ナタリー PowerPush - POLYSICS
3人が語るボコーダー&シーケンサー論
「バンドありきで作った曲」を意識した
──これをシングルにして、POLYSICSのどういう面を表したいと思ったんですか? ポップネス?
ハヤシ いや、この曲はポップを意識したというよりは、ボコーダーボイスと、ベースとドラムでどんどん引っ張っていくダンスロックな感じで、それは今まであまり作ってなかったから、ということですね。
──ポリらしいソリッドでタイトなバンドサウンドですよね。ヤノさんは演奏するとき何を考えました?
ヤノ(Dr, Vo) しっかりドラムを叩くこと、っていうのはいつも変わらずなんですけど、やっぱり今回は前回とは違って、バンドありきで作った曲なんで、そこは意識しました。ベースとドラムでしっかり基盤を作っておいて。
──リズム隊のコンビネーションが問われると。こっちのほうがやりがいはある?
ヤノ いや、どっちもありますよ。いろんなパターンを持っているのがポリの面白さなんで。
──同じリズム隊として、ベーシストはどうですか? 一緒に演奏してて。
ヤノ (いきなり声が大きくなる)いやもう、素晴らしいですよ!
一同 (笑)。
ヤノ リズムにシビアですからね。
──結構ダメだしがあるんですか。
ヤノ ……(気弱げに)どうなんすかね……。
フミ いや、ヤノがダメだしされてると思ってるなら、そうなんじゃない?(笑)でも私はレコーディングのときはそんなに言わないですよ。
ヤノ シーケンスありきのバンドだから、そこに合わせるのが前の2人がやってること。オレはそこに常に集中してやってるだけです。
ナマもシーケンスも前に出したい
──シーケンスに合わせて演奏するってかなり難しいものなんですか。
ヤノ 難しいですよ。というかシーケンスが細かいから。
ハヤシ 今回苦労したのはそこで。自分が感覚で打ち込んだシーケンスのトラックに合わせてドラムが演奏するんだけど、コンプの長さとかで、ドラムがちょっと後ろに聞こえたりとかする。ジャストに叩いてるんだけど、後ろに聞こえちゃう。そこでまた打ち込みを変えたりして、ドラムをタイトに聴かせるっていうのはあったかな。
──おお、なるほど。やっぱりズレてるように聞こえるのは気持ち悪い?
ハヤシ うーん……昔は、それはそれで“味”でいいかなと思ってたけど、この曲に関しては、めちゃくちゃタイトに聴かせたかったから。
ヤノ そこは気になりますよね。
ハヤシ うん、だからそこではドラムに合わせて、ナマに合わせて、電子音を変えていく作業をやったり。
──ああ、逆にね。
ハヤシ 最近多いですね、そういう作業。シーケンスがあって、バンドを重ねていって、全体を聴いて、またシーケンスを組み直して、音を差し替えていく、みたいな。
──なるほど。それがポリのバンドサウンドの秘密なんですかね。
ハヤシ ああ、でもそれはあるかもしれない。そこで音が変わることには全然こだわりがないから。
──その「後ろに聞こえる」というのは、ヤノくんのクセじゃなく、シーケンスの組み方の問題なんだ。
ハヤシ そうそう。ハイハットの“チキチキ”の“チ”の音がちょっと長いとか。だからそれを短くしてみたり。初期のドラムはガレージ的な、バシャバシャとやかましいタイプのドラムだったから、家で組んできたシーケンスと合わせればOKだったけど、今は聴かせ方が変わったから。ナマもシーケンスも同じぐらい前に出したい。
──ハードでラウドだけど、ラフではない、というのが今のポリのバンドサウンドですね。
ハヤシ うん、そうですね。
リズムが合ってるから美しいとは思わない
──フミちゃんはどういう点に気をつけて演奏しましたか。
フミ 私は……ボコーダーを使うことで“わかりやすい熱量”が出ないかも、と思ったので、演奏で熱量みたいなのは欲しいと思って。正確ということではない高揚感みたいなものは演奏で出したいなあと思って演奏してました。だから……。
ハヤシ マシーンボイスがメインのクールなダンストラックにはしたくない、と。
フミ ……わかんねえな、それは。
ハヤシ あっそ(笑)。
フミ うーんと……だから、熱量が欲しかった! 演奏で。
──普通のナマのバンドみたいな、前に行ったり後ろに行ったりのグルーヴ感のあるバンドサウンドではなく、あくまでもジャストなんだけど……。
フミ ジャストなんだけど、もうちょっと細かい、タイム感ぐらいの感覚……。
──譜面には出てきにくいような微妙なニュアンス。
フミ うん、うん。そこはこだわった。リズムが合ってるから美しいとは私、思わないから。そこに魅力は感じない。クリックには合ってるんだけど、その中でどうするっていう。シーケンスと一緒にやるときは絶対正しく来るわけじゃないですか。でもその上でどうするか。ただ合わせるだけじゃなくてね。
──打ち込みのテクノを聴いて、みんなリズムに合わせて踊ってるんだけど、ノリ方はそれぞれで踊り方にも個性が出る、というような話ですか。
フミ そうそう。私はその感じかな。そういう感じは出したかったんだよなあ。単に正確さを求めるなら打ち込みでも良かったし。
──せっかくナマのドラムとベース使ってるんだから。
フミ ナマのドラムのアガる感じというのを出したかった。
ハヤシ それは大事にしてるところだよね。正確にディレクションしながら作り込んでいくんだけど、ただ正確なものより、そこにドライブ感とか勢いみたいなものも一緒にレコーディングしたいなと。それが明らかにズレてたりするのはダメなんだけど。その加減が難しい。
──そこはヤノくんが入って、トリオになって、よりタイトな演奏が可能になったから、そういうニュアンスも出しやすくなってきたのかもしれませんね。
ハヤシ うんうん。そうですね。一個一個の音をさらに前に出して。
ニューシングル「Everybody Say No」/ 2012年10月24日発売 / Ki/oon Music
CD収録曲
- Everybody Say No
- ワトソン 2012
- KI.KA.I.DA! 2012
初回限定盤DVD収録内容
- ありがTOISU!
- Hot Stuff
- FOR YOUNG ELECTRIC POP
- プロテニス
- 明るい生活
- ワチュワナドゥー
- 人生の灰
- DNA Junction
- MY SHARONA
- MAKING SENSE
- POLYSICS OR DIE!!!!
- Shout Aloud!
- カジャカジャグー
- Young OH! OH!
- ピーチパイ・オン・ザ・ビーチ
- Rocket
- ドモアリガトミスターロボット
- Buggie Technica
POLYSICS(ぽりしっくす)
ハヤシ(G, Vo, Syn, Programming)、フミ(B, Vo, Syn)、ヤノ(Dr, Vo)からなるニューウェイブロックバンド。1997年、高校生だったハヤシを中心に結成。1999年にアルバム「1st P」をインディーズからリリースし、2000年にメジャーデビュー。独自の音楽性と過激なライブパフォーマンスで人気を集める一方、2003年にはメジャー1stアルバム「NEU」をアメリカでリリースし、初の全米ツアーも実施するなど海外での活動も本格化させる。2010年3月には初の日本武道館公演を実施し、初期メンバーのカヨ(Syn, Vo, Vocoder)がこのライブを最後にバンドを卒業。以降は3ピースバンドとして活動を続け、バンド結成15周年を迎える2012年に記念アルバム「15th P」をリリース。同年3月にライブ通算1000公演を達成した。同年10月にシングル「Everybody Say No」を発表。12月にはニューアルバム「Weeeeeeeeee!!!」をリリースする。