ナタリー PowerPush - POLYSICS
3人が語るボコーダー&シーケンサー論
POLYSICSがニューシングル「Everybody Say No」をリリースする。8月リリースの「Lucky Star」からわずか2カ月で登場するこの新作は、ボコーダーボイスをフィーチャーした表題曲に、カップリングの「ワトソン」(2006年リリース「KARATE HOUSE」収録)「KI.KA.I.DA!」(2001年リリース「ENO」収録)という過去のレパートリーのリメイク2曲を加え、ポリのエキセントリックで過激な面をクローズアップしたもの。「Lucky Star」のポップネスとは対照的な、しかしいかにもポリらしい内容で12月5日リリース予定のニューアルバム「Weeeeeeeeee!!!」への期待感を募らせる最高の1枚となった。
取材・文 / 小野島大
ボコーダーはもう1人のボーカリスト
──なぜこの短期間で2枚続けて出すことになったんですか。
ハヤシ(G, Vo, Syn, Programming) 「Lucky Star」は久々にテクノポップ爆発な感じで。そのままアルバムに行っちゃうと、アルバムの代表的な曲があれだと思われちゃうかなと。そうするとアルバムのイメージが限定されちゃう気がして。だからアルバムに向けて、「Lucky Star」とは違う部分を見せたかったんです。で、こういう「Lucky Star」とは違うタイプの曲をシングルとして出そうと。
──これも「Lucky Star」同様、シングルにするつもりで書き下ろしたんですか?
ハヤシ いや、違いますね。次のシングルに向けて何曲か候補があったんですけど。
フミ(B, Vo, Syn) これが一番ピンと来たの。ムードが。「Lucky Star」との対比という部分で。
ハヤシ ボコーダーっていうのはPOLYSICSの“もう1人のボーカリスト”だから(笑)。それをフィーチャーした曲を、ここ最近作ってなかったから。
──じゃあボコーダーを使う曲を作るのが大前提だった?
ハヤシ それもなかったね。作るうちに自然に、これはボコーダーでやるのはどうだろうと思いついてやってみたらハマって。お、いいね、これシングルでいきたいねって。そこでやっとシングルに決まって、さらに作り込んでいったんです。
──ボコーダーを使うかどうかの判断はどうやってつけるんですか。
ハヤシ 実際にオレが歌ってみて、ボコーダーボイスと比べてみて。「Everybody Say No」ってサビのフレーズの譜割ができたときに、生声で歌うイメージがなかった。ボコーダーがハマらなかったら違うボーカルで歌って、シングルにもなってなかったかもしれない。
ハヤシくんが歌うと暑苦しさが増す(笑)
──ボコーダーを使うと、人間的な声からかけ離れた機械みたいなイメージになりますが、そういうことを狙って?
フミ なんかねえ、ハヤシくんが(生声で)歌うと暑苦しさが増すんですよ(笑)。
──暑苦しい!(笑)
ハヤシ (笑)。エモい?
フミ なんか暑苦しいというか生々しすぎるというか。そういう感じが……。
──あまり良いこと言ってないように聞こえますが(笑)。
フミ あははははっ!(笑) なんか、この曲にはハヤシくんのそういう感じはいらないなあって思って。
──熱血な感じはしますよね。
ハヤシ シャウトを得意とする歌唱法だからね(笑)。
フミ そっちのほうの熱量がいらないと思うときにボコーダーにトライすることが多いですね、レコーディングなんかでは。
ハヤシ この曲に限らず、ね。
──ある種のクールさが欲しかったと。
フミ うん、アタシはそうだな。
ハヤシ でもね、クールさっていうよりは……「Everybody Say No」てメロディのあるフレーズを生声で歌うとハマリが悪いっていうのは確かにあって。それが「暑苦しい」のかどうかはわからないけど(笑)。こういうメロディのあるものを熱く歌うのは、ちょっと合いづらいなと、自分でも思う。
──そのジャッジに、歌詞の内容って関係してます?
ハヤシ いや。「Everybody Say No」以外のAメロBメロの歌詞はボコーダー使うって決めてから書いたから。
──じゃあ「Everybody Say No」っていうサビのフレーズのメロディには、生声よりボコーダーボイスが合っているという判断。
ハヤシ そうです。
歌詞はメッセージではなく感覚で作る
──歌詞はどういう意図が? レコード会社の作った資料には「メッセージ性の強い歌詞」とありますが。
ハヤシ いや……(笑)。
フミ ふははは!(笑)
──メッセージ入ってるんですか?
ハヤシ いや……前作もそうですが、歌詞書くときは、あんまりメッセージは……あんまりじゃないな、メッセージというよりは感覚で作っていくんで。そこにいかようにもとれるような言い回しを使うことはあるけど。基本は、音を聴いてリズムを感じて生まれた言葉かな、というのはある。
──こういうことが伝えたくて歌詞を書くというよりは、その歌詞を聴いてそれぞれが好きに解釈すればいいと。
ハヤシ はい、そうです。
──「Everybody Say No」ってフレーズはかなり強い言葉ですが、どこから出てきたんですか?
ハヤシ これもう、バックトラックを聴きながらこのフレーズをボコーダーでいろんな歌い方をして試して、ぴったりハマったのが「Everybody Say No」って言葉だったんです。それをリフレインしていくのが気持ちよくて。
──じゃあ単なる言葉の響き、語感の気持ち良さを考えただけ。
ハヤシ そうです。
──そこになんらかの意味性やメッセージがあるわけではない。
ハヤシ うん。そのフレーズをずっと繰り返している気持ち良さだけ。ただ確かに「Everybody Say No」って言葉は強いから、みんな何かしらの意味やメッセージを見い出すよなーというのはあったけど。えへへへ。
ニューシングル「Everybody Say No」/ 2012年10月24日発売 / Ki/oon Music
CD収録曲
- Everybody Say No
- ワトソン 2012
- KI.KA.I.DA! 2012
初回限定盤DVD収録内容
- ありがTOISU!
- Hot Stuff
- FOR YOUNG ELECTRIC POP
- プロテニス
- 明るい生活
- ワチュワナドゥー
- 人生の灰
- DNA Junction
- MY SHARONA
- MAKING SENSE
- POLYSICS OR DIE!!!!
- Shout Aloud!
- カジャカジャグー
- Young OH! OH!
- ピーチパイ・オン・ザ・ビーチ
- Rocket
- ドモアリガトミスターロボット
- Buggie Technica
POLYSICS(ぽりしっくす)
ハヤシ(G, Vo, Syn, Programming)、フミ(B, Vo, Syn)、ヤノ(Dr, Vo)からなるニューウェイブロックバンド。1997年、高校生だったハヤシを中心に結成。1999年にアルバム「1st P」をインディーズからリリースし、2000年にメジャーデビュー。独自の音楽性と過激なライブパフォーマンスで人気を集める一方、2003年にはメジャー1stアルバム「NEU」をアメリカでリリースし、初の全米ツアーも実施するなど海外での活動も本格化させる。2010年3月には初の日本武道館公演を実施し、初期メンバーのカヨ(Syn, Vo, Vocoder)がこのライブを最後にバンドを卒業。以降は3ピースバンドとして活動を続け、バンド結成15周年を迎える2012年に記念アルバム「15th P」をリリース。同年3月にライブ通算1000公演を達成した。同年10月にシングル「Everybody Say No」を発表。12月にはニューアルバム「Weeeeeeeeee!!!」をリリースする。