ナタリー PowerPush - 横浜“オシャレ”座談会
サイプレス上野とロベルト吉野 / Dorian / やけのはら
サイプレス上野とロベルト吉野が、9月14日に「横浜 / 神奈川」をテーマにした最新ミニアルバム「YOKOHAMA LAUGHTER」をリリースする。そして、彼らとはレーベルメイトであるDorianも、やけのはらが共同プロデューサーとして参加した最新ミニアルバム「Studio Vacation」をこの夏リリースしたばかり。
この2作品の発売を記念して、ナタリーではサイプレス上野とロベルト吉野、Dorian、そして両作品と関わりの深いやけのはらの4者による横浜座談会を開催。新作の話題はもちろん、4人の出会い、そしてDorianの意外な過去などさまざまな話をしてもらった。
取材・文 / 宮崎敬太 撮影 / 中西求
よく横浜の人って、言われるんですけど……(Dorian)
──今日は、横浜を中心に活動されている皆さんにお話を伺いたいと思います。
やけのはら まあ、Dorianは横浜となんにも関係ないですけどね(笑)。地元でもないし、住んでるわけでもない。
──えーーーー!? やけのはらさんの作品に参加したり、横浜のPan Pacific Playaともよく一緒に活動している印象が強いので、僕はてっきり……。
やけのはら 俺が言わなかったら「横浜在住の4人が……」みたいな感じで、そのまま進んでた可能性がありますね!(笑)
サイプレス上野 (Dorianに向かって)ヤバいすね。括られてますよ。
Dorian はい。よく言われるんですけどね……。
──Dorianさんに関する重大な誤解が解けたということで……。では、最初に皆さんの出会いについて教えてください。
やけのはら 僕とDorianとは3年くらい前にイベントで共通の友人を介して。上野くんたちとは、そんな遠くない横浜同士なので、かれこれ10年近く前にイベントで共通の友達を介して。……なんかお見合いみたいな言い方だね(笑)。
サイプレス上野 「Hey Mr. Melody」ってイベントっすね。
Dorian 僕が初めて2人(サ上とロ吉)を紹介してもらったのも、「Hey Mr. Melody」に呼んでもらったときです。多分3年くらい前ですかね? ライブも2~3回観たことあったから、(紹介される前から)全然知ってましたよ。「RAW LIFE」の2005年と2006年にライブを観て面白いなあ、と思いました。楽しいなって。
ヒップホップの流れにあるラップとかはもういいかな(サイプレス上野)
──今回、サ上とロ吉のお2人による新作「YOKOHAMA LAUGHTER」に収録されている「★~Play~★」でそんな4人が共演されましたね。
やけのはら 「横浜 / 神奈川」というキーワードのミニアルバムだから、そもそも横浜で友達の僕らにも声がかかったという。まあ、Dorianくんは横浜じゃないので、アレなんですが。今回はスケジュールもタイトだったのでこれまで作ってたトラックの中から上野くんたちに合いそうなやつを選んで、そこにDorianのキーボードを足して送りました。
──サ上とロ吉のお2人は最初にトラックを聴いたとき、どう思われましたか?
ロベルト吉野 今までにない感じでしたね。
サイプレス上野 今回、(やけのはらから)3曲もらったんですけど、その中でも一番変な感じだったから、これにしようって。
やけのはら あの曲は3拍子っていうか、6拍進行だからね。
──通常ヒップホップのビートは4拍子なので、作詞は難しそうですね。
サイプレス上野 そうですね。難しい曲でした。全然(歌詞が)ハマらないんで。
Dorian でも、ラップが入ったことによって、すんなり耳に入りやすくなったなって思います。イレギュラーなビートだったので、どうなるかなーと思ってたんですけど、全然違和感なかった。
──リリックに「このノリが何かを変えたことだけは確か」とありますが、この「何かを変えた」というフレーズは、サ上とロ吉のヒップホップシーンにおける立ち位置の変化を歌ったのでしょうか?
