ナタリー PowerPush - Perfume

海外進出を経て新たな挑戦 高純度ダンスアルバム「LEVEL3」

3年前だったらみんなから受け入れられなかったと思う

──今回の収録曲の中で特に気に入ってるのはどの曲ですか?

かしゆか

かしゆか 私は「Clockwork」が好きです。頭の3曲が音数も多くてすごく勢いがあるんですけど、その明るくて華やかな雰囲気が4曲目でスッと消える。そういう、空気を変える役割をしているところがいいですね。もちろん曲自体もシンプルな音とメロディがすごく好きです。クセになるというか、頭に残る感じで。

あ~ちゃん 私は「Enter the Sphere」ですかね。「いったいいつから計画を練ってたんですか?」みたいなところが。だってこれ、もともとはグローバルサイト用の曲で、アジアツアーではオープニングでもやらせてもらったんですよ?

──この曲はある意味、Perfumeの海外進出のテーマソングみたいなところがありますよね。

あ~ちゃん そうそう。だからこれが1曲目に来るってことは「このアルバムは2年間の集大成です」って宣言してるようにも感じさせてくれます。それに新しく追加された歌の部分にも、なんだか深い意味がありそうで。「光の奥から歩いてくる」ものって、やっぱり希望とか明るいものしかないと思うんですよ。「目を凝らしたらきっと、みんなの身近にもそれがあるはず」っていう。ぎゅうっと吸い込まれるようなイメージの曲で、大好きです。

のっち うんうん、鳥肌だよね。私のお気に入りは「Dream Land」なんですけど、完成した音を聴いたときに「まさかこれが最後の曲になるなんて」ってビックリしましたね。真ん中らへんでちょっとしたブレイクタイムみたいな感じで使われるのかと思いきや。私はアルバムのエンディングテーマとして聴いてるんですけど、もうイントロが始まった瞬間「キター!」みたいな。感動しますね。

──前作「JPN」がキャッチーなポップスをたくさん詰めこんだ内容だったことを考えると、「LEVEL3」は方向性がガラッと変わりましたよね。

のっち 全然違いますよね。これ聴いてから「JPN」を聴くと、かわいいアルバムだなあって思います。

──「JPN」について皆さんは当時「Perfumeにとっての等身大なアルバム」と話していたんですが、「LEVEL3」も、今のPerfumeにとってこれはこれで等身大だと思うんですよ。

のっち そう言われると確かに、韓国のダンスフェスとか「SONIC MANIA」に出演する機会を与えてもらって、ダンスイベントにも足を踏み出して活動の幅を広げてるところですしね。等身大といえば等身大なんだと思います。私たち自身の中には「今はこういうのがPerfumeです」っていう気持ちはあんまりないけど、でもきっと中田さんは今のPerfumeをイメージして曲を作ってくれたんだろうし。

──「⊿(トライアングル)」が発売されたとき、皆さんは「このアルバムはだいぶ背伸びしてる」って言ってましたよね?

のっち あー、言ってました言ってました(笑)。

──「LEVEL3」は「⊿」より断然振り切れた内容なのに、少しも背伸びした印象はありませんでした。まあ、4年も前のアルバムと比べたら皆さんが成長しているのも当たり前だとは思いますが。

かしゆか 海外ツアーをやったり韓国や日本でダンスフェスに出たことで、自分たちの中でいろんなことを抵抗なく受け入れられるようになって、こういう音がカッコいいと思えるようになった、これもPerfumeらしさの1つだと思えるようになった、っていうのもあるんじゃないかな。やっぱり年齢もあると思いますね。「⊿」の頃は20歳だったのが今は24~25歳になって、その間にいろんな音楽に触れて、いろんなことに目を向けて、すごく素敵って思えるものにたくさん気付けたので。月日を重ねたからこそ受け入れられたり、自分の中で消化できるようになったものってあるんじゃないかと思いますね。

──この数年間、Perfumeはほかの人には経験できないようなことをいっぱいやりましたからね(笑)。

かしゆか 海外でハプニングもあったりとか(笑)。けっこう強くなりました、私たち。

あ~ちゃん 今回みたいなアルバムって、3年前だったら絶対にみんなから受け入れられなかったと思うんですよ。「Spending all my time」のリミックスとか、3年前に発売されてたらたぶん私も受け入れられず、戸惑いながら取材を受けてたんだろうなって。でも今はそれが完全に飲み込めてて、むしろこの曲を材料にライブをするのが超楽しみって思えてるので、それだけ自分たちが進化してるというか、成長して大人になれたってことなのかなって思ってます。

「本当のアウェイってこういうことなのかな」って

──「海外でハプニングがあった」とのことですけど、ヨーロッパツアーでも何かあったんですか?

あ~ちゃん ステージの後ろのカーテンが発注してた商品と違ってて、裏側に入っても全然隠れられないとか(笑)。

のっち あとはフランスで、床がヒールと合わなくてね。

あ~ちゃん 床に毛足の長いカーペットが貼ってあったんですよ。で、靴のヒールの裏にすべり止めが付いてるので、足が全然すべらなくなっちゃったんです。「これじゃ踊れないよね」「でも、もう本番1時間半前だし、もうこのままやるしかないか」って言ってたら、舞台監督が「いや、絶対変えたほうがいいと思う。変えましょう!」って言ってくれて。

のっち 本番直前なのに全部剥いで、黒い木の床にしちゃって。

あ~ちゃん それまでカーペットにいっぱいバミリを貼り付けてたんですよ。曲によってもいろいろ立ち位置が違うし。そのバミリをもう1回貼り替えなきゃいけなくなるのに、監督自らバーッと剥いでくれて。そしたら本番ですごくよく踊れて「パリが一番よかったんじゃない?」ってことになりました。

──先ほど韓国のダンスフェス「ULTRA KOREA」の話題がちょっと出てきましたが、このイベントでは客層に合わせて、初めてノンストップで曲をつなぐライブをやったんですよね。手応えはありましたか?

