ナタリー PowerPush - Pay money To my Pain
ラウドロックシーンに遺した"遺伝子"の秘密
ZAX
Q1. アルバム「gene」の方向性について、制作開始時はどのように考えていましたか?
初期衝動というものを突き詰めましたね。
Q2. 制作はいつ頃からスタートし、完成までにどれくらいかかりましたか?
2012年の2月くらいから取りかかり、ベーシックトラックは5月には録り終わってましたね。
Q3. 昨年の時点で、今作のバックトラックのすべてを録り終え、Kさんのボーカルも一部入れ終わっていたと聞きました。そのKさんのボーカルをそのままに、歌を入れられなかった曲に外部の別のボーカリストを招いて完成させるという変則的な方法について、正直どう思いますか?
Q4. 多数のゲストボーカリストが参加していますが、誰か1人に絞らず曲ごとに変えた理由は?
Q5. ゲストボーカリストはどういう基準で選び、声をかけましたか?
A3~5. これについてはすごく話し合ったし、でも4枚目は必ず出そうというのはみんな一緒で。Kが生前尊敬してたボーカリストたちに頼むことになりました。
Q6. ゲストボーカリストが歌うPay money To my Painの楽曲を聴いて、感じたことはありますか?
やっぱり彼らが歌うと彼らの歌になるっていうか、すごいなと。Kもそうだけどあいつが尊敬してる人だからね。やっぱりすごい。
Q7. アルバム「gene」が完成し、発売を前にした現在の心境は?
こんな形になっちゃったけど聴いてほしい。すごいから。まあ音楽は自由なものだから押し付けがましいのはやだけど。
Q8. Kさんが亡くなってからまもなく1年が経とうとしています。Kさんが亡くなったと初めて聞いたとき、どう思いましたか? また、皆さんにとってKさんとはどういう存在でしたか?
うまく答えられません。
Q9. Kさんの命日に当たる12月30日にはZepp Tokyoで「From here to somewhere」と題したライブがありますが、どういう内容のものになるんでしょうか?
来たらわかります。
Q10. 皆さんにとってPay money To my Painとは?
俺のすべてであり家族です。これからもずっと。
Pay money To my Painの"遺伝子"がラウドロックシーンに残したもの
2年10カ月ぶりに発表されるPay money To my Painのニューアルバム「gene」は、日本のラウドロックシーンの"今"を凝縮したような作品に仕上がった。Kが亡くなる前から決まっていたアルバムタイトルの「gene」は遺伝子を意味する言葉で、「裸の自分たちを伝える」「自分たちが影響を受けた90年代のロックの遺伝子を今のシーンに残していく」という意味が込められている。アンケートでPABLOが「原点に帰りたいという思いが出発点」と語っている通り、ヘビーな曲はよりヘビーに、メロウな曲はひたすらメロウに作り上げられた、非常に純度の高い作品集と言えるだろう。
そういった、いつも以上に純度の高いPTPの楽曲を歌うゲストボーカリストの人選も、現在のラウドロックシーンを象徴するものとなっている。KがPTPの前に所属していたバンド、GUNDOG時代からともにシーンを盛り上げてきたRIZEのJESSEは「Illumination」で彼らしいボーカルスタイルを見せつけ、長年にわたりラウドロックを盛り上げるべく戦ってきた戦友へ敬意を表している。そんなJESSEが現在、PTPのT$UYO$HI、ZAXとTHE BONEZで活動をともにしているのも納得のいく話だ。
PTPの遺伝子を受け継ぐ後輩たちも、KやPTPに対するリスペクトを全力で表現。直系の弟分であるcoldrainのMasatoは、同郷の仲間であるlynch.の葉月とともに「Resurrection」で熱い競演を繰り広げる。Masatoのエモーショナルな歌声と、葉月による強烈なスクリームはKのもとにも間違いなく届いているはずだ。またCrossfaithのKenとTeruは「Respect for the dead man」で、Kのボーカルと絡み合うようなスクリームを聴かせてくれる。さらにPTPとツーマンライブ経験も多いONE OK ROCKのTakaは、日本語詞&英語詞を織り交ぜたミディアムナンバー「Voice」ですべての感情をさらけ出している。それぞれの競演曲からは、後続たちがPTPの遺伝子を確実に受け取っていることが感じられる。
そして、PTPの先輩にあたるKYONO(WAGDUG FUTURISTIC UNITY / T.C.L)も「God drive」で、KYONOにしか表現できないボーカルスタイルを提示。1980年代末から2000年代前半にかけてTHE MAD CAPSULE MARKETSのフロントマンとして国内外で精力的な活動を続けたKYONOだからこそ表現できるその歌声に、Kも間違いなく強い影響を受けている。KYONOがシーンに放った遺伝子をKやPTPのメンバーが受け取り、そこから同胞たちや後輩たちへと遺伝子を受け継いでいく……今回の「gene」というアルバムでは、その相互関係が色濃く示されているのではないだろうか。
Kが遺した"遺伝子"=「gene」はこの先、PTPを敬愛してきたアーティストたちやリスナーたちに、さらなる影響を及ぼすことだろう。もしかしたらゲストボーカリストのファンが初めてPTPの作品を手にする、貴重な機会を与えることにもなるはずだ。そうすることでKやPTPの遺伝子はさらなる広がりを見せ、「gene」というアルバムが今後の日本のラウドロックシーンにおける1つの指標になるのだ。
Kはすでにこの世にはいないが、彼と仲間たちが作り上げた音楽と、その音楽に対する姿勢や精神は決して消えることはない。これからも、永遠に。
収録曲
- gene(Instrumental)
- Sweetest vengeance(Album mix)
- Last wine
- Truth fragile
- Respect for the dead man <featuring Ken&Teru from Crossfaith>
- God drive <P.T.P×KYONO from WAGDUG FUTURISTIC UNITY/T.C.L>
- Invisible night ~murderer~
- Resurrection <P.T.P×Masato from coldrain & 葉月 from lynch.>
- Innocent in a silent room
- Illumination <P.T.P×JESSE from RIZE/The BONEZ>
- Voice <P.T.P×Taka from ONE OK ROCK>
- Rain
ライブ情報
From here to somewhere
2013年12月30日(月)
東京都 Zepp Tokyo
OPEN 18:00 / START 19:00
料金:前売 3900円 / 当日 5000円
チケット一般発売日:2013年12月1日(日)
Pay money To my Pain
(ぺいまねーとぅまいぺいん)
2004年、GUNDOGの活動を停止させたK(Vo)を中心に結成。2006年12月にシングル「Drop of INK」でメジャーデビューを果たす。英語詞で歌われるラウドロックサウンドと、Kのエモーショナルなボーカルで着実に人気を高めていく。2008年にK、PABLO(G)、T$UYO$HI(B)、ZAX(Dr)の4人編成となり、「SUMMER SONIC」や「AIR JAM」といった大型フェスに出演。またDeftonesやEvanescence、Suicidal Tendenciesなど海外アーティストとも競演し、話題を集めた。今後のさらなる飛躍が期待されていたが、2012年12月30日にKが急逝。2013年11月、すでに制作が終了していた楽曲と、ゲストボーカルを迎えた楽曲からなる4thアルバム「gene」をリリースする。