サイプレス上野 いや、もうちょっと気楽な感じっていうか。うーん……、まあ、確かに聴いている人が増えてるなっていうのがあって。それはずっと引っかかってました。
やけのはら 今回のアルバムにはヒップホップリスナーじゃないと聴けない歌詞というのはないよね? ヒップホップの何かを踏まえてたりとか、こういう感覚をわかってないと理解できないとか、そういうのは止めたんだなって思った。
サイプレス上野 そうすね。あと(前作の)「WONDER WHEEL」はヒップホップを強く意識して作ったアルバムだったから、いわゆるヒップホップの流れにあるラップとかは今はやらなくていいかなって。
ラップソングでありがちなトピックの歌詞はないよね(やけのはら)
やけのはら 確かに、ラップソングにありがちなトピックがあんまりないよね。わかりやすいBACK IN THE DAYSモノとか、夏モノとか。あと、雰囲気はわかるけど全体的に何が言いたいかわからないものが増えた。歌詞がちょっと抽象的になったのはなんでなの?
サイプレス上野 「BUMP」とかも何を歌ってるか、普通の人はわからないと思うんです。あれは葛西純っていうプロレスラーに向けて作った曲なんですけど、それが誰かに引っかかればいいかなってレベルだから。
やけのはら 2枚作ってひと通りやったから、というのもある?
サイプレス上野 それはあるな。あと、七夕野郎(サ上とマイク大将のユニット)で直接的な歌詞をひと通りやって気が済んだというか。銭湯のことが好きだったら、そのことをそのまま書いちゃってて(アルバム「七夕野郎」収録「銭湯態勢」)。それってすげー楽しいけど、超簡単なやり方だから、それをアルバム通してやるのは……。別に、俺たちがヒップホップマナーを打ち出しても何も広がらないかな、と思って。そういうのはNORIKIYOくんとかANARCHYとか、すごい良い仲間たちがやってくれてるから。そこは恵まれてると思う。
CD収録曲
- YOKOHAMA LAUGHTER
- (再)契り
- BUMP
- 空っぽの街角 REMIX feat. LUVRAW&BTB
- ★~PLAY~★
- BRIGHTEST HOPE feat. NORIKIYO
- しゅばばばJAPAN feat. ZZ PRODUCTION, NONKEY, ISOP, THROB, WATT, kamuri
- SEX ON THE BEACH (GUNHEAD REMIX)
CD収録曲
- fake vacation
- shower
- summer rich feat. hitomitoi
- sweet technic
- melty color
- like a wave
- secret promise
サイプレス上野とロベルト吉野(さいぷれすうえのとろべるとよしの)
サイプレス上野(Rap)とロベルト吉野(Turntable)が、2000年に横浜ドリームランドで結成したヒップホップグループ。通称“サ上とロ吉”。グループのコンセプトは「HIPHOPミーツallグッド何か」。「決してHIPHOPを薄めないエンターテイメント」と称される印象的なライブパフォーマンスが話題になり、ヒップホップリスナー以外からも幅広く評価されている。2007年には1stアルバム「ドリーム」をインディーズからリリースし、同年「FUJI ROCK FESTIVAL」への出演を果たした。2009年には2ndアルバム「WONDER WHEEL」を発表。その後に行われたLIQUIDROOM ebisuでのワンマンライブの模様を収録したDVD「WONDER WHEEL THE LIVE」も発売されている。
Dorian(どりあん)
2009年にリリースされた七尾旅人×やけのはら「Rollin' Rollin'」でアレンジャーを務め、一躍注目を集めたトラックメイカー。Myspaceを通じて知り合ったやけのはらの勧めで、2009年に自主制作CD-R「Slow Motion Love」を発表する。2010年には七尾旅人、やけのはら、G.Rina、LUVRAW & BTBが参加した1stアルバム「Melodoes Memories」をリリース。同作収録曲「Morning Calling」のビデオクリップは、「MTV VIDEO MUSIC AID」のBest Dance Video部門にLADY GAGA、UNDERWORLDらとともにノミネートされている。2011年8月にはミニアルバム「Studio Vacation」をリリースした。
やけのはら
DJ、ラッパー、トラックメーカーなど多岐にわたる活動で注目を集めるアーティスト。DJとしては年間100本以上のパーティでフロアを沸かせ、多数のミックスCDを発表。ハードコアパンクとディスコを合体させたバンドyounGSoundsではサンプラー&ボーカル担当。2009年に七尾旅人×やけのはら名義でリリースした「Rollin' Rollin'」が話題を呼ぶ。2010年に初のラップアルバム「THIS NIGHT IS STILL YOUNG」をリリースしている。