のっち

のっち いやー、やっぱり難しかったですね。ダンスミュージックのイベントに出るのが初めてだったし、「本当のアウェイってこういうことなのかな」っていう感じで。韓国在住のファンの方は私たちのことを待ってくれてたんですけど、ほとんどの人には日本語も通じないし。純粋に踊りに来てる人ばっかりだから、いつものPerfumeのライブみたいな「みんなで一緒に一体感を出して盛り上がろう」というやり方が、なかなか通用しなかったというか。

あ~ちゃん あと夜に屋外で強い光を焚いてたから、ステージに何十万匹ってくらいたくさんの虫が集まってきたんですよ。足の裏も虫だらけだし、歌いながら目とか耳、口の中に入っちゃうんじゃないかってくらい虫が飛んでて。それでうまく力を出し切れなくて、けっこう圧倒されて帰ってきちゃったんです。それからちょっとの間、歌番組で韓国のアーティストさんに会うとその日の思い出がよみがえってきて、ちょっとドキッとしちゃってたというか(笑)。

──そんなに大変だったんですか。

あ~ちゃん でもついこの間、テレビ番組の収録のときにBIGBANGのV.Iさんが「韓国のライブはどうだった?」って聞いてくれて。「いやー、すごく緊張しちゃって……」って答えたら「でも韓国の人はPerfumeのことみんな好きだから! 絶対大丈夫。もっと来て!」って、すごく前のめりに言ってくれたんです。ちょっと自信をなくしかけてたんですけど、現地の人にそう言ってもらえたのがすごくうれしかった。だから早くまた挑戦したいなって。ダンスミュージックのイベントに免疫がなくてどういう盛り上がりをするのか読めてなかったところがあったけど、まだまだ開拓の余地があるってことだなって思ってます。

──アウェイということで言えばフランスの「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」でのパフォーマンスも、観客が音楽ファンばかりではないうえに、Perfumeを知らない人も多かっただろうからアウェイだったのでは?

のっち でも確かにアウェイではあったんだけど、あれはやっぱり皆さんPerfumeを観に来たわけではなくて、(真鍋)大度さんの技術だったり、電通さんのプレゼンだったりを聞きに来たわけで。あくまで私たちはその一部だったので(笑)。

あ~ちゃん あれは私たちのパフォーマンスというよりも大度さんのパフォーマンスっていう意識があったから、そういう意味でのいつもと違う緊張感がすごかったですね。で、終わってからすごく反応があったからビックリしました。スタンディングオベーションっていうものを初めて見たし。「ピューワッ!」っていう、そんな音をどうやって口から出すんですか?みたいな音がいろんなところから飛び交ってて。海外の方って正直なので、興味がないと遠慮なくバーって外に出て行っちゃうんですけど、あのときは心からそのパフォーマンスを「すげえ!」って思ってもらえてるのを感じましたね。

ニューアルバム「LEVEL3」 / 2013年10月2日発売 / UNIVERSAL J
初回限定盤 [CD+DVD] / 3900円 / UPCP-9005
通常盤 [CD] / 3059円 / UPCP-1001
CD収録曲
  1. Enter the Sphere
  2. Spring of Life(Album-mix)
  3. Magic of Love(Album-mix)
  4. Clockwork
  5. 1mm
  6. 未来のミュージアム
  7. Party Maker
  8. ふりかえるといるよ
  9. ポイント
  10. だいじょばない
  11. Handy Man
  12. Sleeping Beauty
  13. Spending all my time(Album-mix)
  14. Dream Land
初回限定盤DVD収録内容
  • 1mm -Video Clip-
  • 「ずっと好きだったんじゃけぇ~さすらいの麺カタPerfume FES!!」メモリアル♡
  • 「Perfumeのただただラジオが好きだからレイディオ! 」
Perfume(ぱふゅーむ)

Perfume

かしゆか(樫野有香) 、のっち(大本彩乃)、あ~ちゃん(西脇綾香)により2000年に広島で結成。2003年に活動拠点を東京に移してからは、プロデューサーにcapsuleの中田ヤスタカを迎え、インディーズレーベルで精力的に活動を開始。2005年にシングル「リニアモーターガール」でメジャーデビューを果たし、近未来的な世界観のサウンドとダンスで耳の肥えた音楽ファンの間でも高い評価を獲得する。2007年に「NHK環境・リサイクルキャンペーン」テレビCMに出演し、CMソング「ポリリズム」が大ヒット。テクノポップブームの火付け役となり、2008年には日本武道館、2010年には東京ドームでのワンマンライブを成功させる。2011年にはピクサー映画「カーズ2」の挿入歌&日本語吹き替え版エンディングテーマに、アメリカのスタッフによる指名で「ポリリズム」が抜擢。2012年にユニバーサルJに移籍してアルバム「JPN」のiTunes Store世界配信を実施し、同年4月に「キリンチューハイ 氷結」のCMソング「Spring of Life」のCDシングルをリリースする。10月にアジア4カ国で行われた初の海外ツアーは大成功のうち終了し、翌2013年にはヨーロッパ3カ国での単独公演を実施。フランス・カンヌで開催された世界最大の広告祭「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」に日本人アーティストとして初めてゲストとして招待され、プロジェクションマッピングを駆使したパフォーマンスで喝采を浴びる。同年10月にアルバム「LEVEL3」をリリース。12月に東京ドーム、大阪・京セラドーム大阪にて計4日間の単独公演を予定している。