音楽ナタリー Power Push - PENGUIN RESEARCH

自分たちの背中を押す「ボタン」

筒井康隆の小説から生まれた「旅人の唄」

──「旅人の唄」は曲調はアゲアゲですけど、歌詞は文字通り旅先の情景を描いた、映像をイメージさせるものになっていますね。

左から堀江晶太(B)、生田鷹司(Vo)。

堀江 「旅人の唄」の歌詞は、筒井康隆さんの「旅のラゴス」という小説から着想を得てるんですよ。この小説は、町から町へと旅するラゴスという男の生涯を延々と追い続けるだけなんですけど、それこそ人生は長い旅であるとか、その目的は意外と移ろっていくものだとか、そういうことを考えさせられる瞬間が随所にあって。そこから自分の人生と旅をシンクロさせた詞を書いてみたくなったんですよね。で、旅には出会いもあれば別れもあるわけですけど、そこで得た大切な出会いを忘れないようにしたいというか、それを支えにこの先も自分はぶらぶら旅していくんだろうなと感じたので、そういう歌詞にしました。

生田 僕も晶太に勧められて「旅のラゴス」を読んだんですけど、主人公のラゴスは訪れる町でいろんな出来事に遭遇するものの、その結末はハッピーエンドともバッドエンドともとれないんですよね。で、その微妙な空気のまますっと別の町に移っていて「え?」ってなる。

堀江 いわゆるオチを放棄してる感じだよね。

生田 でも、僕らの人生もそんな感じで、あらゆる出来事が劇的な結末を迎えるわけじゃないし、むしろ曖昧な結末のほうが多いんですよね。じゃあ人生において劇的な出来事ってなんだろうと考えた上で晶太の歌詞を読むと、「君に会えてよかった」っていう一節が心に入ってきたんですよね。今もライブやイベントに来てくれる方々と触れ合ったりしてるんですけど、そのたびに、やっぱりみんながいてくれるから僕らは活動できるし、ここで出会えたのは奇跡みたいなものだなって思えるので。

お客さんと一体になってる瞬間が一番楽しい

──PENGUIN RESEARCHは今年の1月にメジャーデビューして、約8カ月の間に計3枚のシングルと1枚のミニアルバムをリリースし、ワンマンライブツアーも行いました。それを踏まえて、現在のバンドの姿をどう見ていますか?

堀江 僕は、以前よりライブがすごくよくなってるなと思っていて。

生田 「こういうライブにしたい」っていう方向性が、自分たちの中でちゃんと見えるようになったよね。

──具体的には?

左から生田鷹司(Vo)、堀江晶太(B)。

堀江 最近は、僕がMCをしているので、まず個人として言いたいことは全部言える。バンドのパフォーマンスにしても、後悔がなくなったというか、「今日は全力を出し切った」と思えるようになったんですよね。もちろんそれで満足しているわけではないんですけど、とりあえず自信を持ってプレイできているなと。

生田 晶太がMCをするようになってから、僕は煽り担当になったというか、自然と役割分担みたいなことができて、バンドの形もより見えやすくなったと思うんですよね。以前はMCも煽りも自分の役割だと思ってちょっと気負ってたところもあったんですけど、バンドのメッセージを伝える役は晶太が適任だし、だったら僕はそれを思い切り盛り上げてやろうと、それぞれ得意分野を伸ばすような感じで。結果、手応えも感じてるので、今はライブがすごく楽しいですね。

堀江 その楽しさって、鷹司は言語化できる?

生田 えっ?

──どうしたんですかいきなり。

堀江 いや、ライブって演奏する側からしたら、密室で爆音を出してるだけじゃないですか。だから、ライブが好きなことは間違いないんですけど、同時に「ライブって何がいいんだろう?」とも思うんですよ。みんなちゃんとそれに対する答えを持ってるのかなって、最近疑問に思ってて。

──ではもっとも身近なサンプルとして、生田さんの考えるライブの楽しさって、なんですか?

生田 僕は、以前は純粋に人前で歌うことが楽しかったんですけど、最近はお客さんが楽しんでくれているのを見て、それに呼応するかのように自分もより楽しくなるんですよ。そうやってお客さんと一体になってる瞬間が一番楽しいなって思いますね。その一体感はステージ上のメンバーに対しても同様に持っていて、相乗効果でその場にいる人全員がどんどん楽しくなるみたいな。

堀江 僕は、ライブでお客さんの顔をあんまり見られないんですよ。目が合うと恥ずかしいから。

──(笑)。

生田 そうなんだ? 俺はめっちゃ見てる。

堀江 それはすごいと思う。俺はなるべく目は合わさないように、前だけは見てるから。

生田 晶太は、とりあえずそのままでいいんじゃない。無理はしないほうが。それでも、ライブ中は晶太が楽しんでるのは伝わってくるけどね。横でベース弾きながらめっちゃ暴れてるし。

堀江 楽しくて暴れてるんだけど、ふと「あれ? なんで俺暴れてるんだろ?」って我に返っちゃって。「なんでぐるぐる回りながらベース弾かなきゃいけないんだ。っていうか弾きにくいし」って、棒立ちになるっていう(笑)。

──9月3日から愛知を皮切りに、東京と大阪を回るワンマンツアーが始まりますが、堀江さんとしてはそこでライブの楽しさを見つけたいところですね。

左から生田鷹司(Vo)、堀江晶太(B)。

堀江 そうですね、個人的な課題として。で、先ほど話したように、最近はすごくいいライブができているので、今回のワンマンもたくさんの方に観ていただきたいです。

生田 ここ2~3カ月の対バン企画などを通して、バンドとしてかなり鍛えられたので、その成果をお見せしたいですね。今の僕らの全力をぶつけますので、お楽しみに。

ニューシングル「ボタン」 / 2016年9月7日発売 / SME Records
期間生産限定盤 [CD+DVD] / 1599円 / SECL-1978~9
通常盤 [CD] / 1300円 / SECL-1977
期間生産限定盤CD収録曲
  1. ボタン
  2. brave me
  3. ボタン instrumental
期間生産限定盤DVD収録内容
  • ボタン ミュージックビデオ
  • テレビアニメ「ReLIFE」ノンクレジットOP映像
通常盤CD収録曲
  1. ボタン
  2. brave me
  3. 旅人の唄
  4. ボタン instrumental

Penguin Go a Road 2016 ~東奔西走腹滑り~

2016年9月3日(土)
愛知県 池下CLUB UPSET ※終了
2016年9月19日(月・祝)
大阪府 梅田Zeela
2016年9月22日(木・祝)
東京都 吉祥寺CLUB SEATA
PENGUIN RESEARCH(ペンギンリサーチ)
PENGUIN RESEARCH

生田鷹司(Vo)、堀江晶太(B)、神田ジョン(G)、新保恵大(Dr)、柴崎洋輔(Key)からなるロックバンド。LiSA、茅原実里、ベイビーレイズJAPANらの楽曲の作編曲を手がける堀江が生田に声をかけ2015年に結成される。2016年1月にシングル「ジョーカーに宜しく」でメジャーデビューを果たし、3月に初のワンマンライブを東京・新代田FEVERにて開催した。3月には1stミニアルバム「WILL」を、6月にアニメ「マギ シンドバッドの冒険」のオープニングテーマ「スポットライト」を収録したシングルをリリース。9月にアニメ「ReLIFE」のオープニングテーマ「ボタン」をシングルとして発表した。