に行きたくないと思ったのは1回や2回じゃないですからね。漢(a.k.a. GAMI)くんですらそんな感じになってた。
──本当にガチな戦いだったんですね。
生活のすべてを捧げてる感じでした。だから自然とモンスターたちが団結するようになったんです。収録のときも不安だから、誰が言うでもなく楽屋とかでサイファーしてたし、俺の出番のときに漢くんが舞台袖まで付いて来てくれたりもしてた。負けたときもR-指定が「大丈夫っす。俺が止めます」って言ってくれたり。めちゃくちゃ硬い絆で結ばれてましたね。そうじゃなきゃ、あんなに長いこと続けられなかった。
──その熱い友情は、「ランペイジ 巨獣大乱闘」の主要キャラたちの関係性にも通じるものがありますね。
それ、こじつけっぽくないですか(笑)。でも、そうですね。実際俺らの絆は本当に固かった。番組スタッフ的には、収録前の俺らがあまりにもピリピリしてたから、気を使って舞台裏を撮らないようにしてくれてたんです。でも俺はモンスターの舞台裏を撮ったほうが絶対に番組が面白くなると思ったんで、スタッフに「撮ってほしい」とお願いして。それ以降、観てる人たちにも俺たちがどんな気持ちでモンスターをやってるのかが伝わっただろうし、そこにチャレンジャーのハングリーな気持ちとかが絡まって、「フリースタイルダンジョン」に複雑なドラマが生まれていったところはあると思います。
──モンスターを卒業するときはどんな気持ちだったんですか?
俺自身は引き際をどこにしようか考えていたんです。そしたらチコ(CHICO CARLITO)とT-Pablowがタイミングをみて卒業したいと言っていて。あの状況では音楽制作に集中することができなかったんですよ。2人はまだ若いからそれは当然のことだと思う。でも般若さんは「残る」と言ったから、俺も最初は残るつもりでした。モンスターの責任をすべて般若さんに負わせることはできないので。でも誰かが辞めて、誰かが残るのも変だし、みんなでいろいろ相談して、最終的に般若さん以外は全員辞めることにしました。
──モンスターの中でロック様的な存在はいましたか?
般若さんですね。精神的支柱でした。俺たちは個人で戦うと言うより、団体戦という意識が強くて。自分が捨て駒になって、相手を弱らせたりとか、そういうことすら考えてましたから。モンスター全員が、般若さんのところまでは絶対に行かせないという気持ちでやってました。
デカいものを観ると幸せな気持ちになれる
──この映画のオススメポイントを教えてください。
ザックリ言うと、大規模なクラブイベントみたいな映画だなって思いました。アゲアゲの曲がガンガン流れてアッパーに盛り上がるんだけど、たまに泣きの曲がかかったりして。で、気持ちよくなってミラーボール見て泣きそうなってると、次にしょうもない曲がかかったり(笑)。
──想定できない展開のオンパレードですもんね。
ライブ感がある作品ですよ。IMAXとか3Dの上映もあるんで、バカデカい画面でドウェイン・ジョンソンの見得を楽しむのもいいと思う。あと、この作品は、劇場にビールの売り子さんを入れたほうがいい。「お姉さん、こっちこっち」とか呼んだら、誰かが「うるせえよ!」ってヤジ飛ばして、みんなで「わっはっはっはっ!」ってなるみたいな……それじゃただのプロレス会場か(笑)。映画ってありえないものを観せてくれるものだと思うけど、「ランペイジ 巨獣大乱闘」はこっちの想定をはるかに上回るほどありえないものを観せてくれる。こんなデカいものを観たのひさしぶりですもん。やっぱり大きいものっていいんですよ。普通じゃないから。それが何かを破壊してるっていうのが、シンプルに最高だった。
──「巨大化が、止まらない。」というキャッチコピーとシンクロしましたね!
そうそう。お相撲さんやプロレスラーがすごいのは、まずデカいからなんですよ。デカいってだけで福が来そうじゃないですか。デカいものを見ると、人って幸せな気持ちになれるんです。あのラストシーンとか……ネタバレになるから言えないけど、今のご時世的にありえない展開なのが本当に最高だった。観終わって、めっちゃ幸せな気持ちになりましたよ。
- ストーリー
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巨大化が、止まらない。遺伝子実験の失敗により、ゴリラのジョージ、オオカミのラルフ、ワニのリジーが巨大化、そして凶暴に。サメの成長が止まらない遺伝子やチーターのスピード、カブトムシの強靭さなどさまざまな生物の遺伝子を備えた3体は、人類には制御不能の特殊生物に変貌を遂げた。そんな中、霊長類学者のデイビスは人類代表として、街中で大乱闘を繰り広げる巨獣たちの制止を試みるが……。
- スタッフ / キャスト
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- 監督:ブラッド・ペイトン
- 出演:ドウェイン・ジョンソン、ナオミ・ハリス、マリン・アッカーマン、ジェイク・レイシー、ジョー・マンガニエロ、ジェフリー・ディーン・モーガンほか
© 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
- サイプレス上野(サイプレスウエノ)
- ヒップホップグループ、サイプレス上野とロベルト吉野のラップ担当。2000年に地元・横浜の後輩であるロベルト吉野(Turntable)とグループを結成。ロックイベントへの出演やアイドルとの対バンなど、ジャンルレスな活動を繰り広げ、ヒップホップリスナー以外からも人気を集めている。2007年には1stアルバム「ドリーム」をインディーズからリリースし、同年「FUJI ROCK FESTIVAL」への出演を果たした。その後もコンスタントに作品を発表し、2017年9月にはSKY-HIや石野卓球をゲストに迎えたミニアルバム「大海賊」をリリースしてメジャーデビューを果たした。またサイプレス上野はラッパーとしての活動と併行して、自伝的書籍「ジャポニカヒップホップ練習帳」の執筆、「週刊少年チャンピオン」の連載マンガ「サウエとラップ~自由形~」の監修、テレビ朝日「フリースタイルダンジョン」、Abema TV Ameba Special「ライムスター宇多丸の水曜THE NIGHT」、FMヨコハマ「Tresen」へのレギュラー出演など多岐にわたって活躍している。